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116 どんだけ食いしん坊なんだよ

「竜滅殿とお見受けしましたが、間違いありませんでしょうか。」

「はい。」

「ベロ殿の魔力を関知したのですが、竜滅殿は魔力量が多いとタイガが申しておったので、ベロ殿と一緒にいるのは誰だろうかと疑問に思って鑑定を掛けさせて頂きました。 ご無礼お許し下さい。 申し遅れました、私はトーラと申し、東虎会総家を務めております。」

うん、鑑定で観た。

先日の襲撃事件で手に入れた古代遺物の指輪のお陰で、俺の魔力が隠せていたらしい。

「先日、隠蔽の古代遺物を手に入れたのです。」

「そうでしたか、それは失礼致しました。 それにしても、私の鑑定を完璧に弾くとは恐れ入りました。」

「いえ、とんでもないです。 ところで竜滅と呼ばれるのは好きでは無いので、ショータと呼んで下さい。 私もトーラ様と呼ばせて頂きますから。」

「承知しました。」

「ところでトーラ様は何故ここに?」

「ここは東虎会のシマですから、魔力の大きな者が入って来た時には東虎会の幹部か会長のタイガが出張る事になっております。 今日はあまりにも大きな魔力だったのと、タイガが出掛けていたので私が出張る事にしました。 ベロ殿も隠蔽で魔力を抑えておられるようですが、それでも私達からすると大きな魔力を持った強い相手に見えたのです。 まあお2方が相手では誰が出張っても無駄でしたでしょうが、これも組織を統括する者の責任とお見逃し下さい。」



「ご迷惑をお掛けしました。 今日は買い物に来ただけで、他意はありません。」

「買い物ですか?」

「えっとぉ・・・。」

レイの服を買いに来たとは言えないので口ごもってしまう。

ふと向かいを見ると、さっき俺を追い出した店の入り口に立っている護衛が目に入った。

トーラ様も護衛に目を向ける。

護衛が慌てた様子で俺とトーラさんを交互に見ている。

トーラさんの事を知っているらしい。

「知り合いに贈る服を買いに来たのですが、店に入れて貰う事が出来ませんでした。」

「そうでしたか。 まことに申し訳ありませんでした。 どのような服をお求めですか?」

「王族が着るような立派なマントを持っている方なので、マントに合う上等な服を買おうと思っています。」

「でしたら、私が案内します。 この店は値段が高いだけで、品質はそこそこの物しかありませんから。」

ってトーラさん、店の方向を睨みながらそんなに大きな言っていいの?

護衛のおっちゃんが、俺とトーラさんを見て慌てているんだけど。



路地を入った所にある落ち着いた外観の店に案内された。

「この店は高位貴族の払い下げ品のみを扱っているお店なの。 品質の良い品を置いているし品数も多いので、きっと気に入る服が見つかりますわ。」

「俺が入っても大丈夫?」

「店員教育もしっかりしているから大丈夫よ。」

トーラさんがドアを開けて中に入る。

俺も後に続いて店に入った。

「いらっしゃいませ。」

「こんにちは。」

「本日はどのような御用でしょうか。」

立派な服を着た店員のリーダーらしいおじさんが出て来た。

紳士服の店なので店員さん達も男ばかり。

この世界では男性用のお店に女性店員がいると、男性が怖がってしまうと聞いた事がある。

「今日は私では無いの。 フルギも名前は知っていると思うけど、こちらの方が有名な竜滅のショータ閣下。 そして従魔のベロちゃんよ。」

店員さんはフルギさんという名前らしい。

「なんと! おい、お館様をお呼びしなさい。」

横にいる店員さんに声を掛けると、店員さんが慌てて奥へと走った。



「竜滅殿は当店にどのような御用でしょうか。」

フルギさんが、ピシッと背筋を伸ばして応対してくれる。

そんなに緊張されると話し難い。

「竜滅って呼ばれるのは嫌いだから、ショータって呼んで。 言葉も普通にしてね。」

「おそれ・・はい、ショータ殿は当店にどのような御用でしょうか。」

「知り合いに贈る服が欲しいんだ。 凄く立派なマントを持っている人なので、豪華なマントに似合う立派な上下服とシャツを買いたいと思ってる。」

「失礼ながら、ご予算はどれ程でしょうか?」

「予算は考えず、品質優先でお願いします。」

自分で稼いだ金を使うのは嫌だけど、あぶく銭は沢山ある。

トーラさんの紹介だからボッタクリはなさそうなので、値段は気にせずに良い物を出してくれるようにお願いした。

「その方の身長や体型は判りますか?」

「身長は193㎝、肩幅は結構広い感じだけど体型はスリムかな。 服を見せてくれたら、サイズが合うかどうかは大体判ると思う。」

レイはぜい肉も余分な脂肪も無いのでスリム体型と言えるだろう。

余分どころか、必要な筋肉と脂肪も無いけど。



「左様で御座いますか。 マントのお色はどのようでしょうか?」

レイのマントを見せれば説明する必要が無いが、ここで見せる訳にはいかない。

レイのマントは、公爵が謁見の場で着けていたマントに比べても、生地や刺繍、装飾の宝石、どれをとっても遥かに豪華なのだ。

古代遺物の逸品で、公爵のマントよりも高そうな物をここで見せる訳にはいかない。

「赤地で胸元と縁取りは銀色っぽいかな。 金糸であちこちに刺繍が施されているよ。」

あちこちに沢山の宝石が付いている事は言わなかった。

説明しながら思ったけど、レイって派手好き?

いや、古代遺物の魔道具だから防御力重視で着けているのだろう。

あんな派手なマント、俺なら、いや普通の人間なら、恥ずかし過ぎてとてもじゃないが着けられない。

レイも恥ずかしいのを我慢して着けているに違いない。

「承知致しました。 すぐにご用意いたしますので、あちらに掛けてお待ち下さい。」

店員さんの指し示す方を見ると、椅子とテーブルがあった。

「よろしくお願いします。」

店員さんに挨拶して椅子に向かった。



トーラさんと椅子に腰掛けたら、すぐにお茶とクッキーが運ばれて来た。

「ベロちゃんにクッキーを上げても良いですか?」

俺の横に座ったベロを見ながらトーラさんが聞いて来た。

ベロがじっとクッキーを見ていた事に気が付いたらしい。

ベロ、意地汚く見えるから食べ物をじっと見つめちゃダメ。

「うん、ベロはクッキーが好きだから喜ぶと思うよ。」

俺の言葉を聞いた瞬間に、ベロがトーラさんの横に移動した。

どんだけ食いしん坊なんだよ。

「撫ぜても大丈夫ですか?」

「うん。 撫ぜられるのも好きだから。 特に頭とかお腹を撫ぜられるのが好きだよ。」

トーラさんは俺の言葉の途中で、もう頭を撫ぜている。

「凄くスベスベでフワフワなんですね。」

「大門ギルドでは凄い人気なんだ。」

ちょっと自慢してしまった。

前世にいた愛犬・愛猫自慢の人達みたい。

まあ、ベロは犬や猫よりも可愛いし、賢くて強いから仕方が無い。



尻尾の蛇さんが頭を振っている。

蛇さんもクッキーが欲しいらしい。

「尻尾の蛇さんにもクッキーを上げてね。」

俺の前に置かれたクッキーをトーラさんの手元に押し出した。

トーラさんの前に置かれたクッキーは全部ベロが食べてしまって、皿が空っぽになっていた。

「まあ、蛇さんもクッキーが好きなのですか?」

「うん。 女性から貰うのは特に好きみたいだね。」

蛇さんが女性を好きなのは他にも理由がありそうだけど、それは黙っていた。

トーラさんがクッキーを差し出すと、蛇さんがパクっと食いついた。

欠食児童か。

少しくらいは警戒して、臭いを確かめるとかしろよ。

俺が食事をあげていないみたいでちょっと恥ずかしい。

いや待て。

あげて無いみたいじゃなくて、全然あげて無かった。



ベロもレイも俺の魔力があれば食事を摂る必要は無い。

必要は無いのと食べないのは違うらしくて、串焼きやクッキーは大好き。

ベロフアン達がギルドの入り口横でベロに食べ物をあげているから、俺が食事を用意した事はなかった。

ベロは食べ物が有れば有るだけ全部食べる。

猫はお腹が膨れたら食べ物を残すと言われているから、その点は犬っぽいのかも知れない。

小型犬程しかない体のどこにそれ程の量が入るのかと、不思議に思う程食べる。

太っても、一旦送還して再召喚すればダイエット姿で戻って来れるから問題無いのだろう。

俺からすれば食事が不要なベロに食べさせても、食べ物の無駄にしか思えないが、本人・・本犬もベロフアンも喜んでいるのでまあ良いかと思っている。

そんな事を考えていたら、店員さんがクッキーのお替りを持って来てくれた。

有難いけど、俺迄食べ物に不自由していると思われたようでちょっと恥ずかしかった。


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