↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
23/34

いるのに知らない

 春休み。

 太宰府天満宮。

 皆で参拝に来た。

 三つの橋を渡る。


 一つ目が過去。

 二つ目が現在。

 三つ目が未来を表しているらしい。

(未来、か。)

 少し前までなら、考えたくもなかった言葉だった。

 でも、今は……

 橋のそばにある小さなお社の前で足を止めた。

 賽銭箱へ小銭を入れ、手を合わせる。

(なん、お願いしよう……)

 思い浮かばない。

 困った。

 目を開ける。

 みんなは、少し先へ進んでいた。

 弥生。

 小永吉先輩。

 そして、彼。


「中牟田さん、段差あるよ!」


(……そっか)

 未来は、まだ淡くていい。それで十分だった。


「栞ー! はよ来んね!」


「今行く!」


 駆け寄ろうとしたとき。


「甘露寺くん?」


 背後から、聞き慣れない女性の声。

 振り返る。

 長い髪。

 綺麗な顔。

 長い脚。

 洗練された雰囲気の女の子。


「栗栖川さん!?」


 彼の表情が一瞬驚いたあと、ぱっと明るくなった。

(……)

 胸が痛んだ。

 話を聞けば、昔から全国大会で何度も顔を合わせていた選手らしい。

 今日は、ナショナルチームの合宿帰りだという。

 知らない頃の彼の話が、二人の間で当たり前のように交わされる。

 その中で、水ヶ瀬昴流という名前が出た。


「あの人は、甘露寺君に勝つことだけを考えて頑張ってきた人なんだから」


 彼の表情が曇る。

 私は一歩、近づいた。

 何も言えない。

 私は彼の昔を知らない。

 この人は知っている。

 そこには、私の入れない【過去】がある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。