表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/139

105 出張鍵開けはしないよ

”アジト、アジト♫ アジト、アジト♫“

ベロが変な節を付けた念話を送って来る。

前回闇のナーベのアジトに乗り込んだ時、思う存分大暴れ出来たので、今回も暴れられると意気込んでいるらしい。

尻尾の蛇さんもベロの念話に合わせて頭を振っている。

念話で歌えるとは思わなかったのでビックリ。

でも俺は歌わない方が良さそう。

以前ベロが住んでいた屋敷の浄化に向かう時、機嫌よく歌っていた俺の歌を、ベルンの灯が敵を威嚇する為の恐ろしい唸り声と評した事は忘れていない。

思っても居なかった不評が、めっちゃショックだった。

俺は経験から学べる男だ。



途中で見回りの警備隊と2度遭遇したが、隊長が説明してくれたので問題は無かった。

うん、隊長が1緒に来てくれて良かった。

どちらの隊長も一緒に来たがったので了承したら、同行する警備隊員が増えた。

アジトの捜索を任せられるので人手が多いのは有難い。

「付いて来る男達が大勢いるのだが、闇のナーベの構成員では無いのか?」

隊長が監視員達の方をチラッと見て俺に聞く。

監視員達はさっきの戦いについての情報交換をしているらしく、幾つかのグループに分かれて、歩きながら小声で話しをしている。

首を傾げたり肩を竦めたりしているので、どうやって俺が敵を倒したのかが未だに判っていないらしい。



監視員達は基本的に俺の動きを追っている。

俺は頭の中の探知画面を観ながら普通に歩いていただけ。

俺が歩くのを止めて立ち止まったのは、ベロの攻撃を受けた敵が落ちて来た後。

幾ら熟練の諜報員であっても、俺が敵を倒した方法は判らなくて当然。

そもそも俺は、自分の周りに結界を張っただけで何もしていないのだから。

「あれは俺を監視しているだけだから気にしないで。 帝室や公爵家の諜報員も居るから、下手に係わるとややこしい事になるよ。」

「そ、そうか。」

帝室や公爵家と聞いてビビったらしく、隊長が慌てて目を逸らした。



素っ裸の男を先頭に、俺とベロが続き、警備兵10数名、監視員20名程がぞろぞろと倉庫街へと向かった。

倉庫街は川沿いにあった。

恐らく貴族の領地から船を使って穀物や特産品などを運んでいるのだろう。

平屋建ての大きな建物がズラリと並び、川の所には船着き場が作られている。

「こっちだ。」

男の案内で倉庫街の路地に入る。

川沿いの大きな倉庫の裏手にも沢山の倉庫が並んでいた。

「あの倉庫だ。」

男が指差した倉庫を探知で詳しく調べてみる。

1階は広い空間で人気は無い。

2階には部屋が8つ程あって、白い点がゆっくりと瞬いている。

俺に対する悪意を持った男達が固まっていると言う事で、ここが闇のナーベの支部である事が確定した。

瞬く間隔が長いので俺に対する悪意を持っているようだが、今の所殺意は無い。

俺が姿を現わせば、すぐさま悪意が殺意に変わる筈だけど。

倉庫に居たのは全部で30人程。

配下の半数近くはお出掛け中らしい。



”ベロ、やっちゃって。 全員殺していいよ“

飛び跳ねながら嬉しそうに歩いていたベロにGOサインを出す。

「ワゥォ~!」

ベロが嬉しそうに叫びながら倉庫に突進する。

ドガ~ン。

ベロが扉を突き破って倉庫に飛び込んだ。

ゴガン、ガガ~ン。ドゴッ、ドタドタ、ドゴ~ン。

大きな音が響き渡る。

ほんの5~6分で音が止んだ。

突き破られた倉庫の扉から生臭い血の匂いが広がって来た。

”浄化“

血の臭いは苦手。



「一応中を確認します。 付いて来ても良いですよ。」

「宜しくお願いする。」

ちょっと豪華な肩章を付けた隊長さん3人と3人の警備隊員が一緒に付いて来た。

途中で出会った部隊の隊長さんとその部下。

2人の警備隊員はその場に残って、案内していたリーダーの見張り。

1階には殆ど何も無かった。

2階も肉片は散らばっているものの、血の臭いはしない。

うん、浄化は便利。

家具も粗末なものだったようで、殆どがバラバラに破壊されている。

一番奥が俺を襲った幹部の部屋らしいが、机もたいしたものでは無かったようでバラバラ。

唯一立派な金庫だけが無傷で残っていた。



盗賊と疑われそうなので、警備隊の目の前で金庫を開けたくは無いけど、あまりにも立派な金庫だったので、中身が気になった。

”レイ、金庫開けられる?“

”造作無い。鍵の所に手を当てろ“

「金庫を調べてみます。」

隊長達に声を掛けてから金庫に手を当てた。

カチリ。

小さな音がした。

”開いたぞ“

「何とか開きそうです。」

隊長達に声を掛けてハンドルを押し下げると、金庫が開いた。

「「「おおっ。」」」

隊長達が驚いている。

何となく警備隊が捜査中に開かない金庫に出会ったら声を掛けられそうな気がする。

俺は電話1本で駆けつける鍵開け屋さんでは無いから、出張鍵開けはしないよ。



「金目のものは俺が貰ってもいいよね。」

「勿論ですが、宝石に関しては盗難の届けが出ているかを確認させて下さい。」

盗難品の確認については前回同様だったので仕方が無い。

金庫にあった現金だけを収納に入れた。

「書類については見たくないので、皆さんで調べて下さい。」

前回の様に貴族が依頼した暗殺の領収書が出てきたらややこしい事になる。

面倒な事は、警備隊に任せる事にした。

支部の書類だから、大物貴族の書類は無いとは思うけど、君子危うきに近松門左衛門。

下手に書類を見て、貴族と心中させられるのは嫌。

「ありがとう御座います。」

警備隊長の3人が俺に礼を言って、書類を調べ始めた。

残りの警備隊員は他の部屋の捜索をしている。

「もう帰ってもいい?」

隊長さんに聞いてみる。

「はい。 宝石については追って連絡させて頂きます。 ご苦労様でした。」

書類を調べている警備隊長達を置いて、部屋を出た。



今回も遠距離攻撃と近接攻撃の同時攻撃。

練度が高い者ばかりではあったが、攻撃パターンは前回と同じ。

公爵家暗殺の時には、護衛を遠ざけるなどの搦め手や馬車への細工なども使っていた。

残りの3人の支部長がいつ襲って来るかは判らないし、同じような攻撃法を取るとも限らない。

むしろ攻撃方法を変えて来る可能性の方が高い。

ずっと警戒を続けるのはめんどくさい。

めんどくさい時は運頼み。

びくびくしながら生活するのは嫌。

いつも通りに過ごして、襲って来た時には出たとこ勝負と腹を括った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ