疾風のカルロ
「申し訳ございません、カルロ様はお会いになりたくないと申しております、どうぞお引取りを」
カルロの屋敷前で、オルトリンデは門前払いされた。
「くっ!あの野郎!」
オルトリンデが屋敷の塀に蹴りを入れる。
「この手は使いたくなかったけど・・・」
高級レストランの個室で商談が行われていた。
「カルロ様、こちらを」
正装した男が、カルロに高級そうな木箱を差し出す。
「おい!舐めてんのか!?たったこれっぽっちかよ!」
カルロが木箱を開けて、中身の金貨の山を見るなり激昂した。
「は、はあ、その、今月はあまり売り上げが・・・」
「おいおい!勘違いすんな、商品が売れた売れないなんて知ったこっちゃねぇ!こんなはした金、飯代にもならねぇんだよ!」
「俺がアホ貴族とのコネ作ってやったのに、売れてねぇってどういうこった!?」
「それが、その、"アップル商会"なる会社が、私共より安くて良い商品を販売しているとかで・・・」
男が汗をハンカチで拭いながら言った。
「はあ?そいつらが何者か知らんが、11英雄、疾風のカルロにケンカ売ったことを後悔させてやる!」
「その、それが・・・」
「あん!?ビビってんのか!?」
「アップル商会の会長は、その、英知のオルトリンデ・ダムロッシュ様でして・・・」
「はぁ!?ウソだろ!何でアイツが!?」
「調べたところ、事実でございます!」
「あんの野郎!ナメやがってぇ!!」
数日後。
「やっと会えたわね、カルロ」
オルトリンデはカルロの屋敷の応接間で、高そうなソファに腰掛けていた。
「お前!どういうつもりだ、ああ!?」
カルロはすっかり頭に血が上っていた。
「最初から話を聞いてくれてたら、あんなことしなかったのに」
オルトリンデはほくそ笑んだ。
「俺がどんな思いであそこまでこぎつけたか、わかってんのかぁ!」
カルロは激しくテーブルを叩いた。
「まあまあ、落ち着いて、ちゃんとお客は返すわ、私の11英雄回顧録に協力してくれたらね」
「てめぇ!立場わかってんのかぁ!11番目が2番目に偉そうにしやがって!」
カルロが腰のダガーを抜いた。
「おお〜、怖!」
オルトリンデは微笑みながら言った。
「いいか!?俺はあの地獄の戦争を、いくつも乗り越えたんだ!レオに偉そうに指図されて、死ぬほど走らされて、やれ斥候だの、暗殺だの・・・楽して生きたいと思って当然だろ!」
「あなた、そのレオに借金あるんでしょ?それで余計に頭が上がらない」
「黙れぇ!血なまぐさいこともやらねぇで、ノホホンと町や村を回ってた奴に、俺の苦労がわかるかぁ!」
カルロがオルトリンデにダガーで斬りつけた。
「な!」
オルトリンデを捉えたと思ったカルロのダガーは、オルトリンデの1メートルほど右のソファに刺さっていた。
「あらあら、疾風のカルロも地に落ちたわね」
「な、なにしやがった?」
「なにも」
「化け物め!」
「あのさ、冷静に話がしたいんだけど、今日はアンタに儲け話も持ってきてるのよ」
「なんだと?」
カルロの殺気が和らぐ。
「あなたに貧民街の活性化を手伝ってもらいたいのよ」
「はあ?そんなんで利益出んのかよ?」
「イケるわ、貧民街をリゾート地にするのよ、開発費用はアップル商会が出す。あなたは労働力を提供してくれればいい」
「ふざけんな!領主や貴族は納得してんのかよ!」
「それは私に任せて、必ず落として見せる」
オルトリンデは笑みを浮かべる。
「この計画が成功したら、商売として大きなお金が動く、アンタが欲しがってるチンケな儲けなんて比べ物にならないくらいね、これ、計画書よ」
オルトリンデは何枚もの束になった紙をテーブルに置いた。
「本気なのか!?」
カルロが計画書をめくりながら呟く。
「友達は無理だけど、ビジネスパートナーになら、なってくれるよね」
オルトリンデはカルロに右手を差し出して、握手を求めた。
カルロは少し考えた後、その右手を払った。
「まだだ!1週間後に来やがれ!」
「承知したわ」




