第三十四話 - 風が吹く
翌日、全世界に2日遅れて風が吹き荒れた。
あの寄稿文の羽ばたきが、少しずつ渦を形成していった。
日差しが射す中、カロル国内外の情報を収集する治安部隊。
その、高い鉄柵と広大な敷地に隔離された重厚な建物の中…
時間差で届いた地元紙の原本を広げる、
ストランテ元帥の部下キュライスランは、
新しい魔具や武具の情報をまとめる男性と雑談を交わしていた。
「この子…へぇ…
集団で暴行されたのに恨まないのか。」
「どうも国一番優しいギルドを目指し
優しさは魔法と言っているらしいですね。」
とある森にある木で出来た家の中、新聞を読んで驚く家族たちもいる。
その家族にとどまらず
段々とカロル国内で噂は広がっていった。
「入院してるのに、被害者の会に向かったらしいぜ。」
「被害者の恩赦の提案を出したらしい!」
「裏金の噂ってどうなんだ?あんまり追ってなくて」
「ありそうだけど、こいつだったら肝が座りすぎてるよな?」
事実かそうでないかに留まらず、
日葵の行動は嵐の形を為そうとしている。
勝手に経緯を予想する者たちも多い。
特に商売人も、この事件に別の意味で注目した。
「カロル国東のあの地域は
ダンジョン密集地帯があったよな。
その北が平和になって、争いが始まったか。」
それを聞いてシャツと青ズボンの男たちが
思いついた様に手を打った。
「俺らも新規参入すれば良いんじゃねぇか?」
「お、装備売りに行くのか?」
「共同作業所って所で
金払えば最新設備が使えるって
遠くの知り合いが言ってたんだよ。」
「あそこらへんは昔から特注品が有名な地域だ。
職人を雇って、独立するのもアリだな…金があれば。」
さぞ楽しそうに話す職人たちの中には
実際に視察に行く人もいるだろう。
酒場の中でも、彼女の名前が聞こえてくる。
男女たちが勢いで語らい、それをつまみに昼から杯を交わしていた。
「こいつの名前、日葵だってよ!
そりゃ勇者教を操ってるって思われるわ!」
「いや、最早狙ってるでしょこれ。
勇者っぽく振る舞おうとしてるって。」
「でも新聞に寄稿するってどういう発想だ?」
「ギルド管理者が国定魔術師らしい。
そいつの差し金だ。」
「ま、なんにせよ、こいつは晒し者だな!可哀そうに。」
そんな事情はつゆ知らず…日葵は夢の中。
冤罪晴れたかなって
気にしているのであった。
…
右砦の宿屋で、日葵は目を開ける。
体を通るのは爽やかで澄んだ空気…
日差しが窓から体半分に当たっており、気だるげに起き上がり、
汗だらけの体を拭いて髪を整えて部屋を出た。
既に食事を取っていたバルドさん達を見て
つま先を上げ足早に近付いた。
「おはようございます…
すみません、遅れて。」
「朝食、一つ出してくれ。」
宿屋の人の声が上がり、私は空いた席で突っ伏した。
竜との戦闘、久しぶりの飛行、
新しい力の行使…体力が残っていなくて。
お腹から鈍く、神経を引っ張る様に空腹と苦痛が同時に起こってくる。
運悪くいらいらしちゃう時期だ。
「…」
いつの間にか座っていたマレンシアにも
挨拶代わりに力なく手を差し出した。
「お前が言ってた殺される運命…
あれから生き永らえたようだが、
どうやったんだ?」
…心残りになるよね。
「交渉して、如何にか生き永らえました。
お互い幸せになりましたよ。」
「そうか、黒竜と戦ったことは黙っておいたほうがいいか?」
「そのほうが…お願いします。」
「建内日葵は生きていて
プロフィール通りの人物だった…という事、
竜と会った事は伝えるが、勇者であったとは伝えない。
恨むなよ。」
すこしぼっとする意識の中、耳元で囁かれた。
7日後と分かれば後は練習して、
左砦付近を見て動けばいいだけだ。
オペランさんの開いている日って
明日と明後日だったような。
すぐ戻って練習して、
台本も見直さなきゃ。
届いた蒸し芋の香りにつられ
私は顔を上げ、食べ進めていった。
暫くして、宿を出たあたりかな。
急に懐かしい風が吹いた気がして、
私は目を閉じ呟いた。
「見ててね、フラリスさん。
私、終わらせるから。」
私と、もう一人の私が残した
勇者教という悲しい誤解を。
★境界からの独り言★
なお、作品は無風な模様。
でも見ててね。
読んでくれたら楽しめるように、考えるから。
…で、あの夢の続きの話(活動報告)なんだけど…
情景描写って空間を最大限活用するために在って
それが不十分だと物語がイメージしづらくなるうえに壮大さが成立しないんだね。
(こんなこと書いてる時点で読者とる気ないだろ!!というのは置いておいて)
もうちょっと、深く小説について考えてみよう。
自分の直感的創作スタイルは夢にも出てた通り
”ナレーション”もしくは”アニメーション”的ビジュアルで出て来ちゃう
小説には少し不向きな形だから。
分解してかみ砕いて…機会があれば概念として取り入れて。
良くしていきたいからね。




