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境界ダイアローグ - 差し伸べる手は人を救うか -  作者: 和琴
対話も決意も、立場を問わないから。
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第五十二話 - 連鎖する悪意、それでも救いたい

*

[最終警告]

建内日葵

今すぐガーネス町とオパル町の中間地点

旧アリアス貴族屋敷まで来い。

もし通報したり、無視すれば

何か悪いことが起こる。


*


…これは。

届いた手紙から、私宛の真っ黒な封筒。

その中身は、最終警告。


縁の下ギルドからの経路も、ご丁寧に指定してある。


「どうしよう、日葵ちゃん

ご両親が狙われてたら…

私達守れないよ。」

グースカと寝息を立てるバドレの前で

不安で泣くアリッサちゃん。


そこには、お母さんとお父さん

”もう一人の私がいる”。

私もなるべく、巻き込みたくない。


「遠回りして、レコンキスタに行ってくる。

一番早く連絡が取れるだろう。」

キャロスさんが急いで部屋を出て行った。


「私、行こうと思う。

連絡さえ取れれば、明さんと不思議な服を着てる

日凪さんがいるはず。

絶対に手を出せるはずがないから。」

もう一人の私も、あの”軍隊ミニオン”。

そう簡単には行かないと思うけど、それでも

お父さんお母さんは生身…


「だったら、ギルドに居てよ!」

アリッサちゃんが私に縋りついて止めてきた。


「私、話せそうな気がする。

一昨日の勇者教の人たち…最後は

複雑な表情だった。」


「もう、止めてよ!仕事に手がつかないよ!」

体温と涙でどれほど不安に包まれているか

痛いほど伝わってきた。


「時間を稼ぐだけ。

ここにはバドレさんがいる。

起こせば、守ってくれる。

私も少しだけ時間を稼いだら

安全なところに引っ込むから、ね。」

レンさんは、確か明さんから通信魔具…貰ってた。


キャロスさんさえレコンキスタに着けば

ライラさんかレンさんが何とかしてくれる。


「…ほんとだよ。

紫苑さんに、

20分ごとに連絡入れてもらうから!」

そんなことしたら、怪しまれるよ…


「1時間後、絶対連絡する。

お昼休みにみんなが安心して

ご飯食べれるようにするね?」


服の内側に、恩返しの刃と風の宝珠を忍ばせ

私も裏口からギルドを飛び出した。


何処か落ち着かず、そわそわして

周りを見るといつもの光景。

でも、もしかして…勇者教過激派に監視されてるんだ。


キャロスさんは誤魔化し上手だから大丈夫な…筈。


私は地図を見て、街道を進む。


「おはようございます。」

スポンジ護衛のルートと同じ…

顔なじみの依頼者や冒険者たちに挨拶しながら

道を進んでいった。


そして、路地裏に着くと背中に気配。

両手をあげて、そのまま進んでいった。


「建内日葵か。」


ローブの下、赤色の鎧を纏う男が

ダフィード!!


「そうです。ダフィードさん。」

私はそのローブからのぞく光を睨み返す。


「では判決を開始する。」

話し合う気がないんだね。


「何で勇者教になったのか」


「判決を」「聞きたい!!」


勇者教十数人が囲む広い空間に

声だけが響いた。


周囲はまるで全て光が当たっていないかのように

レンガ造りのはずなのに黒く染まっている。

静寂が空気を重くしていた。


お互い喋らない。

なら…


「この間、ギルドに来た人を

私は確かに憲兵さんに渡しました。」


息が詰まる、まるで逆判決。

こんなプレッシャーを背負って、

代審者をやるなんて。


「でもその時に理由を聞きました。

私が勇者ぶっている様に見えて、

ファンノッテの様な貴族を許していると。」


夏なのに、冷たい風が流れる。

震えるダフィードの手がちらりと見えた。


「ならば逆に、なぜ罪が分かっていて

未だに我らの話を聞こうとしない。」


何を言っているのか、よくわからないけど

私はそれでも信じたい。

分かり合える。


「ファンノッテには必ず人身売買を問いただします。

勇者ぶりに関しても、解決します。

私はあなた達を、ただ単に敵として見ているわけではないです。

だから、一度…」


「イハハハハー――――!」

突然ローブで降りてきた、黄色と赤の服の弾丸。

それがダフィードを鎧ごと貫いて、壁に突き刺した。


「よぇええええ!!!」

「野郎ども、飛び降りろ!!」


空中からの五月雨の様な突撃。

フードの男たちが3人倒れ、

沢山のオレンジ色と赤色の服の人たち。


デルタ盗賊団とレジスタンス…???


「こいつ等がっぽり金持ってるんだろ?

思いっきり刈ってやるぜ!」


…!


「ふざけるな!お前ら、

私たちの恐ろしさを知らないのか!」


「俺たちの住処で勝手したのはおめえらの方だ勇者教!」


「くらえっ…!」

邸宅の外壁がまるで弓なりに動き、

勇者教の魔術師が棘のように変化させた岩を飛ばす。


私も屈んで、ダフィードの陰に隠れて躱した。


デルタ盗賊団が盾や武器を振るい、

岩を砕いてを砕いてその間で身を屈めていた。


そんな事より、倒れたローブの人たちに

その棘が突き刺さり、血を流し浮いていた。

…もう助からない。


「おいおい、こんなので倒そうって?

皆殺しにされたく無きゃ、金を引き出してこい!」


「我々の神聖な処刑中に代審者を。

報復を…報復をしてやる!

日葵もろとも死ね!」


余りの衝撃に、愕然とした。

…話が通じない、壁を感じた。


「こんなことするなら、

お金を渡しなさいよ!

見なさい!お仲間が…!」


私が指をさすと、

ローブの人たちの中で腰を抜かす者たちがいた。


しかし魔法を放った男は

真っ直ぐこちらに向き直り

大声を上げた。


「これより建内日葵の処刑を開始する!」


そんな私を無視するかのように…

デルタ盗賊団が信者たちを襲う。


「憲兵はこねぇ!

金を持ってこねぇなら金になるもの、全部奪おうぜ!」


そこからは、あっという間だった。

…どうしようもなかった。


即座に乱戦になり、どうしようもなくなった。


「ぐふっ…」

ダフィード…?


「苦しい…」

彼は大量に血を吐いて目を閉じた、それで思った

この人は無理、でもまだ助かる人はいないのかって。


この人は肩と脚だけ、まだ何とか…

妖気で止血してると、デルタ盗賊団の男が私の肩を叩いた。


「ちょっと刺激が強かったかな?

アンタ、ギルドの看板娘だろ?」


デルタ盗賊団、過去に二度会った。

でもそれどころじゃなくて、背負う準備をした。


「お前を殺すとキャロスが怖えってお頭がよ。

でも、通報したら誘拐しちゃうよん?」


「この人を病院に連れてくんです。

通報なんてその後、逃げればいいじゃない。」


「へへ、どうも。」

その言葉を背に、唯一助かりそうな男の人を抱える。


いつもの病院に向かって戻る。

誰も簡単に、切り捨てたくなかったから。


背中越しでも分かる、血のにじみ。

腕と太ももの刺し傷から

止めても血が流れていた。


デルタ盗賊団…

思ったより、はるかに危険な存在だ。

私もあの状況じゃ、出来ることは多くなかった。


そのまま、表通りに戻り、駆ける。


「お、おい!その男は…」


背中の男を掴み降ろそうとする野菜売りに驚き

妖気で押し出した。


「何するんですか!

病院に行くんです!」


「そいつ等は…死んだほうがましさ。」

その言葉を聞いて、自分の心音が

体の奥底まで鈍く響いた。


「それでもまず助けます!」


周りの人々が騒めき近寄ってきた。


「貸してくれよ、病院に運ぶから。」

完全に取り囲まれた。

私にそう話す茶色と白の服の人、

目は笑っていないし…


託すわけには、行かなかった。


+飛行!+


砂埃を上げて

マーレンさんの力で周りながら飛び出した。


警備から撃ち落されないように

建物の二階程度の高さを建物の間を縫って飛ぶ。


殆どの人は、いつも通り道を歩く中

「あっ!!」

と遠くで叫び声も上がっていた。


見られてもしょうがない、

今はこの人を…!


「しにたくない」

掠れた声が、かすかに背中に響く。

男の人だ、待っててね。


ガーネス町の病院前、私は妖気の手を伸ばし

ドアを開けて駆け込んだ。


「怪我人です!

怪我か深くて、大変なんです!!」


「すぐお医者さん呼んでくるね!」

看護師さんが駆けていく中

周囲の患者さんが驚いたようにこちらを見ていた。


「日葵ちゃん、それ…

レジスタンスの団員だよ。

ほら…赤と青と緑のシンボルがある。

一体、何があったんだ。」


周囲の人は、震えて壁に背中を寄せて

私から距離を取って、ただ見つめていた。


「死にたくない…」

私の腕を、震える手が掴んだ。


「だとしても、この人は人間です…

生きる権利があります!

まず安静に寝かせられるところを…」


「日葵ちゃん、こっちだ!」

先生に呼ばれて、私はこの人を背負ったまま

病室を通り過ぎて治療をする木の台のある部屋の前で止まる。


私の腕を強くつかんだ手を、看護師さんは指を一つ一つそっと引きはがす。

わたを傷口に詰めて、

担架の上に載せられたのを見て、

私は両手を合わせて目を閉じた。


ガタン、と大きな音と共に扉が閉まり

ただ無心で無事を祈った。

★感想★

今回、ヒロイックだね…

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