↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/58

第三十六話 -これが、私の物語。

ファンノッテ様が去った後も

私はずっと体調が悪くて

明日の劇の練習に向けて休んだ。


「無理しすぎたかな、明日は動きたい…」


ゆっくり寝て、そして、翌日。

私がギルドから出ると、

灰色の空から雨粒が落ち、

生暖かい風と水が、黒と黄色の石畳の上ではしゃいでいた。


本来朝日がしっかり上り熱が立ち上るころ。

私はまたオペランさんの屋敷で傘を差す、

ヌエッサン指揮官に頼んで鎧も持ってきた。

トルトルさん達も一緒だ。


体調は良くないけど

でもオペランさんの前で練習するなら、今日明日位しかないから。


「縁の下ギルドの建内日葵です。

オペラン様は本日もいらっしゃると事前に伺っております。

オペラン様に劇の練習でお会いすることは出来ますでしょうか。」


目の前の目の部分以外は鎧に覆われ、

門に少しある屋根の下警備をしている私兵に声を掛けた。


「緊急事態により、協議中となるため面会は叶いません。

ですが、劇の練習につきましては

準備が整っております。

…その袋は?土だらけの鎧か。」


麻袋の中に入れてきた鎧は、少し雨が入って

表面の土が雨で解け、少し泥っぽくなっている。


「軍に居た人に聞いたんです。

これが当時の向日葵の戦闘服だったと」


「武器は入っていないよな。…ヨシ!

無許可で魔法を使えば罪に問えることは覚えておけ。」


門が開かれ、案内されて

歩を進めて行った。


劇場にたどり着くと最初にここに来た時に会った

執事のおじさんが真顔で口を結び、入り口に佇んでいた。


「日葵様、お待ちしておりました。」

胸に手を当てる彼に、一秒、敬意をこめて頭を下げた。


「本日はよろしくお願いいたします。」

私の疑問に答える様に、頷きだけした。

多分、言えない大変なことが何処かで起こったんだろう。


なら自分は集中しよう。

意識が尖って、重く湿った空気を感じた。

「では、こちらの台本をお読みになって

しばらくお待ちくださいませ。」


製本された、私の劇は

艶の帯びた質感に滑らかな手触りに引かれ、

ページに自然と指を掛けていた。


開くと…中の古典的な言い回しがまず目に入った。


…なりませぬ…?


”英雄らしさを重視した、崇拝しやすい言葉遣いに!”

大きく、簡易的な赤字で意図が書かれていた。


なるほど。

私は、英雄になりたいわけじゃない…

でも、少しこれでやってみよう。


そうじゃないとただの毛嫌いになる。


執事の方はトルトルさんを手招きして、

近寄る巨漢に汗の一つも見せず、その整った右手で

セリフの書いた紙を渡した。


「では、試しにそのままの服で6頁目、

向日葵の勇者が王に説得するシーンを

やってみましょう。」


舞台が暗くなり、私は木の舞台の上に横になった。

当時の記憶を思い出す。


「ライト!」


光が8筋に別れ照らされて

淡く舞台を照らす。


「どうか…命と宝珠を…捧げ賜ります。

他の者の替わりに…」


あの時の灼熱を思い出す。


熱い太陽の元、精霊の冷却や止血を受けながらも

考えたままにしか、動くことが出来なかった。

宝珠と花を渡すように、手を動かした後

再び崩れ落ちる様に床に落ちた。


「ではヒマワリをショケイする…

兵たちよ、ジュンビヲ整えよ。」


明らかに執事の表情が曇るのが見えた。

何故かは痛いほどわかった。

「ぐっ…」

私は倒れ、肩を抑える演技をしたけれど

それは、まるで…


素人の私や

トルトルさんが可能なレベルかと

言われると、本人の私はともかくとしてだ。


まるで本当の死人の前で大漢が棒読みしているような

滑稽な様子だ。


かと言って、劇団員たちを現場に連れて行くのは

…危険すぎる。


「後6日では、難しいですな…

日葵様は人生という台本が既にありますが…」


続くアレックスは声が小さすぎて

執事の方が首を振った。


ソルティさんは…

「これより向日葵の処刑を始める!

兵たちよ、準備を整えよ!」


顔が細長く、腕も細い魔術師…

声は良かったけど、何処からどう見ても

大柄で太った王の役は難しそうだ。


「ではこうしましょう。」


執事の方が3人に耳打ちし、何やら配置についた。


目の前にはトルトルさん、その裏にソルティさんが控える。

そしてアレックスさんは…?


「ライト!」


「どうか…命と宝珠を…捧げ賜ります。

他の者の替わりに…」


「これより向日葵の処刑を始める!

兵たちよ、準備を整えよ!」

ソルティさんの声と共に、アレックスが足音を立てて近付いてくる。

運ばれた処刑用の斧を見ると、普段の斧ではなくて光沢がざらついて

金属特有のものではなくざらついている。


そして荒々しく斧を持ち上げようとして、

トルトルが踵から崩れ落ちた。


「兵よ、持ち上げるのを手伝え!」

ソルティの声で、アレックスがトルトルに手を添えて…


「ストップ!」

執事の方が、拍手しながら近付いてきた。


「大分粗削りですが、短い劇ではあります。

これなら間に合うかもしれません。

勇者の行動を説明する音声だけは、

こちらで魔法録音した

プロの朗読家の声を当てられます。

アレックスさん達は王都での演技を

徹底的に磨きましょう!」


そして、私の方に向き直る執事の顔は

予想と違い少し厳しい…

「日葵さん、舞台で話すには

余りにも声が小さいです。

当日は、勇者教がいる大舞台!

発声練習から行ってください。」

手で支えていた体が崩れ落ちる。

そんなあ…


「日葵様、仰向けになり

お腹に手を当ててください。」

何とか、仰向けになろうとした。

でも怖くて、それが出来なかった。


「お腹が痛くて、上に晒すのが怖いです…」


「では、椅子に座って行いましょう。

もしかして、何処か不調ですか?」


「あの…ちょっとした周期の噛みあい…」

私は耳元で、執事の方だけに聞こえる様に

囁いて伝えた。


「そうでしたか。何かあれば

メイドもお呼びしますのでお声がけください。」

執事が笑顔を浮かべる裏で、トルトルさん達が首をかしげていて

私は背中に汗をかきながら手を振ってこたえた。


それでは腹式呼吸の基礎です。

手を添えたお腹を持ち上げる様に息をしてみてください。


うまく意味が分からなくて、何回か息をすると

私の手を執事が持って、そのお腹に当ててくれた。


あったかくて、清潔で…すごく、押し出される!

「これが腹式呼吸ですよ。

どれだけ多くの空気を吸い込めるか。

これを参考にして考えて下さい。」

凄い…こんなに知らない世界が、身近にあったなんて。


頷いて自分のお腹に手を当てて

息を吸っては吐いて…

そうだ、これも私の物語なんだ。


勇者向日葵の過去だけじゃない、

色んな人に助けられて自分でも答えを探して

新たな力を身に着ける。


それがどれだけ日常的でも…

これが、私の物語。


そうして、雨が深まる中

練習が続いていった。


途中休憩を挟みつつ

台本の読み上げや

演劇を普段から見ている人の感想や意見まで。

どうしてこんなにしてくれるのかって思いながら

有難くお世話になった。


「ご主人様の代わりに

このベニテスがご指導いたします。

そのようにご主人様から承っておりました。

是非、例の劇まで毎日

練習を致しましょう!」


「すごく助かります!よろしくお願いいたします!」


練習は明日も続く…

★境界からの独り言★

こんばんわ。


境界ダイアローグ、面白いかな。

面白いと思って作ってるから、そう思ってくれると嬉しい。


劇の内容の一部、予想通りだったかな…でも大丈夫。

ワコトキタイウラギラナイ、ここからギア上げる。


でも46話以降が少し怪しいから、ペースを落とすかも。

その時は通知するけど基本大丈夫、

内部を整えてるだけ。


ブックマークついてる夢を見るだなんて、子供っぽくて笑っちゃうね。

頭で考えると。読者が1人いるだけでも贅沢なのに。

偉大なる先生方の実力に追いつきたいなと、ちょっと肩を落としてた。

そうだ、自分、投稿時間とかでもう読者さんを振り回したくないんだ。

怖い思いして、宣伝したくないんだ。

でも反応が欲しいなんて不憫。


考えて考えて。

それでも出来ることがあるって気がついた。

「…」を、次から他の記号に置き換えてみよう。

タグを変えてみよう。

少しづつ自分の悪いところ、直していこう。

効果は薄いと思う。でも一歩ずつ。


一番お見せしたい前作を生き抜いた日葵の本気で考えた劇とそれまでの過程、そして最後。

構造だけじゃなく、磨き上げて度肝抜くから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。