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知らない君

 翌日。


「中牟田! これ見ろ!」


 休み時間になった途端、小永吉先輩が教室へ飛び込んできて、私の机へテニス雑誌や印刷されたドローを叩きつけた。


「なんですか、これ……」


 そこには、今より幼く、まだ白い髪もない彼がいた。

 トロフィー。

 全国優勝。

 世界ジュニアランキング三位。


 日本男子テニスの将来を背負う――そんな見出しまである。


「……」


 昨日のプレーと、目の前の実績が結び付く。

 けれど、それ以上に気になるものがあった。

 大会のドロー。

 連覇のかかった大会では、決勝戦がWO。

 同じ時期の別大会では、第一シードながら初戦でWO。

 WO(ウォークオーバー)。試合をせずに敗退したという意味。

 どちらも、水ヶ瀬昴流(みながせすばる)という選手が優勝していた。


(病気のせい?)


 私は紙の上に並ぶアルファベットを指でなぞる。

 どうして、こんな人が筑清学園にいるんだろう。

 どうして、テニス部もない学校に。

 どうして、あんなに楽しそうな顔でテニスをしているんだろう。

 疑問だけが残った。

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