執着
二年生になり、私達は同じクラスになった。
それから一か月ほど経った、ある日の放課後。
「僕、少しランニングして帰る」
「じゃあ、私も走る」
「え? 大丈夫?」
「軽くならね。それに、一人にしよったらどうせやり過ぎるやろ?」
「そんなことないよ」
「信用なか」
最近、彼は医師と相談しながら、トレーニングにランニングも取り入れるようになっていた。
嬉しそうだった。
少しずつ。
本当に少しずつ。
競技に戻る道を進んでいた。
私達は、それぞれ着替えを済ませて二人でグラウンドへ向かう。
話をしながら、部活の邪魔にならないように校庭の際を走る。
いつしか、彼の横にいることが当たり前のようになっていた。
そして、彼の復帰を間近で見ていたいとも思っていた。
「甘露寺」
低い声に、足が止まった。
振り向けば、校門のあたりに一人の男子が立っていた。
ウエア姿で肩にはラケットバッグ。
見上げるほどに背が高い。
肩幅も広く、整った顔立ちには、どこか近寄りがたい雰囲気があった。
「水ヶ瀬くん!? どうして?」
彼が目を見開く。
その名前で私は、すぐに分かった。
水ヶ瀬昴流。
彼がWOした大会で優勝した選手。
水ヶ瀬くんは、前置きもなく大股で距離を詰めてきた。
「栗栖川から聞いた。お前、大会には一切出ていないのか?」
「……うん」
「そうか……。それでもいい。俺と試合してくれ」
「え?」
「頼む」
「……うん、いいよ」
*
話は、あっという間に決まった。
「ラケットとか取ってくる」
彼が校舎へ戻っていく。
残された私は、水ヶ瀬くんを見た。
「あの」
「ん?」
「無茶は、させんでください」
水ヶ瀬くんの眉が僅かに動いた。
「……やはり、身体が悪いのか?」
「悪いっていうか、何してもいいわけやないんです」
「そうか」
短い返事だった。
それから、水ヶ瀬くんは校舎へ戻っていく彼の背中を見つめた。
「俺は、あいつに勝ちたかった」
「……」
「ずっと」
その一言が、重く響いた。




