第十四話 - 決意伝え、情報を集める
縁の下ギルド内休憩所、通路はがらんとしており
両側の部屋からいつもの喧騒が響いている。
みんな、仕事中みたいだ。
いつもの癖で書類整理用の机の前に腰かけると
上に、見慣れない手紙の山があった。
どことなく安心するインクと紙の香りを感じながら、手紙を読んでいった。
ご心配の手紙、謝罪の手紙
…無言の抵抗軍からの手紙…
*
私たちの立場上、このような紙片一枚での謝罪となることご容赦ください。
この度は多大なるご心労をお掛けしたこと、深くお詫び申し上げます。
こちらとしても、まずは対話にて問いただす所存でありました。
しかし結果として的外れであり、惨劇を防げず沈痛の思いでございます。
その時に見た、レコンキスタに向かう日葵殿の背中は
まるですべての苦痛を背負っているように感じられました。
いつかまたご縁があれば、改めて口頭で謝罪させていただきたい。
これからの人生に、神と勇者のご加護がありますように。
勇者教 無言の抵抗軍 団長 グロン
*
私は目の前の向日葵が建つ建物を見て歩み出した。
明るい日差しの中、可愛い向日葵のオブジェが立っており
生の向日葵は瑞々しく、持ち上げる様に葉を伸ばす。
監視の人はいない。
でも、向日葵を見るに立ち退いてない…よね?
黒いガラスに木の枠、その扉をノックした。
「ごめんください、縁の下ギルドの日葵と申します。
どなたかいらっしゃいますか?」
…返事がない。
こんな時、フラリスさんがいたら。
そろそろ、精霊と契約するべきかな…
無言の抵抗軍ってデモの時…喋らないんだっけ。
私は、5分待ってみた。
暫くすると呼び鈴があるのが見えて…
ちょっと恥ずかしくなったけど、鳴らした。
カチャ…扉が空いて、
緑色のローブを纏った信者たちが出てきた。
「建内日葵…なんの用だ。」
「この間は、助けていただきありがとうございました。
どうしても感謝を伝えたくて、お手紙を書きました。
受け取ってもらえますか?」
懐の白い封筒"縁の下ギルド…建内より"
と書いた手紙を手渡した。
「分かった、教団で内容は確認する。
好きに使っても良いな。」
布教用だろうか、私は頷いた。
手紙は受け取ってもらえた。
返事はないかもしれない。
こちらからも助けてもらった感謝を伝えたい…それに
勇者教レジスタンスを何とかしようと思ってること
それを伝えないのも不義理だと思ったから。
*
勇者教 無言の抵抗軍 ガーネス町支部の方々へ
縁の下ギルド秘書 建内です。
この度は命を助けていただき誠にありがとうございます。
あの時説得いただかなければ私だけでなく、
親代わりのキャロスまでより多くの傷を負うところでした。
本当に、心よりの感謝を申し上げます。
そして今後の私の行動についてですが、
此度の争いは権力闘争と、レジスタンスの被害によるもの…
その凄惨さを理解した以上、もはやこれを看過するわけにはいきません。
私は彼らの教えを正そうと思います。
彼らももとはただの人間、被害者たちと同じですから。
あなた方に火の粉が掛からぬ様、先にお伝えしておきます。
また、ご迷惑をお掛けするのですが
勇者教レジスタンスの情報をご存じで、もしもご協力頂けるのであれば
ご連絡いただけると助かります。
お互い様々な事情を抱えていると思いますが
またお会い頂けるのであれば私としては大変嬉しく思います。
建内より感謝と決意を込めて
*
その足ですぐ後ろのギルドに戻る…つもりだった。
「日葵さんですよね!
ギルドを襲撃されたという事で
それを行った勇者教被害者たちに
何かコメントはありますか!」
あーーーーー!
「大きな被害に遭われて苦しかったのだと思います。
彼らを恨むことはありません。
…あ…」
私の周りには、記者集団が集まっていた…
「日葵さん!
ここからレコンキスタまで走り
避難を呼びかけられたそうですね。
やはり同業で知り合いが多かったのでしょうか!」
「悪質なデマを流されたことについて、怒りはありませんか!」
…
それから私は、記者たちの10を超える質問に答え続けていた。
「此度の暴動は、様々あった事件の中で
どれほどつらかったのでしょうか。」
取材がつらいよ!
「はは、一番つらかったです。
何より、他の人が傷付いて
少し、記憶も飛んでしまっている状態で…」
「この暴動以前に勇者教レジスタンスに襲撃を受けていたようですが、
勇者教被害者の会の集会に今後出席されることはあるんでしょうか!」
…被害者の会!?
情報収集…とか何か…
「集会があることを存じておりませんでした。
被害者の方々について、調べてみようと思います。」
何か、勇者教を止める手がかりがありそう。
「日葵さんの普段の行動についてはよく存じております。
過去にも襲撃を受けた後、テロリストへ自首するよう説得したことがありましたが…
もしや、勇者教を説得しよう等と考えてはいませんか?」
…へ?怖い怖い!
「あの、せっと…あの…
彼らにも考えがあって行動する以上
ただ説得する…では矛を収めてくれないと思います。
早く平和が来てくれればいいなと思います。」
そして記者さん達に頭を下げる。
「すみません…
ご心配頂き、ありがとうございました。」
強く地を蹴り出し、
そそくさとギルドの裏口に入り込んだ。
「あ…助かった…」
息が上がり、外の熱が服から体を熱していて…
冷気媒体に触れて祈り、冷気を発生させる。
その後木の机の上に置かれた手紙を一つづつ読んでいった。
心配してた、元気になって、信じてる。
暖かい言葉がたくさん並んでいて震えるように
背筋が立ち上がってきた。
あの勇者教被害者たちとギルドの人たちからの
お手紙はなかった。
「もっと動こう、もっと…」
”気を持ち、効率を心がけよ。”
そんな言葉を思い出した。
今日は、休むべきだね。
それでも書類が気になって…一度手伝いに行こうとしたけど
「日葵、休憩って仕事を果たしなさい。」
なんて追い払われちゃった。
そうして赤色の光が射しこみ
ギルドの仕事が終わるころになった。
「昼の休憩の時、勇者教の記事を探して貰った。」
「噂好きの人たちから、聞いておいたよ!
日葵ちゃん?一緒に啓蒙活動するんだから
また一人で無茶はしないでね!」
私達はギルドを襲われたんだから、多少情報収集しても
話題に出てても自然だ。
だから、少しぐらいいいよね。
食事をとり、集まった情報を持って
私はきれいに掃除された自室に戻る。
彼らもきっと、一堂に会する時がある。
その時に、何か…言葉じゃなくて心で伝えること。
その為に、知らなきゃ…彼らを。
★境界からの独り言★
去年から投稿してたんだよね。
懐かしいね。
良かったら、また来てね。
余談:
記者たちは昔から日葵のことを知ってて…
「誕生日はいつなんですか?」
「4月1日です!」
もう顔なじみみたい!
良かったね!




