着工式
貧民街の再開発計画は順調に進み、工事着手までこぎつける事ができた。
本格的に工事が始まる直前、着工式が盛大に執り行われることとなった。
「え〜、では今回、司会を務めますダーリア・ジュリーです!皆さん、盛り上がってますか〜!」
声を遠くまで響かせる魔導具を手に持って、ダーリアが会場にいる100人程の参加者に叫ぶと、大きな歓声が上がった。
「いよっ!博愛の女神!」
「ダーリア様〜!」
「ダーリア脱げー!」
ジェイラスが少し遅れて叫ぶ。
「早く食い物よこせ〜!つまらん話などやめろー!」
カレルヴァが後に続く。
「あ、あいつら放り出して!」
遠くから見ていたオルトリンデが呟く。
「駄目だよ、冷静に〜」
隣りにいたセリーンがオルトリンデをなだめる。
その後、領主カムレンや現場責任者カルロ、貧民街代表セリーンの挨拶、そしてなぜかレオの挨拶へと進行していった。
「おい!この飯めちゃくちゃうまいぞ、なんて料理だ?ダンテ!」
カレルヴァが後ろの席のダンテに小突きながら訊ねる。
「知るか!触るな!」
「愛想の無い男だ!ミリアリア!これを後5皿持ってこい!」
「なんで私が、自分で行ってこい!」
ミリアリアが眉間にシワを寄せる。
「さあ!宴もたけなわですが、いよいよお待ちかね、あの方の登場ですよ!」
ダーリアが次のプログラムの紹介に入る。
「私には劣りますが、美人でスタイルも良くて、最高にいい女!一体どんな殿方が彼女のハートを射止めるのでしょうか?もっとモテてもいいくらいなんですが」
「ダーリア、やめてよぉ!」
ステージの袖でオルトリンデが赤面しながら叫ぶ。
「そうです!天才奇才、ロザシェラが誇る最高の頭脳の持ち主、英知とはまさにこの人の為にある言葉!11英雄屈指の知識の持ち主、そう!英知のオルトリンデ・ダムロッシュの登場です、どうぞー!」
ーーーダーリア、覚えてなさいよ!
オルトリンデが苦笑いしながらステージに上がった。
「はい、ど〜ぞ〜」
ダーリアが魔導具を手渡した。
「ありがとう、ダーリア、後でちょっと話せるかしら?」
オルトリンデの目が据わっていた。
「えへへ〜ではよろしくぅ〜」
「ん、んん!え〜っと、皆様、今日はご多忙の中、この式典にご列席いただき、ありがとうございます!」
オルトリンデは満面の笑みを浮かべて挨拶をした。
「突然ではありますが、皆様に知っていただきたい事があり、この場をお借りして少しお時間を頂戴します」
会場が少しザワつく。
「大丈夫なのか?」
ミリアリアが呟く。
「この世界には、別の世界から生まれ変わった人が存在します。私はまだ会ったことはありませんが、私がその、言わば異世界からの転生者であります」
それを聞いた参加者全員が騒然とする。
「ここで言うの?」
セリーンは呆れた顔をする。
「なにが狙いだ?」
レオは意表を突かれた表情で言った。
「私のいた世界は、環境破壊が進んでいて、夏は暑すぎて出られない、冬は積雪で出られない、そして作物も育たないから食料問題も深刻で、食料の奪い合いで戦争が絶えませんでした」
「スッキリしたかったんだな」
ミリアリアは紅茶を飲みながら聞いていた。
「その世界を救おうと、学者になりました。そして、世界を救えるエネルギーの開発に成功しました」
「ですが、そのエネルギーを独占しようとする組織に、私は命を奪われました」
会場が騒然とする中、レオが大声で叫んだ。
「静かにしろぉ!」
その一言に会場が静まり返った。
「ありがとう、レオ」
オルトリンデはレオに微笑んだ。
「この世界に生まれ変わって、あの大戦から世界を守れたことを誇りに思っています。ですが、セリーンに言われました『世界を救えても、人を救えるとは限らない』と、確かにセリーンの言う通りです」
「オルトリンデ・・・」
セリーンがオルトリンデの姿を見て呟く。
「私は胡散臭い存在かもしれません。しかし、世界を救ったように、結果で示してみせます!どうか、皆様、ご協力をお願いいたします!」
オルトリンデは深々と頭を下げた。
会場に少し沈黙が流れた。
しかし、次の瞬間、割れんばかりの大歓声が会場を包んだ。
日が沈んだ後も、食事会は続いた。
「オルトリンデ」
会場から少し離れたベンチで、1人ワインを飲んでいるオルトリンデに、セリーンが話しかけた。
「やあ、セリーン、今日の料理はどうだった?私がプロデュースしたのよ」
「あんな美味い飯、食べたのは初めてよ」
「そう、良かったわ」
オルトリンデはワインをラッパ飲みした。
「じ、実はね、あちき、そのレオに頼まれてね、あなたを調べてたの、アンタの故郷にも行ってきた!」
セリーンは決然とした表情で言った。
「そんな事しなくても、聞いてくれればよかったのに、友達だと思ってたけど?」
「は、ははは、いやぁ~、アンタには敵わないわ」
セリーンはへたり込んだ。
「それで捕まるなんて嘘もついたの?」
「へ?まさか、バレてた?」
「ラッセルよ」
「そうか・・・」
セリーンはほっとした表情を浮かべた。
「おーい!オリン!」
遠くからアルレットが手を振りながら走ってくる。
「アルー!来てくれたの!?」
ワインを高く掲げると、大声で言った。
「遅くなってごめん!飯が何も残ってないよ〜」
ーーーうはぁ、アルもかぁ~!




