渡れない手紙
グレサの村長から手紙が届いた。橋の向こうで産婆が倒れ、隣村の助けを頼みたいという。川は増水後の水位が落ちきらず、舟は使えなかった。ベルクは回り道を使える若者を募ったが、その道は急な岩場を越える。
手紙を書いた者に誰が必要なのか確かめると、急病の診察ではなく、産婆の仕事を代わる知識が足りないらしい。ニーナは自分が出向くことを提案したが、見知らぬ道を一人で進ませるわけにいかなかった。ミラはグレサ側にも迎えの人がいるか問い合わせた。
双方が落ち合うのは峠の乾いた分岐点になった。オスカーは天気と道の状態を見て出発を決め、途中で戻る場合も責めないと伝えた。ニーナは自分の知っていることと、知らないことを紙に書き、医者にかかるべき症状を先に整理した。
翌朝、迎えが来た。グレサの女性は安堵しながらも、峠の狭さを見て顔を曇らせた。ニーナは必要な道具だけ背負い、帰還予定を伝えた。ミラは無事を願ったが、村に残る病人への手当ても欠かさないようオル婆と相談した。
ニーナは出発前、オル婆の棚から持ち出す物を二人で数えた。必要と思っても道具を全部持てば歩けなくなる。彼女は自分の知識が足りない時に、相手を郡都の医者へ連れていく可能性も説明した。グレサの女性は費用を案じたが、今ここで無料の治療を約束することはできなかった。峠の途中には水を得られない場所があると分かり、荷には食料だけでなく小さな水袋が加わった。
橋を渡れないことは、荷の値段だけでなく、助けに行く距離まで変える。出発した二人の姿が坂の向こうへ消えても、山道が安全になったわけではない。村では帰りを待つ目印の灯を早めに整えた。




