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境界ダイアローグ - 差し伸べる手は人を救うか -  作者: 和琴
対話も決意も、立場を問わないから。
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第五十三話 - 救えない悲しみ、分かってても手を差し伸べた

石造りの病室、黄色く磨き上げられた木の扉の中に向け

私は必死に無事を祈った。

肩に穴は開いてるけど、男の人だし…何とか!


数分で扉が開いて、見ると…

先生が難しい顔で顔を叩きながら出てきた。


必死に祈りを捧げたのに、なんの意味もなかった。


「言い残すことがないかって聞いたら

死にたくない…だって。

日葵ちゃんごめん、救えなかったよ。」


先生は優しいな。

だから、その血の付いた手を掴んで

「ありがとうございました。」

って、話した。


「おい、お前らなんだ!」

「逃げて!逃げて!」


誰かが駆け寄る音がして入り口側を見ると男たち。


こちらに静かに歩み寄って

「建内日葵、何があった。

同志を…どうした。」


私は先生の前に立って、両手を広げた。


「私を殺すなら、来なさい

でも先生は関係ない!」


前に出た私の肩をに暖かい手を載せて

先生の体が私の腕を押し出し、

ローブの男たちに神妙な顔で近付いた。


「手は尽くしましたが

肩に大きな穴が開いていて

…出血を止められず、助けられませんでした。

お顔を確認されますか?」


私を無視して、男たちがぞろぞろと部屋に入る。

じっと扉を見ているとまた足音。


「レジスタンスは何処だ!」

複数の鉄の鎧が足を動かし、血まみれの私たちの前に立つ。


「この部屋の中か?」


そのまま彼らが扉を開けると…壁に穴が開いていた。


看護師さんは部屋の角で震えていて…

死体のそばには、私の似顔絵が印刷された紙。


その紙には、血。


べっとりと付いた血の、

2つの線が交差したせいで

何かの文字が消えていた。


男の死体の指からは、血が滴っていた。


「どうやらお前が関係しているようだな。

これから詰め所で、たっぷり話を

聞かせてもらおうか。」


…



「なるほどな…」

ここは詰め所…ではなく、病院の

処置室だ。


外が凄いやじ馬で、出ることが出来なかったので

仕方なくここで聴取を受けていた。


「我々が来たことで、君のご家族が狙われるんだね。

まずはカロル国西部の警備隊に連絡しよう。」


大丈夫かな…変な方向に話が進んじゃった。


「ただ、君の家族が襲われる可能性は少ないと思う。

これを見てみろ。」


…さっきの、紙だ。

上の方に血がべっとりついて滲んでいる。


「この紙は、上にどんな懲罰の対象かが書かれるんだ。

それをこの男、×印で消したようだ。

このクズどもも、恩は感じるみたいだな。」


その×は指で押したのに極端にいびつで

一つの線からはずり落ちる様に赤い線が刻まれていた。


この人は…人間だよ。

私が涙を拭うと、憲兵の方も優しくしてくれた。


「元気出して、命は救えなかったけど

自分は助かったじゃないか。」


そう言われると、どうしても棺が目に入る。


木でできた、質素な…本当に質素な箱。


病院にある、仮置き用の棺に

あの男が入っていた。


目を閉じて、ただ静かに…黙とうした。


目を開けると、憲兵の人も黙とうしてくれていた。


「この死体を回収して、

身分や持ち物を調べるぞ。」


結局何も救うことは出来ず無力感に打ちひしがれていた。


でも暫くすると、心の中に焦りが立ち上がる。

ギルドは、勇者教はどうなったの。


駆けだそうとする私を看護師さんが掴んだ。

「何処かケガしてたら大変、ちょっと確認させて?」


「へ…?」

振り替えると、完璧な笑顔で完璧な姿勢で

そして私を抱きかける看護師さん。


そしていきなり診療台に運ばれて

圧倒的な威圧感を放ってくる。


お仕事してる人の執念は時々恐ろしい。


「また無茶するつもりだよね。」

もう逃げられないぞ…そう伝えるかのような宣告を受けた。


「本当に、ケガしてない…」


「あの人がケガする現場に居たんだよね?」


「ケガしてないから…!」


仕方なく、体を確認してもらってから

ギルドに走って戻った。


私のけがは、腕のあざ一つだけだった。

★境界からの独り言★

シルバーウィーク最終日…2話更新でもいいかなと思って。

次は18時だよ。

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