借りた種
グレサの村から、秋まき用の種を少し貸してほしいという相談が来た。今年の畑で病気が出て、一部を次の種に残せないらしい。ハルヴェにはわずかな余裕があるが、まだ全ての収穫が終わっていない。ハロルドは隣村を助けたいと言い、エダは約束できる量を先に確かめようと提案した。
グレサの使者は、春に柵の作り方を教わった時の礼を持ってきた。柳の枝で編んだ丈夫な籠だった。村人は礼を受け取れば種も貸すべきだと思ったが、ミラは二つを同じ勘定へ入れたくなかった。籠はありがたい。種は村の来年を支えるものだ。
両村は種の種類を比べ、グレサの土に合うかも調べた。ハルヴェの畑でよく育った品種が、川沿いの畑でも同じとは限らない。グレサの農婦は自分の村で使っていた種の記録を持っており、違いを丁寧に話した。
貸す量は小さく決まった。返す時期を秋の収穫後にするか、次の春にするかで意見が分かれたが、天候によって返せない可能性も話し合った。貸し借りを続けられるよう、利息ではなく同じ重さの種を返す取り決めにした。
種の袋を用意した時、エダは封を閉じる糸を赤と青で分けた。借りた種と村の種を誤って混ぜないためだ。グレサの使者は自分たちの村でも印を付けると約束した。もし豊作なら返しやすいが、不作なら難しい。互いにその可能性を知ったうえで、袋を手渡した。
使者が帰る時、ベルクは豊作を願う言葉を掛けた。ミラは貸した量を帳面に書き、村の種麦と混ぜないよう袋へ印を付けた。助ける気持ちだけでは種は増えない。だからこそ互いに見通しを持てる範囲で、手を伸ばしたかった。




