英知のオルトリンデ 後編
セリーンはレオのいる王都から、馬車に揺られて3日の距離にある「水の都」と呼ばれる町に来ていた。
ーーーラッセル、置いてきちゃったけど、泣いてないかなぁ・・・
セリーンは1日中、町で情報を集めるために走り回った後、酒場で一息ついていた。
「情報なしか・・・」
セリーンはエールを一口飲んだ。
「う〜ん、オルトリンデがこの町出身としか聞いてないし・・・ん?」
セリーンは壁の貼紙に目をやった。
『領立魔法学校 生徒募集中』
『英知の英雄が学んだ由緒正しき魔法学校』
「これは、行ってみるしかないな」
次の日の朝、セリーンは魔法学校を訪ねた。
「ようこそ、断罪のセリーン様!お会いできて光栄です」
初老女性の校長がセリーンを丁重に迎える。
「お忙しいところ、申し訳ございません、実は英雄の伝記を作ることになりまして、英知のオルトリンデ・ダムロッシュについてお話を伺いたいと思いまして」
セリーンが低姿勢で尋ねた。
「おお!オルトリンデ様の、なるほど、もちろんご協力させていただきます」
「それはとても助かります!」
「何から・・・まず、オルトリンデという名前ですが、あの方の本名はシュネイ・ダムロッシュです」
「シュネイ?なぜ偽名を?」
「私の記憶では、確か、ワルキューレの1人の名前だとか」
「ワルキューレとは何ですか?」
「すみません、私も聞き覚えが無くて」
「オル・・・シュネイが入学した経緯や、どのような生徒だったか、お聞きしても?」
「入学したのは、シュネイが8歳の時、当時の校長が、シュネイの才能に惚れ込んで、特待生として迎え入れたとか」
「やはり、当時から卓越した能力を?」
「いいえ、魔法はこの学校に入ってから覚えていったと思います。ただ、自然哲学や算術は天才と呼んでも足りないくらいでした。正に前世で学んでいたかのような」
「自然哲学、算術・・・」
「なので、魔法の習得はとても早かったですね、この学校では一般的な学問も学びますが、いまだにその成績を超える者は現れていません」
「英知の名の通りだと?」
「はい、私は当時、教師としてシュネイを教えていましたが、一度、本人に聞いたんです。本をたくさん読んで勉強したの?と」
「シュネイは何と?」
「物心がついた頃に思い出したと・・・」
「あ、詳しくお知りになりたいのでしたら、シュネイの実家に行ってみては?」
「ええ!是非!」
セリーンは校長にシュネイの実家の場所を聞くと、大急ぎで向かった。
コンコン!
セリーンは食事も忘れて、シュネイの実家を訪ねた。
「はい?どなた?」
中から白髪の女性が顔を出した。
「シュネイさんのご家族の方ですか?」
「はい、シュネイの母ですが」
セリーンはシュネイの母親に尋ねた理由を話した。
「それはそれは、遠いところをわざわざ・・・私、シュネイの母親のシレネと申します」
「あ、私、セリーン・フィネルと申します」
シレネはセリーンを、シュネイの部屋に案内した。
「あの子の部屋、出て行った後そのままにしてあるんです。ホントびっくりしましたよ、偽名使って英雄になってたと聞いたときは・・・」
シュネイの部屋は掃除が行き届いていた。
そして、大量の本と奇妙な見た目の木彫りの人形が置いてあった。
ーーーこの人形、なに?モンスター?違う、見たことないわ・・・
ーーー本は主に学問書。
「昔から変わった子でね、『私はブツリ学者だった』って何度も言ってました、知らない単語を言ったりして、医者に診てもらおうかと考えたくらいです」
「ここには一度も帰って来ていないんですか?」
セリーンがシレネに尋ねた。
「英雄と呼ばれるようになって、一度だけ帰ってきましたよ」
「何かお話されましたか?」
「とても感謝されました、うちは父親がいないので、学校まで通わせてくれてありがとうって、お金も置いていってくれました」
「あの子ね、『前回は世界を救えなかった』ってずっと言ってたので、今度は救えて良かったって泣いてました、なに言ってるのかさっぱりでしょ?」
ーーーオルトリンデの気持ちは、純粋だったのね。




