ゆずれんかった
次の日の昼休み。
「ちょっとよか?」
弥生を廊下へ呼び出した。
「なん?」
「あの……」
言おうとすると、急に喉が詰まった。
弥生が不思議そうに私を見る。
「私、その……」
「甘露寺くんと、付き合ったっちゃろ?」
「……へ?」
「やっぱり」
弥生が笑った。
「なんで知っとうと!?」
「見よったら、分かるって」
「え……」
「今朝から、二人とも分かりやすすぎ」
「……うそ」
「ほんと」
くすくす笑う。
でも。
私は笑えなかった。
「……弥生」
「ん?」
「かなたのこと……好いとった?」
弥生の笑顔が止まった。
「……なんで?」
「なんとなく」
「……」
「前から、ちょっとだけ、そうなんかなって」
弥生は黙っていた。
それから、窓の外を見る。
「好きやったんかもしれんね」
「……」
「自分でも、よう分からんけど」
胸が痛んだ。
「ごめん」
「なんで栞が謝ると」
「だって」
言葉が続かなかった。
弥生は小さく息を吐いた。
「でもね」
「……」
「栞を見よったら、分かったと」
「何が?」
「私とは違うって」
「……」
「私は、栞ほどにはならんかった」
弥生が私を見る。
「栞、ずっと甘露寺くんのこと好いとったやろ」
「自分では、よう分からんかったけど……」
「好いとったよ。嬉しい時も、腹立っとる時も、心配しよう時も。ずっと」
「うん……」
「私は、ちょっといいなって思って、話せたら嬉しくて」
弥生は少し笑った。
「それでも、好きやったとは思う」
「……うん」
「私……」
「……ん?」
「弥生も、かなたのこと好いとうかもしれんって、分かっとった」
「……そっか」
言いたくなかった。
でも、言わなきゃいけない気がした。
「でも……譲れんかった」
「それでよかやん」
「……ごめん」
「謝らんでよ」
弥生はそう言ってから、少し考えた。
「いや」
「?」
「一回くらいは、謝ってもらっとこ」
「……」
「あとで何か奢って」
「なんで!?」
「傷心の親友に、それくらいしてもよかろ?」
「傷心しとると!?」
「ちょっとはしとる」
笑った。
でも。
傷ついている。
そう思った。
「……なんがよか?」
「なんがよかですか、やろ?」
「……な、なんがよかですか?」
「天神に行ってみたかカフェあるけん、そこのスウィーツ」
「た、高いのはダメばいっ!?」
「栞の罪悪感、安っ!?」
「うるさい!」
弥生が笑う。
私も笑った。
「でもさ」
「ん?」
「大事にしいよ」
「……」
「そんだけ好いとうなら」
「うん」
私は、強く頷いた。




