101 時が過ぎて 今 心から言える
レイによれば、俺の魔力量が異常に多いのは、創造神ハテナ様が加護をくれたお陰らしい。
神獣のベロもハデス王の加護を貰っているから魔力量が多いが、最高神であるハテナ様の加護を貰っている俺には別格の魔力量があるそうだ。
それを聞いて、ササヤカお神をちょっと見直した、ちょっとだけ。
今では困った時には神頼みをする。
いや、それは前からか。
何か良い事が起った時には、ササヤカお神に感謝の祈りを奉げる事もある。
奉げる事もあるだけで、大抵は忘れているけど。
要するにギルドの治療室は普通の魔力量を前提とした制度なので、有り余る魔力を持つ俺だけが暴利を貪っていたらしい。
思い返してみれば、異世界にやって来た時、右も左も判らない俺に食事と住む所を提供してくれたのが冒険者ギルド。
食事と宿だけでなく仕事も貰えたので、大門ギルドは砂漠で見つけたオアシス同様の有難さだった。
大門ギルドには、足を向けて寝られない程の恩がある。
アレ?
俺は寝る時に、頭を窓の方を向けて寝ている。
足の方向にあるのは、・・・ギルド。
毎日足を向けて寝てた。
気付かなかった事にしよう。
1年半も休日無しで働き続けられたのは、冒険者ギルドの人達がみんな優しかった事も有るが、ほとんどの時間が暇なので毎日好きな事が出来たから。
ぶっちゃけて言えば、夕方にちょろっと仕事をするだけで毎日がお休みのような状態。
休日が無い事に気が付かなかったのも、俺には仕事をしているという意識がまるでなかったからとも言える。
その上、剣は帝心一剣流の達人である熊が指導してくれる。
魔法はSランクのベロとレイが教えてくれる。
図書館の利用料もギルドが払ってくれる。
ベルンの灯や冒険者のおっちゃん達が、街の噂や情報を教えてくれる。
この世界の事が色々判ったし、信頼できる人達とも出会えた。
振り返ってみれば良い事ばかりだった。
時が過ぎて 今 心から言える。
ギルドに来れて よかったね きっと 私、ってキョンキョンかい!
治療室では働いているというよりも、この世界で生き残る為に魔法の練度上げをしようという意識の方が強くて、もっと怪我人が来て欲しいとまで思ってしまう事もあった。
怪我人を待っている時間は回復の練習が出来ないので、バリアや浄化の練習をしている。
お陰で治療室はいつもピカピカ、埃1つ落ちていない。
収納の中はゴミ屋敷だけど。
兎にも角にも、俺には攻撃手段が何も無い。
剣を攻撃に使えるようになるには、まだ何年も掛かりそう。
少しでも生き延びる可能性を高める為には、魔法だけでなく逃げ足や持久力など、あらゆる面で自分を鍛えるしかなくて、生きる残るために毎日懸命に頑張った。
訓練のおかげで、回復や診断の練度だけでなく、魔力操作自体が旨くなったらしく、探知や結界など他の魔法も練度が上がって来た。
1年半、自分を鍛える事に毎日全力投入だったので、周りが見えていなかったらしい。
気が付けば、お貴族様や本部の偉いさん用に用意されていた広い部屋に住んでいた。
家具も立派だし、この世界では貴重な風呂にも毎日入れる。
ベッドもフカフカなので、ベロをモフモフしながら一緒に眠るのは至福のひと時。
洗濯も掃除も浄化で簡単に出来る。
防音がしっかりしているので、夜はレイと魔法談義も出来る。
下手な高級宿よりもずっと住み心地が良い。
高級宿に泊まった事は無いけど。
腕利きの警備員達が居るので防犯対策も万全。
ベロとレイが居るから、警備員がいなくても安全?
まあそうだけど。
ともかく、今回公爵家の提案を聞くまでは、休みが無い事にすら気付いていなかった。
不満が全く無かったので、休みの“や”の字にすら意識が行かなかったのだろう。
「やっぱり休日を取らなくちゃダメ?」
まるで年休を取らずに働くワーカーホリックと、年休を消化させる責任がある上司との会話。
「公爵家が提示して来た年金の受け取りを断るのだから、週休2日の提案まで跳ね付けるのは拙い。 今回は公爵家の顔を立てて、週に2日は休め。」
熊に言われて、渋々週休2日を受け入れた。
常連の怪我人さん、俺の出勤日を確認してね。
初めての休日は、ベルンの散策。
ベルンの街は大陸1危険が危ない街。
戦争が多いし、周辺の魔獣もめっちゃ強い。
そのせいで、街の中には荒くれ者の傭兵や命知らずの冒険者が大勢ウロウロしている。
1年半住んでいるが、安全を最優先にしていたので、街に出る事は殆ど無かった。
当然の結果として、街の事は殆ど知らない。
今はベロとレイがいるので、護衛無しでも安心して街を歩く事が出来る筈。
Sランク2人を護衛にしたAランク冒険者、大陸最強のパーティー?
無限収納に住んでいるレイの事は秘密だけど。
もっとも武器や攻撃魔法は誰も使えないから、戦力過剰かどうかは正直微妙。
ともあれ、これからの事を考えるとベルンの街の事を知って置くのは大切。
初めての休みは、ベロと一緒にギルド周辺の散策をする事に決めた。
今日1番の目的は市場に行って色々な商品の鑑定をする事。
今迄はギルドに閉じ籠っていたので鑑定対象が限られていた。
同じものを何度も鑑定するよりも、色々な種類の物を鑑定する方が鑑定の練度が上がる。
今日は新しい鑑定対象を見つける為の散策。
前世とは違って、ベルンの商店にはショーウィンドが無い。
当然、店の外から商品を鑑定する事は出来ない。
とはいえ、いちいちお店に入って商品を見せて貰うだけでは只の冷やかし客。
お店に迷惑を掛ける事は出来ないので、店先に商品を並べている市場へ行く事にした。
ズンさんに聞いたら、ベルンで店先に商品を並べているのは、市場と露天商くらいだったから。
ベルンには東西南北4つの大きな市場がある。
大門ギルドから近いのは南市場。
ギルドで地図を見せて貰ったので、迷う事は無い。
ギルド前の道を左に行くと大門と中央公園を繋ぐ中央大通り。
図書館に行く時はいつも左に行く。
右に行くと、以前服を買った商店街。
今日は右に向かって歩いた。
右に行くのはベルンに来て2回目。
少し歩くと看板を掲げた普通の家風の商店街。
”次の辻を左だ“
しっかりと地図を覚えたベロが道案内してくれる。
ケルベロス・ナビゲーション・システム、略してベロナビ。
高性能なベロナビがあるから、迷うことなく街を歩ける。
俺?
探知の練度が上がったので、広範囲の探知にしていても道や建物がうっすらと探知画面に映っている。
勿論範囲を狭めれば、家の間取りや隠し部屋だけでなく地下の部屋も判る。
ただ、角を曲がるとどっちに向かっているのかが判らなくなる。
探知に映る画面はいつも正面が上。
角を曲がれば探知の画面がグワンと回転する。
3回角を曲がれば迷う自信がある、どうや!
という訳で、俺はレイを運ぶ役目。
収納に住んでいるのだから運ぶ必要は無い?
ソウデスカ。
キョンキョンが4月3日のMステーションに出演すると聞いて喜んでちょこっと歌詞を借りました。
「あなたに会えてよかった」はキョンキョンの作詞で、頼運の大好きな楽曲です。
還暦を迎えたキョンキョンの歌をTⅤで観れるのを楽しみにしています。




