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おりたかった

 学校が始まっても、私は放課後になると急いで病院へ向かった。

 弥生も。

 小永吉先輩も。

 病室では、明るく振舞う。

 廊下へ出た途端、弥生が泣いた日もあった。

 父は何も言わなかった。

 ただ、

「ちゃんと飯は食うとけ」

 それだけだった。

 ある夜、また私は聞いた。


「お父さん」


「ん?」


「お母さんが病気の時、逃げたいって思ったことある?」


 父は長く黙った。


「あるばい」


 驚いて顔を見る。


「好きやけん、怖かった」


「……」


「正直、失うくらいなら、最初から好きにならんかったらよかったって、思ったこともあった」


 胸が痛んだ。


「でも、それでも傍におったと?」


「おりたかったけんね」


 私も、同じだった。

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