断罪のセリーン、強健ラッセル
オルトリンデは大きな麻袋を背負って、貧民街にやって来た。
貧民街には、ボロボロの布のような服を着た、汚れた肌の人々が道に溢れていた。
ーーーうわぁ~、すでに限界なんだけど。
オルトリンデは怯えながら、子供に近づいた。
ーーー大丈夫、子供よ!汚くない!
麻袋からパンを取り出すと、子供に差し出した。
「食べる?」
子供は奪うように受け取ると、ガツガツとパンを食べた。
その様子を見た周りの子供が、一気にオルトリンデを取り囲む。
ーーーヒィ〜!
オルトリンデは思わず、麻袋の中のパンをぶちまけた。
地面に落ちたパンを、子供達が奪い合いながら持ち去っていく。
「おーい!仲良く分け合えよ〜」
背後から女の声がして、オルトリンデは振り返った。
「セリーン!」
「こっちにもあるからさ〜」
セリーンが麻袋からパンや果物を取り出す。
人々が今度はセリーンに群がった。
セリーンの身長は少し大きな子供くらいなので、姿が見えなくなった。
「潔癖症なのに頑張ってくれたんだな、ありがとう!」
見えなくなったセリーンが、気づけばオルトリンデのすぐ隣にいた。
「セリーン、いつの間に!?」
「さあ、こっちへ」
セリーンが自宅に案内する。
「ただいま、ラッセル、珍客だよ〜」
本を読んでいたラッセルが、チラリとオルトリンデに目をやる。
「ホント、久し振りね、いつ以来かしら?」
オルトリンデは椅子に腰掛けた。
「あちきたちと、戦ってる舞台が違うからね」
セリーンが飲み物を持ってくる。
「本当は、私もそうなんだけどね」
「そうだね、でも、あんたの本性は・・・」
「セリーン、おかえり♡」
セリーンが言いかけた瞬間、ラッセルがセリーンを背後から抱きしめた。
「もう、お話の途中なのに〜」
「セリーンは今日もいい匂いだね、お日様の匂いだ♡」
ーーーおえっ!
オルトリンデは吐きそうな顔をする。
「で、オルトリンデ、今日は何の用?」
「ん、んんっ!そう、えっと、実はね、11英雄の回顧録を作ろうと思ってて、協力してもらえないかな?」
「いいね、僕とセリーンのラブストーリーなら、歓迎するよ」
ラッセルが興味を示したのか、オルトリンデを見て話をした。
「あ、ありがとう、ラッセル」
オルトリンデは引きつった笑顔をする。
「協力したいけど、ちょっと難しいかな?」
セリーンがラッセルの腕を優しく撫でる。
「どうして?」
「もうすぐ、あちきは、貴族に拘束される」
「ひょっとして、これまでやって来たことへの見せしめ?」
「多分ね、オルトリンデ、アンタが何と言おうと、戦ってきた相手は魔物、その点において、アンタはドラゴン相手でも負けない」
「でもね、あちきの相手は人間、そして権力者、最初から負けは決まってる」
「私に出来ることはない?」
オルトリンデはセリーンを優しく見つめた。
「ありがとうね、じゃあ、あちきの話、聞いてくれる?」
「僕は聞くよ」
ラッセルがセリーンの耳元でささやく。
「ホント、仲いいね」
「あちきはね、盗賊あがりで、今まで散々物を盗んできた・・・権力者は貧乏人には目もくれない」
「断罪か・・・知らず知らず、呼ばれるようになった二つ名だったわね」
「あちきはあちきの為にやってたんだ、英雄なんかじゃない」
ーーー私と同じか、動きを封じるための鎖なのね・・・
「僕がセリーンを守る!」
ラッセルがセリーンの頬に口付けをする。
「ラッセル、あちきに何かあっても、暴れちゃダメだよ」
「セリーン・・・」
オルトリンデには2人の姿が先程と違ったものに見えた。
ーーー剣技だけ取れば、レオをも凌駕する強健のラッセルなら、可能でしょうね。
「オルトリンデ、ずっと聞きたかったことがあるの」
「何でも聞いて」
「アンタ、元々この世界の人間じゃないよね?」
「!・・・どうして?」
「アンタはこの世界で何をしようとしてるの?」
セリーンが鋭い目つきで睨みつける。
「そっか、人の真意を見抜くセンスは、断罪のセリーンの十八番だったわね」
「アンタだけは、何も掴めないのよ」
「何をする気?と言う質問なら、世界を救いたい、それだけよ」
オルトリンデは真剣な表情で言った。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「アハハハ!」
セリーンが声を上げて笑いだした。
「フフフフフ、セリーンも人が悪いなぁ」
オルトリンデの表情も緩んだ。
「アンタなら、きっと可能なんだろうね。でもね、世界を救えるからと言って、人を救えるとは限らない!」
「なるほど、目からウロコね」
「あ、ご飯食べて行くでしょ?ラッセル、いいよね?」
「ああ、今日は腕によりをかけるとしよう」
ラッセルがようやくセリーンから離れた。
ーーーアハハ、ラッセルが作るんかい!




