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境界ダイアローグ - 差し伸べる手は人を救うか -  作者: 和琴
偉大なる勇者レン様と、神の御心のままに。
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第五十四話 - 運命の、すっとぼけ

ギルドの中石づくりの水場で

窓から日光が射す中…

半袖で服を洗う。


椅子を用意して、魔具を使って用意した水を

器に貯めて、生暖かい水に手を突っ込んで

回転させて…血が取れない。


こういう時、どうするのが正解なの?


ぎるど、かえる、ふく、血だらけ…

汚しちゃった。


それに…この血は…。


向日葵の服に着替えた、

それでも握られた手の感触が抜けない。

その部分だけ、内出血がぶり返してて…

あの老人よりよっぽど強く握られてたんだ。


今になって胸が苦しい、水でものんで

…っと、塩もひとさじ。

魔具で作った水は危険だからね。


今はお昼の一時半、アリッサちゃんに

約束破りを叱られる間もなく、食卓に少し齧っただけの

パンが残されていて、自分のドジを恨んだ。

それに食べてないパンもかなり多かった。


トルトルさん達がいたにもかかわらず…

つまり私、全員に心配かけちゃった。


「一人で…食べるの…」

昨日もそうだったけど、今日はより孤独な気分。


目を閉じると夜空?

うーん、カエルとか食べたときも一人だったっけ。


…ダメだ、どうしても、手が気になる。


ひりひり、むずむず、跡が気持ち悪い。

きっと救えてたら、別だったんだけど。


何で急にこんな事、思い出したんだろ。

明さん、お父さん、お母さん、フラリスさん、

ポロトンさん…あ…


目を閉じて、遺跡をイメージする。


「ごめんね、マーレンさん。

お話しいいかな。」


穏やかに蒼い竜巻が回ってる。

「もちろん。」


「わたし、今悩んでて。

アリッサちゃんに連絡しろって言われたのに

腕輪での連絡を忘れちゃって。

あと、服に付いた信者さんの血が取れなくて。」


マーレンさんは数秒経つと、ゆらゆらと白磁の柱を回る。

そしてゆったりとした声でこう返した。


「私はとても久しぶりに、日常の悩みを聞いた。

とてもいい兆候じゃないか?ひまり。」


え?


「日常が守れたってこと。

憲兵の取り調べで通話してどうする。

服と宝珠を一緒に入れて見ろ。

そんな悩みが出来るぐらい、お前は今安心している。」


「そうなの…かな、でも腕に握られた跡が…」


「確かにそれは痕跡だ。

でもそれで負債と感じる事…

それからも自由になれ。

そしたら、たっぷり好きな話ができる。」


言われてみれば…ちょっと自分に嘘ついてみよう。

「そうだね、ちょっと目を開けるね。」


半信半疑で宝珠と服を、水桶に入れてみた。


…ぐるぐる~~~!?


服が、回る回る回る!

何かの魔法も掛けていたのかちょっと水を交換したら

すぐにきれいになった。


後は…干せばいっか。


そうして2階の日の当たるところで服を干していると異様な光景が見えた。


銀色の、沢山の鎧の行列。

猛暑期にもかかわらず、そこだけが魔法で日差しが黒く変わり

規則正しく並んでは、警備についていく。


…何!?軍隊!???


え、いきなり何があったの?

まさか、風の宝珠がバレた!?

それともほんとに何があったの!?


「皆さん、勇者教と盗賊団の

報復闘争の末、

レジスタンスが付近のダンジョンを爆破しました。、

緊急の用事が無ければ外出しないように!」


大変だ!


窓からのぞいていると、何だか背後から音からした気がして、

ちゃんと、ちゃんと!窓を閉じて鍵を閉めて

後ろを振り向いた。


「日葵さん!大変です!

ご来客です!」

いつも冷静なベラーゼ君らしからず、

その黒くて体力のある体を揺らして叫んでいた。


「どうしたの?紫苑さんは…」


「日葵さんじゃないと無理です!」


私じゃないと…無理?


「分かりました、でも制服無い!」


「そのままでいいです、ギルドの対応じゃないですから!」

なになに?


手を引かれて急ぐベラーゼ君に対し、手すりを持って階段を降りる私。


特別応接室の扉を開けると

すごく立派な大剣を持つ衛兵さんたち。


青と金で装飾された、まるであの大槍みたいな芸術品だ…じゃない。


私は中央の人物に頭を下げる。

「建内日葵です。本日はお越しくださりありがとう御座います。

ご遠慮なく椅子にお掛けください。」


そのあいさつの後、しっかりと相手の顔を見て驚いた。

白髪で、鎧を付けてはいるし…無骨な服の緑色の目の中年。


暫く会ってないけど分かる、カロルガーランドさんだ。


「建内 日葵さん。ベラーゼ志男琉君。

それぞれの仕事や生活がある中、対応ほんとうにありがとう。

日葵さんの痛ましいその傷、早く治るとよいな。」


私を指名して会いに来たってこと。

もしかして、レンさんの伝言で直接来てくれたの??

何の目的なんだろう。


「申し訳ないのだが、本日は依頼の受付を中止し

もしもギルドに人が来たら、見張りの増員依頼に当ててはくれないだろうか。」

優しく、昔より眩しい。


「ベラーゼ君、記録をお願い。

はい。管理人も外出しておりますし、私の判断でギルドの営業を中止します。

こちらも市民に被害が出るのは心苦しいですから。」


でも、取るものは取らないと…と思う。


「しかし、このギルドは資金難で…

半日分…4000クラン程度の補償を頂きたいのですが…」


私も緊急事態なのに、緊張できなくてバカみたい。

拍子抜けするほどあっさり口に出てしまった。


ガーランドさんは頭に指を当てて考える。


「帳簿は出せるかい?

国でも判断せねば、民に申し訳が立たない。」

ガーランドさん、自分でメモしてる。


銀の腕輪に祈って、紫苑さんに伝える。

「紫苑さん、以前資料にあった収支をお願いできますか?

…国からの要請で営業損失を提示します。」


「エビデンスはあるようだね、

さて…もう一つの本題と行こうか。」


通路の奥の影から、緑色の服を纏った魔術師が

目を閉じて何かを運んでくる。


「勇者レンがお告げを受けて…

数日後、助けが必要になると連絡を受けたのだが…

そのお告げの通り王宮の適当な箱を拾ってきたのだ。」


適当という似つかわしくない言葉が引っかかった。

レンさん、何を。


「縁の下ギルドも例の護衛を受けているらしいな。

その中身を持っておき、必要な時に勇者レンまで渡すのだ。」


その箱、…何なの…。

紙で出来た、紫色の箱があった。


「ええ、分かりました。

あの、勇者レンからは他に何か…」


レンさんが必要とするものなら、引き受ける。


「あの話かい?

君がお告げで見た話を伝えたいという。」


…伝わってる…!


「ええ、お告げの話です。

数日後…竜達が勇者教に何か仕掛けるらしいです。

先日浮かんでいた竜の背を見た後、偉大な夢を見ました。

勇者教から自首者が現れたり、混乱が起こるかもしれないと。

複数の結末が見える…不思議な形でしたが。」


あの時は混乱していたけど断片は本当に、見たような気がした。


そして息を吸う。

みんな同時に息を吸った気がした。


「だから、もし勇者教が自首したら。

彼らの怒りを受け止め、よほど跳ねた

考えで無ければ国を改革せよと、ムテュスまで私にそう告げました。

さもなくば、更に凶悪な勇者教が発生する…と。」


ごめんね、ムテュスさん。

"よい。"…と勝手に頭の中で声を想像した。

もうお別れは告げたから、聞こえるはずないんだけどね。


王は片手を挙げ、頷いた。


「他国の民もいるが自国の勇者教は大半が自国民。

そうなってしまったものの怒りを聞くのは当然。

考慮しよう、可能な範囲でな。」


…ほっ。


「それに勇者のお告げのお陰で

私はこの大規模災害に、軍隊を持って立ち寄れた。

ああ勇者レンよ、何と神に愛された男だ。」


確かに、本当に愛されてるように感じた。

私も乗っかろう。


「勇者レン。

彼の言葉を聞くと、胸が暖かくなります。

ありがとうございます、神よ。」


これから、大注目されるのかな、レンさん。

目を閉じて、レンさんに祈りを捧げた。


★境界からの独り言★

この話、お気に入り。


情報量は馬鹿みたいに多いけど自分の好み。

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