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12人の英雄

転移魔法で集落にやって来たオルトリンデが目にしたものは、悲惨な光景であった。


山の土砂が集落一帯をのみ込んでいて、川も増水して集落が水浸しになっている。


「生存者は!?誰かぁ!」

オルトリンデは力一杯叫んだ。


「こ、ここだ」


オルトリンデは声のする方に駆け寄った。


「大丈夫ですか!?」

足を怪我した成人男性に声をかける。


「妻が、瓦礫の下敷きに!」


「わかったわ!今助ける!あなたは大丈夫?」

オルトリンデが男性を励ましながら、外傷を調べる。


ーーー大丈夫、ここから運び出せば。


「私はいい!早く、妻を!」


雨足は弱まることなく降り続き、地面の水かさが増していく。


「わかった!」


オルトリンデは男性の指差す、瓦礫のある場所に向かった。

家が土砂で押し流されたようだ。


ーーーやってやる!救うんだ!


オルトリンデは素手で土砂をかき出す。


「痛!」


手が石や木片でキズだらけになる。


オルトリンデは手に防御魔法を施して、土砂や瓦礫を横に除けていく。


「ぐあ!」

オルトリンデの人差し指の爪が剥がれる。


「あきらめるもんかぁぁぁ!」

オルトリンデが咆哮のような叫び声を上げる。


ーーー1人でも多く救ってみせる!


ヒィーーーーン


上から聞き覚えのある駆動音がする。


ーーーこれは、魔法式水素エンジン!


オルトリンデは空を見上げた。


黒い鉄の塊のようなゴーレム、伸びた腕にミリアリアが座っている。


「バカヤロー!私にくらいは甘えろよ!」

ミリアリアがゴーレムと共にゆっくりと降りてくる。


「ミリー・・・」

オルトリンデの目には涙が溢れていた。


「10式、サーマルセンサー!」

広範囲に、土砂や瓦礫の中の人の位置を探る。


10式は着地すると、ミリアリアを降ろし、センサーの位置を避けながら大きな両手で土砂をかき出していく。


「オルトリンデ!センサーで人の位置を特定すれば、空間魔法で穴を空けられる!」

ミリアリアがオルトリンデに向かって言った。


「ごめん、ごめんね、ミリー・・・」


「泣くのは後にしろ!」


「うん!」

オルトリンデはセンサーで表示された画像の表示パネルで、位置を確認しながら少しづつ空間魔法で土砂を転移させていく。


「よし!もう少しだ、掘るぞ!」

ミリアリアとオルトリンデが数センチの土砂をかき分ける。


「そこはあたしがやる、他の場所を探せ!」

2人が声のする方向を見ると、アルレットが大きなスコップを持って立っていた。

「2人して置いていきやがって、昨日、お好み焼き食った仲だろ?とにかくどけ!ここはあたしが!」


「アル!」

オルトリンデの顔から流れているが、涙か雨か分からなくなっていた。


「よし、アルレット、ここを頼む!」

ミリアリアがセンサーで他の場所を探して、10式に命令する。


10式が大きく掘り、オルトリンデの魔法が調整して、生存者を見つけ、アルレットがスコップでキズつけないように周りの土砂を除けていく。


「駄目だ!負傷者の体温がどんどん奪われている!このままじゃ助からないぞ!」

アルレットが土砂から生存者を引っ張り出しながら言った。


「ダーリア!そっちの女性を頼む、こっちは私が!」

クリムがダーリアに指示しながら、負傷者に治癒魔法を施していく。


「任せて!誰も死なせない!」

ダーリアも治癒魔法で負傷者を治療する。


「ありがとう」


オルトリンデの口が無意識にそう動いていた。


「オルトリンデ、空間障壁で雨を防げるか?」

ミリアリアがオルトリンデに提案する。


「その手があったわね!」


オルトリンデが負傷者の上に、透明な壁を作り、雨を防ぐ。


「おい!状況を説明してくれ!」

レオが他の英雄達を連れてやって来る。


「とにかく掘れ!」

アルレットが叫ぶ。


「よっしゃ!やるか!」

ジェイラスが持ってきたスコップを振り回す。


「うむ!人助けじゃ!グハハハ!」

カレルヴァもジェイラスに続く。


「アンタたち、周囲を探索せず、なに救出始めちゃってるのよ!」

セリーンがラッセルの肩に乗っかりながら言った。


「セリーン、周囲の探索を頼む、二次災害の予兆があればすぐに教えてくれ!」

レオがセリーンに指示を出す。


「わかったわ!ラッセル、行こう!」

ラッセルが悪い足場を気にすることなく、ヒョイヒョイと走っていく。


「持ってきたぜぇ!野営道具!」

カルロがバックパックから焚き火の道具を取り出す。

「ダンテのオッサン!」


「私の魔法を着火剤にするとは・・・」

ダンテが薪に火をつける。


「良かった、これで体温を維持出来る!」

クリムが焚き火を見て安堵する。


「いたぞ!生存者だ!」


「すぐ行く!」


「こっちにも!」


「手を貸してくれ!」


「オルトリンデ!」


気づくと、英雄達は雨と泥にまみれて、一丸となり、人命を救っていた。

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