夜番の靴
村の見張りは、体力のある男が気の向いた日に立っていた。魔物が現れるというより、冬に腹をすかせた狼や盗人が畑を荒らすのだ。ある夜、見張りに出たトビアスは足の指を凍らせかけた。翌朝、彼の靴は裏が割れていた。ミラは見張りの人数ではなく、まず靴を見せてもらった。
誰が夜に立てるかは家の事情による。乳飲み子のいる家も、病人を看る家もある。村長は均等に割り振ろうとしたが、ミラは夜番の回数だけを等しくしても負担は同じにならないと言った。代わりに、昼間の薪割りや食事作りで支える役を作る。夜番をする者には乾いた靴下と温かい汁を用意した。
夜番へ渡す汁を用意するため、サラは小鍋を一つ分けた。温かさを長く保てる器が足りず、レアは古布で包む袋を縫った。見張り台でこぼせば危ないので、鍋ごと運ばず、蓋の閉まる小さな容器だけを渡す。渡す時刻も決めたが、吹雪の日は無理に運ばない。誰かを守る食事が、運ぶ人を危険に晒してはならない。
トビアスは交代した相手へ、林で聞こえた音を一つずつ伝えた。獣の鳴き声、枝の折れる音、遠くの水音。初めは長すぎると笑われたが、同じ場所で繰り返す音があると分かった。鐘を鳴らすほどではないことにも意味がある。見張り台の帳面には、何もなかった夜と、何か聞こえた夜が並んだ。
最初の当番表は二日で破れた。急に熱を出した者の代わりが見つからなかったからだ。エダが余白に代役の欄を作り、当日交代した理由を残すことにした。トビアスは修理した靴で見張り台へ上り、遠い林に一つだけ灯りを見た。旅人かもしれず、盗人かもしれない。彼は鐘を鳴らさず、次の番へ方角を引き継いだ。騒がずに知ることも、村を守る仕事だった。




