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104 壁の向こうの風呂場は見えない

朝の訓練が終わると、いつも通りベロと一緒に図書館へと向かった。

中央大通りを北へと歩き、もうすぐ図書館という所で、俺の探知が違和感を告げた。

敵に気付かれない様に素知らぬ顔で歩き続けながら、そっとあたりを伺う。

“8人じゃな”

俺の気配が変わったのを感じたのだろう。

俺が敵に気が付いたと判断したレイが念話を送って来た。

レイの探知魔法は俺よりも遥かに練度が高いから、精度が高く探知範囲も広い。

伊達に1600年も生きて・・、いや死んでいない。

ただ、俺の探知練度を上げる為に、俺が敵に気付くまでは教えてくれない。

どんな時であっても探知から目を逸らさない事が大切らしい。

油断はダメ、絶対。

目の前の光景を見ながら、脳内に浮かぶ探知画面も視る。

最初はどちらかに目が行ってしまい、交互に見るしか出来なかったが、今では問題無く2つの画面を常に見ていられる。

“うん”

俺の探知には短い間隔で瞬いている8つの薄い白い点が映っている。

これは俺の探知魔法固有の機能。

俺に対する悪意や殺意があると探知の点が瞬いて知らせてくれる。

全ての点が短い間隔で瞬いていると言う事は、全員が俺に強い殺意を持っていると言う事。

敵が隠蔽を使っていると、探知の色が薄くなるため瞬きを見落としがちにはなるが、そもそも隠蔽を使っていること自体が後ろ暗いところがあると言う事。

薄い点があれば注意して視るので瞬きを見逃すことは無い。



色の薄い点を見落とさないよう毎日注意していた結果、今では強力な隠蔽を使っている者にも気付けるようになった。

探知に映っている色の薄さからみて、それぞれが練度の高い隠蔽を発動しているらしい。

敵が強力な隠蔽を使っていたから、少しだけ気付くのが遅れたものの、対応にはまだまだ余裕がある距離。

半年前なら恐らく致命的な距離まで近づかれていた筈なので、少しは進歩したらしい。

まあレイが居るから、攻撃前に対処してくれるけど。

ともあれ、今前方にいる者達は、かなり手練れの暗殺者達と判った。

レイが8人と言ってくれたから、暗殺者全員が俺の探知にも映っている事が確認出来た。

殺意の無い見届け人らしき者はいないので、誰かに依頼された暗殺部隊では無いのかも知れない。



図書館前の木の上に2人、手前の屋根に2人、左右の植え込みに2人ずつ。

遠視で視ると屋根の2人はクロスボウを持って居る。

ギルドの売店にも売って無かったから、この世界に来てクロスボウを見るのは初めて。

遠視をズームして詳しく見る。

かなり複雑な造りをした本格的なもの、この世界ではかなり高額な武器の筈。

最近は遠視も遠聴もかなり練度が上がって来たので、離れた所であってもズームすれば細かな構造まで見える。

壁の向こうの風呂場はまだ見えないけど。

何故風呂場が見えないと判ったか?

遠視の練度を確認する為に、仕方なく何度も試したから。

覗こうとしたんじゃなくて、練度を確かめるために仕方なく試しただけ、ホントダヨ。

木の上の2人は吹矢を構えている。

お手軽な短筒では無く、遠距離攻撃の出来る長筒の吹矢。

隠蔽の技術もだが、攻撃の技術も高そうだった。



“結界” “結界” “結界”

相手が相当な手練れと判ったので、念の為に結界を3重に張った。

今の俺に出来るのは結界で自分の身を守る事だけ。

俺の“睡眠”はレイよりも効果が高いものの、近距離で相手が止まっている時にしか効果を発しない。

離れた所にいる敵や、動いている敵には効果が無い。

属性魔法を使えない俺には、離れた所にいる相手を攻撃する手段は全く無い。

情けない話ではあるが、攻撃はベロとレイに頼るしかないのが現状。

ベロとレイにしても、属性魔法は使えないので、遠距離の敵に使えるのは睡眠や麻痺といった闇魔法しかない。

今回は相手のレベルが高いし、何かの魔道具を使うかもしれない。

特に屋根に居る2人はかなり遠い。

全員を拘束しようとしたら何人かに逃げられる恐れがあった。

1人でも逃がしたら、直ぐにアジトを引き払われてしまう。

”遠い所にいる敵は殺して。 出来れば近場の敵1人は生かして置いて“

ベロとレイに念話を送る。

“判った”

“承知”

両脇の屋根にいた2人がクロスボウを構えて狙いを付けようとした瞬間、ベロとレイが魔法を発動した。



ベロの麻痺をもろに浴びた屋根の2人が前のめりに倒れ、そのまま屋根の斜面を転がり落ちる。

ド~ン。

ド~ン。

地面に激突した音が聞こえる。

尻尾の蛇さんが飛ばした即死毒を浴びて、木の上の2人が枝から落ちる。

俺にばかり注意を向けて、ベロの動きを軽視した事が暗殺者達の命取りになった。

”屋根の2人は頭から落ちて死んだ。 木の枝から落ちた2人も毒液で即死だ“

ベロが3つの頭を高く上げ、褒めて褒めてモードで俺に体を擦りつける。

尻尾の蛇さんもブンブン頭を振っている。

ベロも蛇さんも俺が誉めてあげるとめっちゃ喜ぶ。

“うん、ありがとう。 みんなカッコ良かったよ”

褒めながら3つの頭と蛇さんの頭を撫ぜてあげる。

”植え込みの4人に麻痺を使ったが、1人には効かなかったので睡眠で眠らせた“

レイからも念話が入る。

植え込みの男達はレイが片付けてくれた。

“ありがとう”

うん、頑張ってくれた仲間にお礼を言うのは大事。

親しき仲にもレインコート。



俺を見張っている監視員達を見ると、キョトンとしている。

何が起こったのかが判らなかったらしい。

俺ばかりを見ていれば、まあそうなるな。

左右の植え込みに居た4人はその場で倒れていた。

植え込みを回り、植え込みの後ろに倒れていた男達4人にもう一度睡眠を掛ける。

今回は特に練度の高い相手なので、念には念を入れないと危険。

“ベロ、ここに4人を並べて”

”承知“

ベロが植え込みから次々と襲撃犯を咥えて来る。

俺はベロが咥えて来た襲撃犯の服を脱がせる。

嫌だったけど、今回はパンツも脱がせた。

案の定、パンツの中に暗器を隠し持った男が2人もいた。

2つの金で守られていれば安全なのは将棋の世界。

丸裸にすれば金で守られていても効果は無い。

見たくない物が見えてしまうが、余裕を持って対処できる相手では無い。

口の中も念入りにチェックする。

4人を縛り上げたら、尋問のお時間。



レイの麻痺が効かなかった男から尋問する事にした。

“回復”

練度や魔法抵抗力の高いこの男が、暗殺団のリーダーと推測した。

男が目を覚ます。

”自白“

すぐに自白魔法を発動する。

「お前の所属する組織の名は何だ?」

「・・闇のナーベ。」

魔法抵抗力の強いこの男にも自白魔法は効いたようで、あっさりと白状した。

この男が所属しているのは、以前、俺がアジトを壊滅させた暗殺組織。

ボスとアジトを潰したので、組織は解散したと思っていたら、まだ残っていたらしい。

「・・・俺を狙った目的は何だ?」

ベルンから逃走せずに俺を襲った理由が判らなかった。

「貴様を倒した者が次のボスになれるからだ。」

生き残っている幹部達による跡目争い?

跡目争いなら、競争相手がいる筈。

「他にも俺を狙っている奴がいるのだな。」

「生き残っている支部長は4人。 俺を倒しても残った3人の誰かが貴様を倒す。」

この男は闇ギルドの支部長らしい。

予想通りこの男がリーダーだった。

「支部長という事は配下がいるのだな。 配下は何人だ?」

「各支部には凡そ60人の配下がいる。」

「他の支部の場所はどこだ。」

「ボスが倒されてすぐにアジトを変えたから、新しいアジトが何処にあるかは俺も知らん。」

「貴様のアジトはどこだ?」

「貴族街の近くにある倉庫街だ。」

素っ裸で縛られたまま寝かされている3人に再度睡眠を掛ける。

リーダーであるこの男がいれば他の男を尋問する必要は無い。

当分は起きない筈なので、3人を放置しても問題は無いだろう。

「案内しろ。」

支部長を案内人にしてアジトに向かおうとしたら、警備隊が走って来た。



「この騒ぎは何だ、って竜滅殿であったか。」

ちょっと立派な肩章を付けた隊長は俺の事を知っていたらしい。

まあ図書館周辺を警備している部隊なら、俺の事を知っているのは当たり前か。

このあたりでは何度も警備隊の世話になった覚えがあるから納得出来る。

説明が楽になるので、俺の事を知っている男が隊長なのは有難い。

「暗殺ギルド闇のナーベの生き残りが8人で襲って来た。 4人は殺した。 死体と眠っている3人は警備隊に任せる。 明日には目を覚ますけど、かなりの手練れだから縛っては有るからといって油断はしないでね。」

「その男はどうするんだ?」

隊長が俺の横にいる裸の男に視線を送る。

「貴族街近くの倉庫街にこいつらのアジトがあるらしいんだ。 60人程の配下がいるそうだからこいつに案内させてアジトを潰す。」

「・・・同行させて貰っても良いか?」

1瞬考えた隊長が同行を申し出た。

暗殺関係の書類があるかも知れないと思ったらしい。

「アジトを変えたばかりだからたいした物はないと思うよ。 まあ来たければ来ても良いけど、邪魔はしないでね。」

「承知した。 おい、死体とこいつらの始末を頼む。 俺は竜滅殿と一緒にアジトに行く。」

「はっ、了解しました。」

副長らしい男が敬礼した。

「案内しろ。」

素っ裸のまま縛られた男と俺を先頭に北に向かって歩き始めた。


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