第三十七話 - 繋がる覚悟の因果
すっかり晴れ渡り、夕日が空と水たまりから
石畳の道、木と石でできた建物の通りを照らし出している。
弓なりに反ったような道を歩いて、縁の下ギルドに帰っていた。
そして真新しいギルドの目の前まで付いた時、
黄色ローブの男がギルドの裏口で待機していた。
…あれは、無言の抵抗軍の指導者のグロンという名前の人だ。
こちらに気付いた彼は、手招きする。
「トルトルさんはこのあたりの見張りお願いします!」
念のため…声を掛けて私も足に力を入れて駆けて近付いた。
「ギルドの中に入って良いか。」
「どうぞ、こちらです。」
ギルドの中に入ると、掃除をしていたハレサさんが一礼するところ
グロンさんが手招きして、会議室に入った。
「勇者教レジスタンスからの案内が来た、
…6日後の夕方、ニューフィールドの左砦入り口の
遺跡広場にて、大槍の力を持つ不明な存在が
襲来するから来い…という内容だ。」
私の事だ…
黄色ローブの男の人が顔を上げた。
手を机に置いてローブの中で黄色い目が…私をじっくりと
見つめている。
「勇者教の情報をこれにて伝えたが
…ハレサから報告は受けている。
あ奴らの前で、劇を行うと言っていたようだな。」
そうだ、ギルドの人たちには伝えていた。
ってことは、私って分かって来てるんだね。
「もう隠すつもりはありません。
彼らを止められるなら…」
ハレサさんが両手で口を抑え、驚くのが見えた。
目を見開いて見ていて、少し胸が痛くなる。
「待て、それ以上は言わなくていい。
つまり相談は、無言の抵抗軍として
劇の直前まで、同行をお願いできないか…という事なのだ。」
無言の抵抗軍として、劇の直前まで同行(護衛)させてほしい…
そういう事…?
それともただ一緒に行くだけかな。
「直前で怖くなれば、離脱も認めよう。
道中の警備に協力してほしい。
少人数で行くつもりだ。
とりあえず、4人いれば十分だろう。」
敢えて、彼は何も言わなかった。
元々トルトルさん達と行くことはキャロスさんとも相談した。
バルドさんも、最終日には護衛をしてくれるって言ってた。
私は…頷いた。
「むろん、報酬も渡そう。
契約としては1500クラン…それで良いか。」
報酬交渉…!
善意で言ってくれてることは…分かる、でも…
バドレさん達に少しだけ恩返し出来るかもしれない…
入院費用は多分もっと高い…なら、交渉の余地があるか
考えてみよう。
「他人の命を背負うとなれば本気で挑まないと。
今回の旅には、恐らく…上級冒険者も二人付いてきます。
少しだけ、増やしていただけないでしょうか。
…2300クラン程まで」
「…この距離の警備費の相場は400クランなのだが
それでは警備が不十分だと言いたいのか?」
頷く。
もし私だけなら、そのまま受けてた。
でも…今回は違う。
「仮にあなた達が死んだら、死んでも死に切れません。
多少高額で、信頼できる上級冒険者を雇えば
裏切られた際の…力負けのリスクも減らせます。
この件で関りを持った勇者教被害者の
…アイアンバドレに声を掛ける予定です。」
普通なら、間違いなく不味い人選だ。
だって勇者教の集会に連れて行く存在じゃないから。
「彼は勇者教に恨みを持っていますが
誠意ある金額を渡し、制約を交わした上で
護衛に雇いたいのです。」
「…ギルド側で、転送魔術の準備を頼む。
暴れられて、場を崩されては堪ったものではない。
だが、それを準備したうえで敢えて雇うというなら…
そうだな、2300出そう。
だがこれは、信者の血そのものだ。
もし無駄に使えば、容赦はしないぞ。」
その魔具はすでにある、でも…
この国での、無許可の転送魔法の利用罰金は5万クラン。
私の行動一つで、ギルドを潰しかねない。
でも…だからこそ…バドレさんに伝えたら
踏みとどまってくれるって、私は信じたい。
作戦会議でも当日は行かないほうがいいって二人に話したけど
お金持ちのミレーさんには声を掛けないほうが良い…よね?
被害者の会を見てくれるって言ってたし。
バドレさんについては
この劇を…被害者たちの誰かにも
本当は見てほしかったから元々悩んでたんだ。
「念のため、当管理人のキャロスにも内容を確認させます。
少々お待ちいただけますでしょうか。」
「わ、私がお呼びします!」
ハレサさんが部屋を出て行って、
私は…彼と向かい合った。
「勇者向日葵、余りに大胆な。
社会的にその身を晒しても、止まるつもりはないのだな。」
頷く。
「本物の、勇者か…
私は指導者としての自信を今回の事件で無くしてしまった。
じきに解散するつもりだ。」
…本当にそれでいいんだろうか、彼の信者は幸せそうだったし
変ではあるけどそこまで悪い組織じゃない。
「…グロンさん…
心や、考え方が未熟だって気付くの辛いですよね。
私もまだ子供だなって、しょっちゅう泣いてます。
それでも、己を磨き義を通せば、皆を幸せにできます。
あなたなりの道が、どんなふうに続いているか…
もし先が見えないなら、私で良ければ相談に乗りますよ。」
「日…建内日葵…
劇を楽しみにしているぞ。」
彼の口角が上がったのを見て、私は目を閉じてキャロスさんを待った。
無理に緊張する必要はないよね。
暫くして、キャロスさんが入ってきた
「わざわざお越しいただき、ありがとうございます。
本来なら一緒に同席するところ、日葵に任せてしまい
何かご不便はありませんでしたか?」
「特にない。
契約内容はハレサから聞いたか?」
「ええ、もしバドレが依頼を拒否した場合や暴走に備え
私が同行しようと考えています。
それ以外の懸念が無ければ、
2300クランで契約頂けますでしょうか。」
「問題ない、契約書を。」
それからはあっという間だった。
印を交わし、談笑し…あっという間に夜になった。
帰り際、ベラーゼ君の前でグロンさんは膝を突き
頭を下げていた。
「あの時は勘違いしてしまい、本当に申し訳なかった。」
「僕も…ちょっと興奮していて
あなたからは石を投げられても居ませんし
和解しましょう。」
握手をした後…彼は帰路に就いた。
紫の空、帰るグロンさんに頭を下げる。
そして姿が見えなくなり、隣のハレサさんに
微笑みかけた。
「騙しててごめんなさい。」
彼女は目を逸らす、すごく…気まずいみたいだ。
「…それで何だけど…
今日の夜色々話さない?
色々お互い、話したいと思うから。」
私も、ちょっと気まずい。
でもだからこそ、すぐ動かなきゃって思った。
「私なんかで…良いんでしょうか。」
「私も話したいんです、お願いします。」
手を握って頭を下げると彼女は頷いてくれた。
アリッサちゃんにギルドの現状を聞きながら
今日も楽しく食事を摂る中
ハレサさんの複雑な顔につい目が逸れてしまっていた。
ギルドで食事を終えるころには、紫色の空は黒に染まり
私の寝室で、ハレサさんと向き合った。
★境界からの独り言★
伝わるかな。
私が伝えたかった、ギルドの日葵の、その後の物語。
前作の読者全員に伝わってないのは残念だけど
見てくれてありがとう。
(これを書いた時点では確定していないから、もう一度
ありがとうを見てくれてありがとう。)
どうでもいいけど、日葵の人生って某有名作品でネタにされる完全詠唱のなんちゃらにも対応してそうで面白かった。
ほら…鉄の女王居るし、混濁してるし、泥相手にしてたし。
意識してるわけないんだけどね、なぜか通せてしまうのはそれだけこの物語が背負う意味が多いのかもしれないね。
…ところで、今日は9月9日だからクックの日!!
…電子レンジの冷凍食品でいいや。
明日は萌えの日だね。
9月10日だから。
…9月10日だから。
一か月先取る。
明日の話は可愛さ1.1倍!




