遠くまで届く鐘
黄昏の丘で、フェルンはハルヴェの鐘を聞いた。夜番の交代を知らせる短い音だった。去年まで音は家々の間でばらばらに鳴り、誰が見張っているか分からなかったという。今は村を出る前にも、当番の顔を確かめる人がいる。フェルンは少し遠回りして丘の道を歩いた。
広場では小さな鍋が幾つも並び、サラが若者へ火加減を教えていた。川沿いの橋には依然として通行止めの札が立ち、井戸の縁には工事の印が残っている。レアは注文された袋を縫い、リネが糸の張り具合を確かめる。村が急に別の土地へ変わったわけではない。
フェルンは次の市で聞いた話を思い出した。ハルヴェでは病人へ食事を運ぶ椅子があり、畑で怪我をした人には別の仕事を探すという。話だけ聞けばどれも簡単にできそうだった。しかし彼が知る商人の宿では、食器を片付ける手さえ不足している。仕組みだけを持ち帰っても、動かす人がいなければ続かないだろう。
丘の下で、ミラがルークと道の石を調べていた。雨の日に滑ると少年が指摘した坂だ。フェルンは彼女が郡の偉い役人と会っていたことを知っている。それでも今日は泥だらけの靴で、子どもの言葉を聞いていた。守るべきものは大きな印章より、足元に近いのかもしれない。
帰路に就く前、フェルンはセランの作業台に置かれた古い車輪を見た。自分の荷車のものだという。修理後も部材の減りを調べるため、捨てずに置いていたらしい。フェルンは「また直す日が来るのか」と笑い、セランは「壊れる前に来てくれ」と返した。二人は次の訪問日を決めた。
鐘が二度目に鳴る前に、フェルンは道を下った。今夜も川は渡れず、税の答えもまだ届いていない。それでも村へ入る旅人は少し増え、帰る人の荷には村で作った品がある。灯の数は変わらない。見えないところで、暮らしを支える手が増えていた。




