書記の靴
郡都から若い書記ユストが到着した。橋を使えず山道を回ったため、革靴の踵が剥がれていた。彼は税の現地調査の補助で、村の申請書にある『運搬不能』が大げさではないか確かめに来たという。ベルクはまず濡れた足を乾かす席を用意した。
帳面を見せるとユストは整った数字に感心したが、荷車一台が山道で何人を要するかは知らなかった。セランが木箱を空にし、実際に運ぶ姿を見せる。ユストは手伝おうとして足を滑らせ、荷を降ろす合図が聞こえないまま尻もちをついた。
ミラはその失敗を笑わなかった。調査員が怪我をすれば村の申請が通るわけではない。ユストには危ない区間を歩いて見てもらい、賃金帳と休業日の控えを渡した。数字と現場の両方がそろって初めて、荷運びの負担を伝えられる。
ユストは橋のそばに立ち、崩れた石脚を見つめた。修繕費を認める権限は自分にないと繰り返し、測った長さと流木の跡だけを紙に記す。ベルクは返事の日を尋ねたが、担当者の署名が必要で見通しは立たなかった。
ユストは村人が使う木の貨車も確かめた。車軸の擦り傷を帳面に描こうとして、土で黒くなった指を見つめる。エダは予備の紙を渡し、写しを村へ残してほしいと頼んだ。役所へ持っていった資料が戻らないこともあると知っていたからだ。昼飯の席でユストは郡都の建物の修繕にも順番待ちがあると話し、村人は初めて彼の仕事の難しさを聞いた。それでも困りごとを知ることと、解決してもらえることは違った。
帰り際、ギルが書記の靴を糸で仮縫いした。ユストは代金を差し出し、ギルは仕事の分だけ受け取った。役所の人間も帰り道を歩く。ミラは彼の紙より先に、直した靴が峠を越えることを願った。




