畑の小道
ハロルドの畑に、朝になると新しい足跡が残るようになった。苗は踏まれていないが、畝の間の土が固くなっている。子どもの悪戯を疑う声が上がり、ミラは足跡の先を辿った。道は森の端でなく、借家の裏口につながっていた。
借家に滞在する老人は夜中に息苦しくなり、外へ出て涼しい場所を歩いていた。灯のない道が怖く、明るく見える畑を通っていたという。ハロルドは驚き、怒るより先に腰掛ける場所がないかと考えた。
ギルは敷地の端に細い木道を作る案を出したが、借家の持ち主が勝手な変更を嫌がった。ミラは話し合いの場を設け、畑を避ける短い小道をしばらく試すことで双方の承諾を得た。夜歩きの危険を減らすため、老人には具合の悪い時に声を掛ける家を選んでもらった。
数日後、足跡は小道の上へ移った。畑は守られたが、夜道の段差はまだ暗い。セランが反射する白い小石を置くと、子どもたちは集めて遊びたがった。印を取らないよう伝えるだけでなく、危険な場所を皆で見に行った。
老人が夜歩く理由は涼しさだけではなかった。眠れない夜、静かな道に出ると亡くなった妻のことを思い出すという。ミラはどう励ませばよいか分からず、ただ歩く道の足元を照らす方法を探した。老人は昼に皆と食べることはできると答え、サラが席を一つ空けた。無理に集まりへ連れ出さないと分かると、翌日には老人の方から炉の火を見に来た。小道は夜の不安を消さないが、怪我をする恐れを減らせる。
ミラは畑の持ち主と歩く人の両方に礼を言った。村で長く暮らす人も、泊まって間もない人も、歩く場所を必要としている。踏まれなかった苗は夕暮れの風に揺れ、借家の窓には夜を越える灯が残った。




