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125 俺が街の外に出るのは無理っぽい

「最近、冒険者が増えてる様な気がするんだけど。」

治療室に遊びに来たバンさん達に聞いてみた。

ブンさんはいつものようにギルドの入り口横で、ベロを絶賛モフモフ中。

バンさん達は暇なようで、治療室でのんびりしていた。

「ショータのお陰で戦争の危険が少なくなったから、稼ぎの良いベルンで1旗挙げようという冒険者が増えたんだ。」

俺のせいなの?

「以前はいつ周辺の国が攻めてくるか判らない状態だったから、強制徴集される恐れがあるベルンに来る事には2の足を踏んでいた冒険者が多かったんだ。 ショータがワイバーンを倒したから、周辺国がショータの実力を恐れて一斉に軍を引いた。 そのせいで、戦争の危険が無いなら、稼ぎの良いベルンで1旗挙げようという冒険者が次々にやって来てるんだ。」



戦争の時には、兵士を確保する為にギルドの冒険者を強制的に徴集出来る権限が領主に与えられる。

もっともそれはBランク以下だけど。

そうでないと一流と言われるBランク以上の冒険者はよその国や領地の依頼を引き受けられない。

Bランクの冒険者は、1個大隊以上の戦力と言われている。

依頼を受けて知らない領地に行って、戦争の為に徴集されるような事が有っては、安心してよその領地の依頼を引き受けられない。

強い魔獣が出た時、討伐出来る高ランク冒険者が強制徴集を恐れて依頼を引き受けてくれなければ、その地域全体に甚大な被害を受ける事がある。

その為にBランク以上の高ランク冒険者は、大陸ギルドの規定によって強制徴集を免除されている。

ベルンで戦争が起ってもAランクである俺が強制徴集される事は無い。

但し、領主に年金を貰っていて戦争に参加しないと、冒険者としての信用に響くらしい。

俺は貰っていないから関係無いけど。



「でも、怪我をする冒険者が凄く多くなっているんだよね。」

冒険者が増えて怪我人が増えるのは当然だが、それにしても怪我人が多すぎる。

「ベルンは辺境だから、魔獣のレベルが違うんだよ。 掲示板に張り出されている依頼もよその街より1ランクは上と思って受けないと、怪我をする。」

「どゆこと?」

「冒険者が護衛依頼で他所の街に行った時には、護衛した馬車が出発するまでの待ち時間に、その街のギルドに行って討伐依頼を受ける事が多いんだ。」

「うん。」

「俺達がよその街に行った時は、安全の為にベルンで倒し慣れている魔獣の討伐依頼を受ける。 ところが、何故かは分からないけど、同じ名前の魔獣なのにベルンにいる魔獣よりもめっちゃ弱いんだよね。」

「そうなの?」

「たまたま倒し慣れた魔獣を討伐する依頼が無かった時があって、よその街でCランク依頼を受けた事があるんだ。 依頼は1ランク上でも受けられるからね。 ベルンだと少し厳しいけど、頑張ったらどうにか倒せるという強さの魔獣討伐だったんだけど、その街の近くにいたCランクの魔獣はいとも簡単に倒せた。」



「ベルンの灯が強くなったからじゃないの?」

ベルンの灯は毎朝俺の横で訓練しているから、真面目に頑張っている事は知ってる。

1年前からは、俺の指導に来てくれる熊が、ベルンの灯にもアドバイスしている。

今では魔力の少ないバンさん達も効率よく体に魔力を纏わせる事が出来るようになったので、瞬足が使えるし、剣速も出会った当時と比べたら目を見張るほど早くなっている。

ブンさんの探知も凄くレベルが上がったと聞いている。

大門ギルドの御館様であるズンさんが、ベルンの灯の事を大門ギルド期待の星と言っているのも頷ける成長ぶりだ。

「確かに強くなっているのは自分でも判っているよ。 まあ毎朝ベロと模擬戦をさせて貰えば強くなって当たり前だけどね。」

「バンさん達が頑張ったからだよ。」



ベルンの灯はもう1年以上、依頼で街の外に出た時以外は毎朝ベロと模擬戦をしている。

模擬戦といっても、バンさん達の武器はいつも使っているメイン武器。

もしも偶然に1撃が当たってベロが死んでも、再召喚したら生き返るからバンさん達は遠慮なくベロを攻撃出来る。

慣れた武器を使って、強い相手と毎日全力で戦えば練度は急激に上がる。

最初は完全にベロに遊ばれている感じだったけど、この頃は結構良い戦いをしている。

それでもベロには1撃も入らないけど。

Sランクは伊達じゃない。

いつも俺が訓練している横で模擬戦をしてるから、ベルンの灯の動きがどんどん良くなって来たのを、俺は目の当たりにしている。

攻撃力が全くない俺としては羨ましい限り。



まあ他人は他人。

今の俺がなすべき事、即ち逃げる時に必要な体力と防御力の強化に全力で取り組んでいる。

調子こいて勇者の真似をしたモブが、序盤でいとも簡単に死んでしまうのはファンタジーのお約束。

街の外に出て魔獣に襲われたら、今の俺に出来るのは結界を張って耐えるだけ。

1頭なら眠らせる事も出来るかも知れないが、群れだと絶対に無理。

街の中なら警備隊が来てくれるし、襲撃者も諦めてくれるが、街の外ではそうはいかない。

魔獣の群れ引き連れて街に戻るのは、即冒険者資格取り上げとなる最悪の違反行為。

目の前に美味しい餌があれば魔獣は絶対に諦めてくれない。

そして、魔獣は魔力の大きな人間が大好物。

俺の魔力はめっちゃ大きい。

うん、ベルンの灯を真似して街の外に出るなど論外だ。

モブはモブらしく、安全第1でひたすら基礎訓練を重ねるしかないのだろう。



「俺達が強くなったのはともかくとして、よその街で戦った後でベルンに戻って同じ魔獣と戦うと、やっぱりベルン周辺の魔獣は強いんだ。 その上ベルンでは予想外の魔獣が突然現れるなんて事は日常茶飯事だから、依頼のレベル的には2ランク位違う感じだね。」

「ベルンでは強い魔獣が突然襲って来るの?」

「ああ、ベルンは街の近くにも強い魔獣が居るからな。 強い魔獣は移動速度が速いから、他の魔獣との戦いに気を取られている僅かな時間で接近して来るんだ。 よその街だと、近くに強い魔獣が居る事なんて殆ど無いんだ。」

「そうなんだ。」

魔獣と戦った事の無い俺には判らないけど、ベルンの周辺だけ魔獣が強くなる何かの原因があるのかもしれない。



「冒険者が多くなったのは、戦争で強制徴集される恐れが無くなったからなんだね。」

「そう言う事。 ところがベルンにいる魔獣は、よその街の近くにいる魔獣よりもめっちゃ強い。」

「えっとぉ、新しく来た冒険者が、以前受けていたのと同じ魔獣討伐依頼をベルンで受けてみたら、ベルンの魔獣が予想外に強かった?」

「そう、正にそれ。 ベルンと他所の街では同じ名前の魔獣でも、強さが全然違って怪我をする事が多いって事。」

「そうなんだ。」

「その上、ベルンの近くでは、戦っている最中にもっと強い魔獣が飛び出してくることがある。 怪我で済んだ冒険者はましな方で、全滅したパーティーも幾つかあるよ。」



大陸1危険な街と言われているのは、伊達では無いらしい。

やっぱり俺が街の外に出るのは無理っぽい。

「それで治療室が忙しくなっているんだ。」

「まあベルンで1年くらい活動すれば、ベルンの魔獣に慣れるとは思うけど、それまでが心配だね。」

そう言えば以前、熊がベルンの冒険者は他の街の冒険者よりも1ランク上だと言っていた。

「でも、よそから来た冒険者って、自信満々な人が多いよね。」

治療室から出た時にフロアにいる冒険者の様子が目に入るが、見知らぬ冒険者達が受付のお姉さん達に偉そうにしているのをよく目にする。

怪我の治療に来ても、俺に対して上から目線で命令しようとする冒険者が増えた。

回復師を雑用係と見下しているようで、時々むかっとしてしまう。

「それが問題なんだよな。 受付のお姉さん達が注意してくれているのに、ちっとも聞かないんだ。 まあ冒険者は自己責任だからお姉さん達もそれ以上は言わないし。」

生きて治療室に戻ってくれれば何とか怪我を治せるけど、失った腕や足は俺でも治せない。

回復の練度を上げる練習がもっと必要な気がした。


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