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今の彼

 帰り。

 太宰府駅のトイレへ寄ると、栗栖川さんと一緒になった。


「もしかして、甘露寺くんの彼女?」


「え!?」


「違うならいいけど」


 栗栖川さんが少し笑う。


「私、フラれたの」


「え?」


「僕にはテニスが全部だから、って」


 胸が、ざらついた。


「昔の甘露寺くんは、どんな人だったんですか?」


「誰も寄せ付けない天才、かな。もっとピリピリしてた。いつも勝つことしか考えてなかったように見えた」


「……」


「今は、柔らかくなったみたいね」


「私は、昔の彼を知りません」


 栗栖川さんが私を見る。


「でも、今の彼ば好いとうとです」


 自分で言って。

 自分で固まった。

 栗栖川さんは、一瞬目を丸くしたあと「そういうの、好き」と言って、くすりと笑った。

 *

(私、好いとうって言った……)

 帰りのホームへ向かいながら、自分の言葉を何度も思い返す。

 嫉妬した。

 昔の彼を知る人が嫌だった。

 彼が他の女の人へ嬉しそうに笑うのも嫌だった。

(これが、恋愛っちゃろうか)

 たぶん。

 そうなんだと思った。


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