第十五話 - 彼らを知って
まぶしい日差しの中私は熱くなった部屋の中で起きた。
夜更かししちゃったみたい…
腕や肩に違和感を感じながらも着替え、急いで下に降りる。
ギルドの中で数人の男女が掃除や雑用をやっていた。
何だろう…と思ってベラーゼ君の肩を叩いた。
「おはよう、ベラーゼ君」
朝からただ座ってるなんて、珍しいね。
「日葵さん、おはよう。」
私の視線に気が付いたのか、爽やかな笑顔で
こう続けた。
「無言の抵抗軍の信者たちが…謝罪しないと気持ちが収まらないから、
暫く掃除だけでもさせて欲しいとキャロスさんに言ったそうなんです。
ケガの後なので、ありがたいですね。」
全く、何も恨んでないのに…でも仕方ないよね。
振り返ると目の前にいた初老のおばあさんが両手を
合わせながら近付いてきた。
「ああ、日葵様…顔色がまだ優れていないようで
痛々しい…我々で何かご用意いたしましょうか?」
ギルドに人が増えたって一瞬ときめいたけど。
…夢は自分たちで叶えないとね。
というより、信仰されるのはやっぱりいや!
勇者って言ってないのに何でこんな扱いされてるの!
「日葵様!」
続いて周囲から声が上がる。
あああああああああああ…っ!
背中がかゆくなってくる…!
思わず身を縮め顔をゆがめた。
それで他の人も駆け寄ってくる
痒くなって堪らない!
「やはり背中の傷が…!
指導者から聞いております、背中に血をにじませながら
元凶のレコンキスタに走ったと…
あの勇者向日葵の死から1年…王都まで怪我を負いながらも走りぬいた
勇者の志が生きているかと思うと、我々は…」
茶色のズボン、白いシャツ…一般着の男性は泣き出した。
ああ…これは何を言ってももうだめだ…
だってちゃんと行動に基づいてるんだもん…。
「ギルドへの資金援助も受け取ってもらえませんでした。
我々を複雑な面持ちでご覧になられておられましたが
ご自身の夢はご自身で叶える…あなた様が勤めるにふさわしい
ご立派な経営方針だと思います。」
老婆が畳みかける様に私の手を握り、体温が伝わってくる。
心…読まれてる?
私表情に出やすいのかな…違うね。
キャロスさんがしっかり伝えてくれたんだ。
「はは、それも魅力。
色んな表情試しちゃって…素直でいいのよ!」
…読まれてる!
フレアンさんが私の髪の上で暖かい手をサラサラと動かす。
もう子供じゃないのに!
「我々は奉仕の続きに戻ります。
貴方にも勇者のご加護あらんことを。」
! 勇者の加護、そうだ、わ
「 日葵様の完全な回復を、我々も願っております。」
…私がそのまま…えっと、なんだっけ?
何かひらめきかけた気がした。
でもそれ以上に”日葵様”が気になって、頭から消えちゃった。
そして立ち替わり、別の信者が私の前に来て
食い入るように見つめてきた。
「日葵様…!あなた様の事をお調べしました!
テロリストと会話する慈愛の心!
このような体にそれが収まっているかと思うと
私…尊くて…
いつか、このギルドに仕事探しに来ます!」
それでも、女性は前かがみで私に目線を合わせてくれていたから…
だから、ちょっとでも自分を良く見せたくて、微笑んだ。
「その志は誰の心にもありますから。
特に自らの考えを磨く団体に入ったあなた方も
そうでしょ?」
ほんとはすぐに何か食べたかったけど、それよりも
今少し話したい。
「…え?」
何で、何で目を逸らすの!?
「あなたの事はまだよく存じておりません。
ですが、考えを強く建て、
これからもしあわせの中を歩めることを祈っています。
もう少し、お話ししますか?」
何か悩んでそうな気がする、よくわからないからもうちょっと。
「え…いえ…お腹なってますし…」
…!
「し、失礼します!」
急いで食卓に行くと、見慣れない小さな壺があって…甘い香り!
一緒に来たあの女性信者さんが
固いパンと共に、牛乳と蜂蜜を差し出してくれて…
「退所祝いですから。」
きっと高いんだね。
滑らかで少しにおう牛乳も蜂蜜の香りが…美味しいね…。
期待の笑みの中、最大限味わって食べる。
少し辛かったけど蜂蜜を昨日のお菓子にも劣らないぐらい
上手く味わえて私、満足!
準備時間が終わるころ、無言の抵抗軍から来た人たちは
頭を下げて帰っていった。
一瞬、怖いが先立ったけどそれも気持ちを理解してなかったからだった。
日葵様の呪縛から解放されて、そう思った。
勇者教が全部平和主義だったらよかったのに。
…でも過激派の話にも理解できる部分がある。
昨日色んな情報を読んで分かった。
勇者教レジスタンス
元国王が私に拷問をしたせいで過激派の勢力は増してるけど
元々、歴代勇者を信仰する宗教はずっと歴史に存在した。
勇者たちはひどい圧政から人々を救ったり
襲い来る魔物の群れから人類を救ったり
騒乱の世の中で人々の希望の星になっていた。
でもそんないい人たちに限って、理不尽な死を遂げることが多すぎる。
だから社会の不平不満を持ったものと、勇者を熱心に崇める者たち、
理不尽を嫌う者が合わさって、過激派になったんだ。
彼らは何処かで開かれる”集会”によって意識を共有し
”決議”によって勇者を冒涜する者の元に
使者が送られる組織。
そしてその使者が何をするか…
私が受けたとおり…暴力と尋問の仕打ちだ。
ありとあらゆる組織…家庭がちょっとした失態や噂から
あんな目に遭って、場合によっては殺されている。
…私は絶対にそんなことをしない。
勇者を疑ったからって、やたらめったら尋問して相手を殺すんじゃ
昔の国王のガーランドさんと何も変わらないのにね…
過激派と言ってもいろんな人がいて、一般人みたいな人も
殺人で逮捕されてたり…どうやったら止められるんだろう。
もう少し調べないと、レジスタンスを止めるカギは…
ともかく、何か知ってるかもしれないから
勇者教被害者たちの会に…会いに行ってみよう。
「今日はメラルド町まで行ってきます。
もし遅くなるなら…魔具で紫苑さんに連絡します。」
昨日の夜書いた、手紙をもって…
私はギルドから歩み出た。
今日は向日葵の服じゃなくて藍色の地味な服を着ている。
冒険者たちと目が合うたび、頭を下げた。
町二つ分歩くのは疲れるけど馬車は高すぎる。
ジリジリと照り付ける日差しの中、
時々石畳の街道を避けて木陰で休みつつ
ゆっくりと歩いた。
やがて日の向きが変わるころ、
緑豊かな街並みに替わっていった。
メラルド町、その名物のヒスイの円柱から
穏やかに噴き出す噴水を見て笑っていると
私の肩が叩かれる。
振り返ると、そこに居たのは…
勇者教被害者の中に居た、屈強な男だった。
私の腹を蹴り飛ばしてきた、あの男の人が。
★境界からの独り言★
土曜日だけ10:10と15:10の2回、それ以外は18:10の投稿を続けようと思う。
ごめんね…日曜は素直に難しいみたい。
境界ダイアローグ、ここから遊びの話が無いんだよね…プロット案では全部伏線(ほぼ必須の組み立て)。
絶対にミスが増えちゃうから、ごめんなさい。日曜は無理です。
でも殴り書きなら別!という事で…日曜は活動報告デー!
活動報告を1回以上出すから、殴り書きを見に来てね!
(わことんの素の実力が出てるけど、何と一活動報告に10分(と言いつつ重いと30分)
もかからないから
量産できるんだ!
何でもないページを開くと、活動報告のおまけとして境界ダイアローグの前日談
(不思議な服の後日談)が入ってるよ。)
https://mypage.syosetu.com/mypageblog/list/userid/2942935/
あと、評価やブックマークは要らないって言ったけど
感想も大歓迎(入力制限していないはず?)だし、ブックマークがついてると
精神上は安心できるかな。
そんなのなくても、最後までやるけどね。(今のところ読者は…まあいないけど、大丈夫。)
毎度思うけど、たくさん読者ついてる人は凄すぎる。
自分のペースでやるんだ。




