赤い結び目
郡都へ行く予定の前日、ティアの妹は橋の通行止めの赤い布を見つめていた。「赤い印を見ると、怒られる気がする」と言う。昔の仕事場では、出来の悪い袋へ赤い糸を付けられたらしい。ミラは危険を知らせる色が、誰にとっても同じ意味ではないと初めて知った。
橋の印を外せば、通行止めが見えにくくなる。リネは自分のために変えないでと言ったが、ギルは布だけでなく木札にも言葉と簡単な絵を描いてみようと提案した。色が分からない人にも危険が伝わる。オスカーは雨で文字が消えないよう、木を深く刻んだ。
二人は新しい札を見に行った。橋の手前に立てると、赤い布は風に揺れ、板には折れた橋の絵があった。ルークはすぐ意味が分かったと言い、リネも小さく頷いた。ミラは誰かのつらい記憶を消せないことを知っていたが、目印を一つに頼らない工夫ならできた。
翌朝、ティアとリネはフェルンの荷車で郡都へ向かった。ベルクは旅費を預けようとしたが、ティアは自分たちの稼ぎで足りると言った。村からは追加の食料だけ持たせた。ミラは結果を急がず、返事を伝える相手を決めておいた。
リネは郡都へ行く朝、木の櫛を布へ包み、服の内側へしまった。ティアは妹が自分で荷物を選んだことを見て、口を挟まなかった。ミラは旅の注意を一つだけ伝えた。雨で峠道が閉じたら、無理に戻らず宿へ知らせること。予定の日に帰ることより、二人で帰ってくることが大切だった。
見送った後、ギルは赤い布の結び目を確かめた。雨の日も風の日も、人が近づく前に危険を伝えるための印。色を変えなくても、受け取る人のことを考えれば形を増やせる。橋はまだ直らないが、その手前に立つ札は前より分かりやすくなった。




