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境界ダイアローグ - 差し伸べる手は人を救うか -  作者: 和琴
輝動(きどう)する運命
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第四十話 - 紡がれる境界(リミナル)

襲撃者たちについて事情聴取をされた後に

私は急いで、街並みを駆ける。


走る男とすれ違いながら、駆ける、駆ける。


オペランさんの屋敷、

直進して、魔具屋で右に曲がれば!


その時、民衆のざわめきと、空を指す指を見て

思わず立ち止まる。


「何だあれ!?」

「マジかよ!竜だ! 誰か憲兵に連絡を!」

「国だろ!軍だろ!」


白い雲のように、小さいけど相対的に大きな

生物が、空から降りてきていた。


オペランさんに竜達の事伝えてなかった!

私のドジを恨みつつ、屋敷に駆けて行った。


見張りすらいない、オペランの屋敷の門の前に立つ。

妖気に足をのせて体を浮かし、飛び越える。

中に入ると、ハッキリ光の檻が見えてきて

私は激しく両足を動かし近付いていった。


そしてその檻と白い竜の隣に来て

「はぁ…はぁ…はぁ…」

両ひざに手をついて、息を整える。


檻の中には沢山の衛兵と、トルトルさん達…

折り重なるように、吹き飛ばされた形で動きを止められていた。

…時の魔法だ。

私が遅れたばっかりに、ひどい目に合わせてしまった。


「日葵!助けてくれ!兵士たちの歯が立たない!」


オペランさんの叫びに、息を切らしながらフラフラと近付いて

前の…白竜ロメスさんの前に立った。


「お久しぶりです。」


「どうやら、乗り越えたようだな。

それにしても、魂の質が変だ。

色々聞きたいことはあるが、明は元気か?」

顔を傾け、笑うロメスさんはほんの少しだけど

何処か親し気で以前と違った雰囲気に見えた。


「多分元気です。でもいろいろあって

暫く連絡は取れていません。

娘さんも元気になりました…!」


「そうか、やはり報われたのか。

それにしても生きているのは驚いた。」


「ええ、おかげさまでこうして生きております!

あれからいろいろあって、そしたらみんなのお陰で

運命が変わりまして。」

ロメスさんは頷いて、軽く笛の様に吠えると

私に向き直り、不思議そうに首を傾げた。


「それは何よりだ。

この人間たちは、私が白竜だから

話と違うから襲ってきたのか?」


それを聞いて、ビーンと頭を下げ

申し訳なさが焦りになって、ともかく素直に声に出した。

「ごめんなさいっ!

まだこないかなっておもって,

伝え忘れてましたっ!」


「…っふ。

日葵を責めないでくれたまえ。

私、オペランは緊急会議で屋敷を空けていたのだ。

伝え忘れても仕方あるまい。」


オペランが私の肩を持ち、両手を広げる。

状況から、少女を守るナルシストになれると踏み込んできたみたい。


「………ありがとう御座います。」


「まだそこまで日付も経っていない中、

こちらも急に飛んできて申し訳ない。」

そのロメスさんの声に続く声があった。


「一応国には連絡を入れたのだがな。

制止する間も無かった…」


そうして、白竜の背中から、筋骨隆々の浅黒い肌の男が

軍服を纏った姿でゆっくりと降りてきた。

って、ヌエッサンさん!?


「指揮官!どうしてここに!」


私が思わず叫んだら、再びオペランさんが固まってしまって

その前に歩み出て、二人に近付いた。


「それがな、急に道案内をしろと言われて

部下にさせる訳にもいかんだろ?

竜の知り合いも居ないし、仕方なく…だ。」


「そういう事だ。

少し懸念があってな。

道案内を頼んででもこちらから訪ねさせてもらった。」


「懸念…ですか?」

ロメスさんは、顔を逸らしてため息を吐いてから

そして再びこちらに目を向けた。


「日葵…お前の劇だけでは

狂信者を止めるのに

力不足だぞ。」

その銀眼は私を射抜いて、私の思考を凍らせた。

…力…不足?


「どういう…事ですか?」


「まず、相手はそれなりの人数なのだろう。

大衆向けの劇でも無かろうに、

彼らの信仰に踏み込んで…

それを全て解きほぐすのは、無謀に近い。」


「…そうで…すね。

でも伝えたいんです。

私の気持ちと、今までの感動を。」

ロメスは長い口先を横へ伸ばし、首を振る。


「否定ではない。

引き込むことと、真実味があってこそ

彼らの大部分に伝えることができる。

だから内容を聞きに来たのだ。」


「ム、あれは…」

ヌエッサンが入り口を向くと、そこには全速力で駆けてくる

金髪で、青の鎧…レンさんの姿があった。


彼は目の前まで来ると

「はあ…はあ…」

と膝に手を突いて息をして…ロメスさんに向き直った。


「白竜ロメス。お久しぶりです。

国から連絡を受けて事情を…あれ?」


どうしても笑いが堪えきれず、隠れて笑っていたら

レンさんに不思議そうな目で見られてしまった。

私と同じようなことしてるのがおかしくって。


「ちょうどいい。

お前も話に参加して貰おう。

後…日葵、これも渡しておこう。」


白竜の背から見覚えのある、緑色の宝珠が

白い光と共に…私の目の前に降り立つ。

それを…両手で優しく受け止めた。


+一時的にレンタルで、

協力させてもらうよ、日葵。

所有者にするつもりはない。+


懐かしい声が、その場に響き渡る。

風の宝珠の…私を助けてくれた、恩のある精霊。

「よろしくお願いします!

マーレンさん!」


と言っても、もう諦神さんの腕輪がない。

私は入れ場所に困って、ポケットに突っ込んだ。


「日葵…もうよくわからない。

劇の構成については、君が説明してくれたまえ。

僕は少ししたら、執事を呼んでくる…」

オペランさんは青い顔で、近くの石の上に、座り込んでいた。


「衛兵さんを開放して遠くに行ってもらいましょう。」

私の提案にロメスさんは頷いてくれた。


そして私の劇について、その計画を話す。

あらゆる境界で隔たれた、この庭園の中で。

貴族、勇者、指揮官、竜、精霊、そして少女。

ありとあらゆる境界を越え、

たった一人の少女のために見守る者たちは動いた。

そして少女という境界を通じて、立場を隔てない作戦会議が始まる。

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