↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
境界ダイアローグ - 差し伸べる手は人を救うか -  作者: 和琴
行こう、ニューフィールド!
28/59

第二十八話 - 実現のために、しないといけない事

私は早朝に、ご飯を食べて

トルトルさん達とギルドで待っていると

バルドさんが来たので私は荷物を持って外に出た。


勇者教は、勇者だけを信仰するわけじゃない。

その勇者が連れてきた竜も信仰対象とする宗教でもある。

だから…この旅が必要になる。


そこには屈強なバドレさんやミレーさんも

バルドさんと並んで待ってくれていた。


「行こうか、馬車で右砦だよね。」


「郊外への馬車は…」

高い…という前に御者にクランの入った袋を渡していた。

ミレーさんはお金持ちなのかな。


「右砦付近の村に何か御用でしたら

そちらにお運びしますが?」

御者の男性が手を合わせながら視線を上げ

ミレーさんは軽く首を振った。


「右砦さ。そこに用がある。

馬車はもう一台追加できるか?」


「分かりました、すぐに!」


御者が馬を止め、近くに拠点があるのか走っていった。


「君達は日葵の護衛かな。

ミレーだ、こっちはバドレ。

あっちがバルドだ。

分担して荷台と食料、御者を守るぞ。」


声を掛けられたトルトル達は了解しつつも高揚していて

胸が暖かくなった。

「ああ、分かったぜ。

スケールすげえな…。」


「俺たちが行けてない領域だ。

せめて役割は果たす。」


「アイアンバドレじゃねぇか!

有名な万能剛力です兄貴!」


力比べでは、トルトルさんも顔を赤くしつつ

バドレさんの剛腕を数秒止め、その奮闘に

盛り上がったところで御者が馬車と

もう一人を連れてくる。


「さあ、行くぜ!

右砦へ!」

バルドさんの掛け声とともに、

御者が鞭を打ち、駆けだした。


馬車の中、私は紙を何度も読み返し

小声で復唱…体を動かす。


ミレーさんは周囲を確認しつつ

セリフの節目で目が合って

気になっていることが分かった。


「ミレーさん、これはあの劇の案なんです、

色々ダメ出しされて、

今セリフを覚えているところです。」


ミレーさんが置いてある紙を手に取り、

眺めながら呟いた。

「この力の演出は…

使えるのか?」


「昔は使えましたけど

今はここまでの大魔法は使えません。

だから小規模にやる予定です。」

紙を置いて指を合わせながら懐かしむ。

精霊との契約があった日々の事。


「なぜ使えなくなったんだ。」


「他の人の幸せのために

切り捨てました。」

青い空と草原を、疾走する馬車…

顔を出すと、風が吹き付けておでこに当たる。

まだまだ、着きそうにない。


「力を捨てるのはいい。

でも…命を粗末にするのは止めてくれ。

心配で済めば、こんなに苦しくないんだ。」


頷いて、そして驚いてミレーさんを見る。

目が…潤んでいた。

「必ず、私がカタを付けます。

だから見守っていてください。

皆さんの…大切な人の分まで。」

敢えて深くは…聞かなかった。

いまは言葉より、"劇"だけに集中しよう。

ここは…どう動いたらいいんだろ。

ここは…どんな感情で…


…


っは!


気が付くとそこは山の間の平地。

緑が左右に聳え立ち

以前は見慣れない家や追加拠点が

作成された右砦だった。


「起きたか、着いたぞ。」


目を擦り、背を伸ばし、紙を鞄にしまって

外に出た。


自然の香りと、平和な空気が

私の頭の中で違和感を立てた。

…昔はもっと臭かったから。


「おい、お前たち

この砦に何か用か。」


聞き覚えのある声が聞こえて

思わず振り返る。


「お、お前…バルドだな。

ヌエッサンに会いに来るって通信で聞いてたぜ。

キャロスさんにはあの後世話になったからな。」

ズマスタ教官だ。

彼は驚いてこちらを見て、すぐにバルドさんに向きなおしていた。


思えば鎧を着る前にまず話してくれたのがこの人だった。

だから、覚えてたんだ。


「おう、俺がいなくなってからは…そうなってたんだな。

まあ、生きてるようで何よりだぜ。」


本人たちは、戦友ではある。

軽くタッチした後ズマスタさんは駆けだした。


「俺が直接、来たって伝えてきてやるよ。

待ってろよバルド。」


「元部下なのか?」

アレックスさんが聞いてきた。


「うん、元部下なんだよ。

色々深い仲なんだって。」


「こんなとこで、化物との戦争があったのか。」

トルトルがそう話すと、兵士が岩を指さした。

その巨岩は、人が目の前に10人は並べそうだった。


「アレが空から降ってきたって

経験者は話してる。

ほんとか知らねぇけどよ。」

鎧の兵士は笑ったが、本当の話だ。


暫くするとズマスタさんが戻ってきた。

「砦も作り直して変わってる。

俺が案内する。」


砦内に入ると、石の間で金属が溶けるような

特異な壁が目に入った。

その外壁を抜けると

懐かしい石造りの感覚と汗のにおいがする。


そのまま歩いて2階に上がり

大きな扉のある部屋に入った。


そこには、褐色で筋肉質な笑顔の魔術師がいた。

地図とか魔具が並んだ、気が引き締まる部屋だ。

私は一歩進み出て、ぴしっと敬礼してみせる。


「久しぶりだな、大風隊よ。」

大風隊…部隊名だ。

バルドさんとレンさん達…私が居て

私が参加した時に付けられた名前だ。


「他の者は下がってくれ。

バルドとお連れのお嬢さんと話をしよう。」


トルトルさんやミレーさん達が出て行くと


「日葵、バルド、久しぶりだな。」

この屈強で優しそうな顔…戦場でどれだけ助けに

なってくれたことか。


「本当に、久しぶりですね。」

「勲章増えたな?調子もよさそうで何よりだぜ!」


私達の言葉を聞いて

大きな袋をヌエッサンが取り出した。

「この中に忘れた装備が入ってる。

少し小さいかもしれないが…

掘り出しておいたから持って帰るといい。」


私の思い出の…!

頭を下げながら、袋を持つと

ずっしりと過去の重みが腕に来た。


机に置いて袋を開けてみると。

ルーニーさんの…あの手作りの黒い兜が

私の祈りに応じ、鈍い光を発する。


おかえり。

劇では使わないけど、純粋に嬉しかった。


「キャロスから聞いてはいたが

こう実際に見ると感慨深いな。

あの時は常に無理をさせてしまった。」


「ヌエッサン指揮官が居なかったらガーネス町も、きっと大変でした。

少ない人数で、それまで奮闘していただいていて

私こそ頭が上がりません。」


「日葵、ちょっと腕貸せ。」

そんな私の腕を、バルドさんは捲る。


「今もヤッチャッテルぜ?ヌエッサン。」

ヌエッサンはそれを見て、すぐに駆け寄って来てくれた。


「またそんな無茶を…何か用なのか?」

バルドさんとヌエッサン指揮官…通じ合ってる感じがして

少し、関係性を覚え直した。


今、要件を自然に伝えられそうだ。

「人助けのために、二つ把握したい集団があります。

一つは勇者教レジスタンス、必要なのは集会の場所について。

もう一つは竜達がニューフィールドのどこに居るか。

特に白竜が何時居るかについてです。」


「むう…

なるほど、奴らを放っては置けぬという事か。

左砦、レフトシティの林道先…が今回怪しいと踏んでいる。

勇者教は恐らく10日以内に

レフトシティから一斉移動し集会を行うだろう。

中立地帯故、軍隊が送りづらいのだ。」


「事前の検問とかはしねぇのか?」

ヌエッサンは首を振った。


「暗躍されると厄介だ、そう貴族達が止めてきてな。

把握はしているが、手は出せん。」

なるほど、国も大変なんだ。


「分かりました、竜達は?」


「ニューフィールドの中央…遠いぞ。

巨大な色竜が変わり替わり、警備している。

白の順がいつかは、把握していない。」


…難しいかもしれない。

特に緑と桃と黒のような竜は、関わりが薄すぎる。

ブオードさんなら大歓迎だけど、性格上…多分、可能性は薄い。


「それに過去から、構造物が出現して

…ダンジョン化まで始まり、

竜だけでなく飛竜やカエルが飛び回っておる。」


…諦めて、別の方法を探す?

そもそも竜を呼ぶのは見てほしいのと信ぴょう性を

高めるため…レンさんが来てくれるか分かんないし

それだけじゃ怪しいから。


…鳥たちに会いに行くにしても、危険だし遠すぎる。

北連合はもっと遠い。


バルドさんはヌエッサンと話していた。

私は任せて、じっと考える。


神の荒野に、直接行ってみる…?

それなら時間は…いや、多分同じだ。


「何、フリトー国の者が

通行したいだと?

左砦では無くこちらにか?

怪しい集団が居たからか。

報告書を送ってくれ、私の目で確認しよう。

…何だと?」

ヌエッサンが魔具を持ち、部屋の中の更に個室で話していた。


そうか、中立地帯を越す者たちは居る。

そこから情報を集められれば…


「もし何か情報がありそうなら

聞きだしてもらえませんか、

大地の…状況などを。」

ヌエッサンは頷いた。


「怪しい者たちの詳細や、周囲や竜の様子も

聞きだすのだ。」

通信が切れた後ヌエッサンはこう言った。


「遠路はるばる、お前に会いに来た者がいる様だ。

詳細を確認次第、連絡させよう。」


歯車が、かちりと音を立て…動き出す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。