127 チチモドキとシリモドキ
ブクマありがとうございます。
読み続けて頂けるよう頑張りますので、これからもよろしくお願いします。
頼運
あちこちの店で鑑定の練習をしながら露店を回る。
「なんじゃこれ?」
思わず声を上げてしまった。
商品台代わりの木箱の上に乗っているのは、どう見てもおっぱい。
ササヤカお神よりもはるかに立派。
その横には、お尻?
実物大?
妙にリアリティーがある。
「おっちゃん、これって何?」
「おう。 坊主にはまだ早いかもしれんが、これはチチモドキとシリモドキだ。」
「チチモドキとシリモドキ?」
前世のネットで観たアダルトグッズそっくり。
「寝る時、チチモドキを横に置いて、その上に手を置けばぐっすり眠れる。」
「そうなの?」
「坊主には判らんだろうが、触った感じも本物そっくりだぞ。」
「ちょっと触ってもいい?」
「おう。」
チチモドキを触ってみる。
シリコン?
プルンプルンして柔らかい。
「こっちは何に使うの?」
「シリモドキは子種の発射訓練用だ。 穴もちゃんとついているし、ヌル草の汁を穴に入れれば発射を堪えるのが難しい位本物そっくりになる。」
「そうなんだ。」
ヌル草って言うのが潤滑ゼリーみたいなものらしい。
こんなものを、こんなに明るい所で、堂々と売っていていいのか?
ちょっとビックリ。
「風俗店で子づくり訓練するには金が掛かるが、これがあればわずか金貨7枚で何度でも練習出来る。」
金貨7枚って、前世の7万円。
男が子づくり訓練をする為の風俗店は女性に子種を与える風俗店に比べれば遥かに安いが、それでも金貨1枚前後はするって冒険者のおっちゃんが言っていた。
確かに何度も風俗店に行くよりは安い。
お姉さんの発射タイミング指導が無いから、初心者には向かないだろうけど。
「そうなんだ。 これって何で出来ているの?」
素材が何なのかが気になった。
「プニの樹液を煮詰めた物だ。 ベルンの近くで手に入るからここでは安いが、よその街なら金貨10枚はするぞ。」
やすい、やすぅ~い!
って、夢グループはもうええっちゅうねん!
「女性用もあるの?」
「女性用のサオモドキは花街の店で売っている。 男だと使い心地が良く判らんし、サイズや形が色々あって頭の悪い俺達には難し過ぎるから、おんなしが出張って売っている。」
サオモドキ、名前だけで何となく判る。
昔は張り形と言っていた物だろう。
奈良の平城宮跡からも発掘されたという、歴史と伝統のある大人のおもちゃ。
前世なら電動のもあったけど、この世界だと魔導具になっていたりするのかな。
最近日本で人気になっている“吸うやつ”も有るのかが気になった。
聞かないけど。
「そうなんだ。」
取りあえずシリコンっぽい素材があるのが判った。
本来は密封容器のパッキンとかに使って居るのかも知れない。
「チチモドキとサオモドキは、厄除けや紹運の飾り物として、出入口に吊るしている家も多いぞ。 シリモドキをエントランスにデデンっと飾っている貴族の家もある。 飾っておくだけでも霊験あらたかな上、実用品としても使えるから買い得だぞ。」
「そうなんだ。」
そう言えば、この世界での子づくりは神聖な行事だった。
チチモドキとサオモドキが厄除けになっていても不思議では無いけど、・・・。
前世なら、玄関の上にチチモドキとサオモドキが吊るしてあったら、ビックリだぞ。
その上、入り口を入った途端にシリモドキが鎮座してたら、絶対に回れ右して帰るよな。
それにしても見事な程リアルに出来ている、詳しくは説明しないけど。。
ちょっとシリモドキが欲しくなったけど、監視員さん達がじっと見ているので諦めた。
俺がシリモドキを買ったと大陸中に知られるのは嫌、絶対に嫌。
試してはみたいけど。
ぐぬぬ。
ドンドンドンと大きな箱ばかりが積んである店があった。
「この箱は何なの?」
「火事場の焼け残りだ。」
「焼け残り?」
「火事で焼け残ったが、消火の時に掛けた水に浸かって普通の商品としては売れなくなった物だ。」
「何が入っているの?」
「この4つは、服だ。」
おっちゃんが蓋が開いている箱を見せてくれた。
「どの箱の服も、火事の煤を被っている上に水に浸かったから酷く汚れている。 着られないわけでは無いが、煤の汚れは洗ってもなかなか落ちないから、汚れ仕事用の作業着くらいしか使い道がない。」
「そうなんだ。 こっちの箱は?」
「この3つは古代遺物の魔導具だ。 動かなくなった古代遺物は、今の技術では直す事が出来ないから、バラバラにして使える部品を探すくらいしか出来ん。 バラバラにするのも手間が掛かるから、金に困っている魔導具職人くらいにしか売れん。」
箱のふたを開けて見せてくれた。
煤で汚れた、良く判らない小さな箱っぽい物がたくさん入っている。
「そうなんだ。 こっちの箱は?」
「この4つは煤だらけの水に浸かった本だ。 紙が貼り付いているし、煤がべったり付いているから読むことは出来んが、乾かせば焚きつけに使える。 乾かす手間はいるが、煤が付いているから良く燃えるぞ。」
箱を開けて見せてくれたが、本というよりも紙粘土の塊にしか見えない。
「そうなんだ。 こっちの箱は?」
「この2つは焼けた工具や刃物だな。 火事で焼けた刃物は脆くなっているから使い物にはならん。 一度溶かして製錬し直す必要があるから、まあ屑鉄と思った方が良い。」
「そうなんだ。 あの箱は?」
「この3つは布類や良く判らない道具類、割れてはいないが汚れがこびりついているビン類などだな。 要するに普通に洗ったのでは汚れが落ちないから売れない物、まあゴミだ。」
ゴミを売っているのか?
まあこの世界はリサイクルが当然な世界。
前世でも高度経済成長期以前はリサイクルが当たり前だったから、この世界ならゴミを売っていても不思議ではない。
「買う人っているの?」
「本とゴミは1箱で銅貨3枚、服は1箱で銅貨5枚、魔導具と刃物は1箱で銀貨1枚と安いから、時々変わり者が買ってくれる。 もっともどれも箱代が銅貨5枚足されるけどな。」
薄汚れた安っぽい箱だが四方が60㎝位ある大きな箱なので、箱代が銅貨5枚するらしい。
箱の方が中身よりも使い道がありそうに思える。
本やゴミは箱代の方が高いのも判らないではなかった。
本とゴミで7箱、服が4箱、魔導具と刃物で5箱、全部で16箱。
本とゴミで銅貨21枚、服が銅貨20枚、魔導具と刃物が銀貨5枚で、全部で銅貨91枚。
箱代が銅貨80枚だから、総計で銅貨171枚。
「全部で銅貨171枚?」
「何だと? ちょっと待て。」
おっちゃんが地面に何か書き始めた。
暇なので開いていたゴミの箱を漁ってみる。
火事場特有の焦げた匂いがしている。
普通に洗っても、この匂いは取れそうも無い。
内側まで真っ黒になった、結構な数のビンが入っている。
シーツやカーテンのような物が見える。
靴下や染みの付いた下着も有る。
べったりと染みが付いたパンツ、煤の染みだけど。
うん、ゴミだ。
“こんなものを買うつもりか?”
レイから念話が来た。
”浄化と回復の練習に使おうかと思ったんだ“
”成る程、効果を目で見る事は出来るな“
浄化や回復は練習出来る所が限られているし、効果を目で確認するのは難しい。
“でしょ? 旨く行かなくても、安いから惜しくは無いし”
収納は既にゴミ屋敷状態だし、容量は無制限だから多少ゴミが増えても問題は無い。
ゴミ屋敷にゴミを入れても、ゴミ屋敷なのは変わらない筈。
100℃のお湯に100℃のお湯を足しても100℃のお湯なのと一緒。
ちょっと違うか。




