借りた手押し車
グレサから手押し車を借りたいと頼まれた。畑道の泥を運びたいが、車輪が壊れたらしい。セランの作った車はハルヴェでも忙しく使われており、貸し出せば荷の移動が遅れる。ベルクは断るのが惜しそうだった。
セランは車を見ながら、壊れたら自分が直すとは限らないと言った。借りる側が修理費を出す約束だけでは、部品が手に入らない時に困る。ミラは貸す期間と使う場所を先に決め、壊れた場合の連絡方法を書き入れた。
グレサの若者は車輪の幅を測り、向こうの細い畦道には大きすぎると気づいた。結局、車ではなく持ち手の軽い担ぎ籠を二つ借りることにした。欲しい物と役立つ物が違うのは珍しくない。
籠を渡す前、レアが編み目の緩みを点検した。片方は底を繕う必要があり、予定の日より少し遅れて貸し出された。グレサの若者は待つ代わりにハルヴェの畦で土を運び、使い方を覚えて帰った。
籠の持ち手を確かめる時、グレサの若者は手袋をはめていた。ハルヴェの編み手は素手で試していたため、握り心地の違いに驚く。レアは布を巻いて持ち手を太くし、泥で滑らないか確かめた。借りた道具を返す日の天気が悪ければ、無理に峠を越えず連絡すると約束した。道具そのものより、使う人が怪我をしないことを両村で優先できた。セランは空いた作業台で自分の車の軸を点検した。籠を借りた若者は返却する前に洗ってよいか尋ねた。編み目を濡らすと傷むものもあるので、レアが乾いた刷毛の使い方を教えた。
貸し借りの紙には、返却日だけでなく負担の少ない持ち方も記された。ミラは立派な車が村に残っているのを見て、物を貸すことが優しさのすべてではないと思った。相手の道に合わない道具は、助けより重荷になる。




