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村づくりは、麦を数えるところから――ハルヴェ村のミラ  作者: 竜太郎


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閉じた帳面

村会議の日、エダが帳面を持ってこなかった。体調は戻っていたが、今日は自分の休みだと言ったのだ。ベルクは困り、代わりに誰が数字を読めるか尋ねた。リネがゆっくり手を挙げ、前の月に写した控えなら説明できると話した。


数字の一部は読めても、支出の理由までは分からない。サラは鍋の薪代を、セランは修理材料を自分の言葉で補った。エダが書いた紙は便利だが、知らないまま数字だけを並べても判断できなかった。


会議の途中、去年の病人支援を巡り、誰が何を受け取ったか聞きたいという声があった。ミラは個人の病状まで広場で明かさないよう求め、支出総額と支援の基準だけを示した。金の透明さと暮らしの秘密は同じではない。


決められなかった議題は翌週へ回した。ベルクは休んでいるエダを呼ぼうとしかけ、足を止めた。代わりの人が育つには、出来ない日も認める必要がある。リネは数字の書き方を教わりたいと申し出た。


リネが読み間違えた数字を、ベルクは危うくそのまま決定に使うところだった。エダの書き癖で七と一が似ていたのだ。ギルが以前の領収書を持ってきて違いが分かった。リネは顔を赤くしたが、ベルクは自分も見逃したと認めた。次から大きな支出は二人で読み合わせ、数字の端に単位も書くことになった。エダの代役を作るというのは、もう一人のエダを育てることではない。間違いに気づける仕組みを作ることだった。


翌朝、エダは椅子に座り、閉じた帳面を見て笑った。「私がいなくても、村は止まらなかったのね」。ミラは頷いた。誰かが休めた一日も、村が守ったものの一つだった。

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