決めた距離
「ずいぶん、楽しそうやったね」
小永吉先輩も交えて、学校で弥生の練習に付き合った帰り。
弥生達と別れて改札を出るなり言った。
「うん。楽しかった」
「特に弥生とダブルスば組めて」
「ん? そうだった?」
(馬鹿馬鹿馬鹿! なんいいようと、私っ!)
「中牟田さん、脚はどう?」
「そんなんどうでもいい」
「え?」
「弥生と付き合えばよかやん」
「え!? なんでそうなるの?!」
「お似合いやね」
「……どうしたの?」
「どうもせん!」
私達は、いつの間にか公園へ来ていた。
長椅子。
二人が向き合えた場所。
しばらく黙っていた彼が、口を開いた。
「……古賀原さんと付き合いたいなんて、思ってないよ」
「……」
「僕が気になってるのは、栞ちゃんだから」
「え……」
「でも」
彼は少し俯いた。
「僕、自分の身体が怖いんだ」
「……」
「元気でいたい。でも、何が起こるか分からない」
「そんなん、誰だって分からんよ。私だって、事故に遭うなんて思ってなかったし」
「……」
「何が起きるかなんて、分からんやろ? でも、そうしたいって思うことはできるやろ?」
私は彼を見る。
「私は、君の傍におりたい」
言った。
もう戻せない。
ううん、戻さない。
「それだけじゃ、いかんと?」
「中牟田さん……」
「栞、やろ?」
「栞……ちゃん……」
「まぁ、許しちゃろ」
彼が笑う。
「僕のことも、かなたって呼んでくれる?」
「やだ。君は君」
「ずるいなぁ」
「私の彼氏は、そげな細かいこと気にせん、懐の深い人じゃないといかんとよ」
「彼氏……?」
「今さら、なん言いよっと?」
彼の顔が真っ赤になる。
「じゃあ……僕、栞ちゃんの彼氏でいいの?」
「よかよ」
誰かといることを。
初めて決めた。
自分で。




