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境界ダイアローグ - 差し伸べる手は人を救うか -  作者: 和琴
ありがとう、マレンシアさん。私、行くよ。会えてよかった。
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第三十三話 - 巡る運命に、身を任せず

死闘を終え未だ震える体。

それでもなお、涙ながらに対話を試みる。

それが人の勇気なのかもしれない。

”黒竜ノーボラス”


私の数十倍は大きくて、表情は豊か

前屈みで顔を向け、だらける姿は可愛らしい。

恐ろしくって怖いけど、やっぱり心は人間みたいだね。


私も留め具を外し、頭の鎖帷子を引っ張り…取り外した。

「ノーボラスさん、建内日葵です。

今後とも…あはは…」

彼は口を開け、吐息を吐いた。

歯が見えて、形容しがたい刺激が四肢を走った。


「顔が浮いているような、

髪がべたりとして、不味そうだ…!」


「冗談止めてください…」


黒竜が目をそらし、口をつぐむ。


「日葵…疲れたんじゃないか?」

バルドさんの言う通り、足の裏も熱くて

ふくらはぎが張っていた。


「そうかも、ちょっと座るね。」


ノーボラスさんの元に行こうとしたけど

そのまま地べたに座る。

こういう時、一人になりたいかな…って。


シン…とした空気がして

ミレーさんが咳ばらいをして、手を広げた。


「竜との戦いはある意味…冒険者の最終目標だけど、

この実力見たらもう気安く言えないな。」


「その前に、やたら手を出したら指名手配されるからな。

戦うのは、おとぎ話だけだと思ってたぜ。」

バドレが先の衝撃を確かめる様に背中を撫でた。

服の背中に刺さった石の破片を指で引き抜く。


「そんな法律があるのか。

道理で…つまらなくなったものよ。

世界中、ありきたりになってしまう。」


「人間は沢山いますよ?

つまらない人も、多いかもしれないけど…。」

歴史の重さ、竜同士の会話、何も知らないから

それ以上言えない。


でも、これだけ居れば…誰かいるよ。


「探しに行けと?我が?

ウハハハハハハハ!」

あまりの音圧に髪を逆立てながら、ぞっとする笑い声で体が振動し、

落ち着くや否や…目の前に、静かにガリガリと爪が突き立てられた。


「ギルドに依頼でもするのか。

どうせ町中だろうから

オペランとやらに仲介を頼むか。

竜の窓口でも雇うか?」


「竜(ドラゴン)ギルド!夢が広がりますね!

案外、アリなんじゃないでしょうか!?」


バルドさんが立ち上がって、走り

適当な桃色の…身長の二倍はある実を前に笑顔を浮かべた。


「木の実でいいか?依頼品はよ!」


ノーボラスさんが指を上げると、バルドさんは幹を切り

ずっしり持ち上げ…バドレさんに運ばれてくる。


「初依頼完了だぜ!」


「報酬は…ロメス達も誘ってやろう。精々取り組むといい。

あと一知恵やろう。今の木の実は触感が楽しい。だが味は不味い。ジャウ!」


「ハハハハハハ!ほんとに飢えてるんだな。

…失礼した。」

ミレーさんが口を隠すのを見てみんなニヤニヤと…

二つの意味を持ってて、確かに失礼で、面白い。


…と思う瞬間、ミレーさんが屈んでマレンシアの手を握る。

「もう和解した、探る必要はない。」


そのまま立ち上がる彼女が、黒竜に向き、一礼した。

「…」

さっさと後ろに引くのを見て、もったいないと思うとともに

大人で…丁寧だなと、私も背筋を正した。


「もう帰るのだろうが、もう一つ知恵を与えよう。

…通信魔具でも用意すれば、依頼を寄こす。

少しは人間にも、期待を持っていいのかもな。」


「…」

私も黙って、みんなと一礼した。


中央の石の向きを目安に、真っ直ぐ歩いて

帰りながらも、まだ残っている問題を考えた。


どうやって当日に、信者の元にたどり着くか。

ヌエッサン指揮官に頼み込めば、タイミング位は

分かるかもしれない。


頭の中で、想像した。

”集会”に割り込んで色々な順序で、舞台を形作る想像。


集会をするんだから舞台自体はあるはずだ。

でも問題は割り込み方…

変装とかじゃ、確実に監視される。

勇者と縁がある竜に来てもらってる以上

大槍を掲げて、舞台に飛び降りるほうがマシだよね。


鎧さえあれば、私は問題ない。

でもほかの劇の人員はどうするのか、

…都合のいい隠密部隊なんていないもんね。

和権国のとか…


その時私の頭でパッと思考が弾けた。


「マレンシアさん…」


私に向けて、くるりと軸を保ち振り返り

その瞳に目が合った。


「怪しい人たちに会って

劇を開けるか交渉してみるっていうのは…

アリですかね…」


めちゃくちゃだよね、そう思ったけど

真剣な顔で、話を聞いてくれた。


「元々勇者を誤解していた者として話す。

堂々と、選ばれたものとして行け。」

剣を持ち上げ語るマレンシアさんのお陰で

その意味を肌で感じ取れた。


力や権威で聞き出すのが早いって事だね。

…


左砦、レフトシティ…

その林道前の宿から

数人の男が歩み出す。


「毎度あり!勇者に栄光あれ!」

鉢巻を撒く男が口に手を当てて声を張る…

既に空は青さが鈍り、雲は灰色に染まっていた。


その男たちは、大槍を持ち、ローブを付け

顔は漆黒に包まれて。


暫くすると林道を超え、広い大地に出た。


同様の男たちと頷きあい、戻っていく者たちの代わりに

ここから王都まで…走った勇者への祈りを始めた。


「数百…下手すれば数千年の間

ここには渦が巻いていた。

町が作られては消え、無駄を悟り

廃墟となったこの地を、浄化したのが

かの勇者だった。」


別の男も語りだす。

「一年前、街一つが飲まれた。

ヌーバーンは竜と共に舞う勇者に救われた。」


それを聞く隣の男も

両手で大槍の柄を握りしめた。

「多勢に無勢で逃げ出した勇者が

汚名挽回しても国王は決して許さなかった。

庶民たちですら、人さらいによって奴隷まで落ちて

人生を壊されて復讐する者までいるほど世界は腐っている。」


男たちが深く頷き合うたび、交わす言葉はさらに熱を帯びていく。

「死んでなお、都合のいいように利用され

尊厳を壊され…このまま嘯かせてなる者か。

人々の尊厳を最も踏みにじる…貴族達と冒涜者に。」


「向日葵を踏みつぶす竜を描く者、カロル国王、

集金に利用する者、

下品な噂を流布するものと暇がない…

どの国もそうだ、フリトー国など…特に…」


「そうだ、決戦に竜が向かい

人類が着く前に終わったとはいえ…

名ばかりなどと…!!」


「そうだ、教祖様の言う通り

我々は冒涜者の死体を残し、警告を与える。

必要とあらば、物理的に浄化しなければ!」


信者たちは暫く無言で、色を失う空に祈りを捧げた。


そんな中、空に明かりがともり

背中に青い光で出来た大槍を持つ

…異常な存在が空から降り立つことに

男たちは気が付く。


二歩引く男を前に、ソレは紫の霧を漂わせ

青い槍を引き抜き…手に持つ大槍をブワリと薙いだかと思うと

金属製の槍先がパチパチと不規則に明滅しながら、

男たちの目の前の地面へと突き刺さる。


「何者だ!」


重く、質量感のある紫の霧が足元をぞわりと冷やす。

…膝が、震えてしまっていた。


低い背丈、土を含む機動鎧…少女の声だ。


「あなた達全員に、私の無念を伝えたい。

集まる場所と、時間を教えて。

同志たちと、向かう。」


「八日後、この先の遺構内大広場で…」

思わず口から漏れだした。


「私はあなた達とも、同志になりたい。

それだけは、覚えておいて。」


閃光!その後、風が舞い上がる…

消える様に風を立て奴は飛び去った。


…飛竜が守る空を。


「かなり少女っぽかったよな…?

…まさか、亡霊じゃないよな。」

勇者向日葵も、少女と聞いていた。

だからこそ、信者たちは一つの考えに辿り着く。


「これも、運命かもしれない。

槍先のみが切れた大槍…

無念の暗示のようではないか。」


「向日葵の無念…その声が聞けるのか…

集会で…」


「我々に限らず、広めるか…

教祖様に相談しよう。」


ソレに槍先を刈り取られた男たちは、武器を持たず林道を戻った。

それはまるで…向日葵の意思そのものであったが

男たちがそれに気づくことはなかった。


運命に身を任せるものと、それを整えるものにより

世界は新たな方向に舵を向け出した。

★境界からの独り言★

きっと明日は96だから!

…苦労の日かな?

日曜日だから、だらだらして厄払いしよう!


あ、ゾロ目の回は凄く重要だよ。

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