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廃業料理人、異世界の『毒』を喰らう ~『鑑定』スキルで気付いたら、この世界の食材ぜんぶ俺のご馳走でした~  作者: 生クリーム王子


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第59話 獣人族の料理修行、紅蓮の翼

 儀式の翌朝。

 俺はテントの外に出た。

 紅蓮の平原に、朝日が昇っていた。

 赤茶色の大地が、金色に染まっていく。

 ……綺麗だ。

 料理人として、自然の美しさに心が打たれた。

 風が爽やかに、頬を撫でていた。

 今日からはリーラさんと共に、獣人族の料理を学ぶ予定だった。

 ガルロ様が滞在期間として、一週間を用意してくれていた。

 料理人として、最高の修行期間。

 俺は深く息を吸って、準備を整えた。


 共用の調理場に向かうと、リーラさんがすでに待っていた。

 白いエプロン姿。

 長い黒髪は、後ろで縛られていた。

 料理人としての本気の姿。

「田中殿、おはようございます」

「リーラさん、おはようございます」

「今日から、獣人族の料理お教えします」

「よろしくお願いします」

 俺は深く頭を下げた。

 リーラさんが優雅に微笑んだ。

「まず、獣人族の料理の基本から」

「ええ」

「素材重視」

「素材重視」

「肉、ハーブ、塩」

「シンプルですね」

「ええ」

 彼女が頷いた。

「でもシンプルだからこそ——素材の最高の状態を引き出す技術が必要」

「なるほど」

「肉の切り方、ハーブの配合、塩の量」

「全てが計算される」

「その通りですわ」

 リーラさんが深く頷いた。

 料理人として、彼女の知性に感心した。

 獣人族の料理は——シンプルだが、極めて繊細。

 地球の和食に似た、哲学を感じた。


 その日、俺たちは獣人族の伝統料理を、一通り学んだ。

 最初は、肉の下処理。

 獣人族では肉を新鮮なうちに捌くのが、基本。

 リーラさんが見せてくれた技術は、本当に見事だった。

 包丁の入れ方、角度、力の加減——全てが計算されていた。

 俺も彼女に習って、肉を捌いた。

 最初はぎこちなかった。

 でも徐々に、コツが掴めてきた。

 料理人としての、新しい技術習得。

 ワクワクが止まらなかった。

 次に、ハーブの配合。

 獣人族では、二十種類以上のハーブを使う。

 それぞれの組み合わせで、味が全く変わる。

 リーラさんが丁寧に教えてくれた。

「これは、肉と相性がいい」

「なるほど」

「これは、生食に合う」

「ええ」

「これは、煮込みに合う」

「分かりやすいですね」

「うふふ」

 リーラさんが優しく微笑んだ。

 料理人としての知識の宝庫。

 彼女から学ぶことは、本当にたくさんあった。


 その時、エマさんが駆け寄ってきた。

「タナカさん、私も学びたい!」

「もちろんです」

「リーラさん、私にも教えて!」

「ええ、エマさん」

 リーラさんが優しく頷いた。

 エマさんは本当に、料理に貪欲だった。

 ドワーフ族の料理しか知らなかった彼女が——獣人族の料理に夢中になっていた。

 料理人として、その姿勢が嬉しかった。

 シエラさんも隣で見ていた。

「私も、見学させてください」

「もちろんですわ」

 四人で獣人族の料理を学ぶ時間。

 料理人として、最高の瞬間だった。


 昼食を囲みながら、リーラさんが話してくれた。

「田中殿」

「はい」

「料理大会の最終料理、聞かせてください」

「『鉄の都の薬膳スープ』です」

「黒鉄の骨髄、ですか」

「はい」

「素晴らしい構想ですわ」

「ありがとうございます」

「でも、それだけでは足りない、と思います」

「と、言いますと?」

 リーラさんが深く考えた。

「世界料理大会、全種族の料理が集まる」

「ええ」

「他の料理人も、最高の素材で挑んでくる」

「……」

「田中殿の料理が勝つためには——」

「はい」

「全種族の伝説素材を、結集する必要がある」

「!」

「獣人族にも、伝説の素材があります」

 俺は深く頷いた。

 ……やはり、獣人族にも。

 料理人として、興奮していた。

「教えていただけますか」

「もちろんです」

 リーラさんが深く息を吸った。

「獣人族の伝説素材——『紅蓮の翼』」

「紅蓮の翼」

「鳳凰のような巨大鳥の羽根」

「!」

「紅蓮の平原の、最深部に棲む」

「すごい素材ですね」

「ええ」

「焼くと——人間が食べても、最高の滋養」

「!」

「だが、採取は命懸け」

 リーラさんの声が低くなった。

「獣人族の戦士でも、何人も命を落としている」

「……」

「鳳凰、非常に賢い生物」

「賢い」

「人間や獣人族を、警戒する」

「なるほど」

「だから、採取は難しい」

 彼女の目には、強い緊張感が宿っていた。

 俺は深く頷いた。

 ……命懸けの採取。

 ドワーフの鉄竜の骨髄と、似ている状況。

 でも料理人として、挑む価値がある。

 最高の料理を作るため。


 その夕方、俺たちはガルロ様に相談に行った。

 ガルロ様が深く頷いた。

「紅蓮の翼、か」

「はい」

「あれは確かに、伝説の素材」

「ええ」

「だが、採取は非常に危険」

「分かっています」

「我ら獣人族でも、千年に一度しか採取できない」

 ガルロ様の声には、重みがあった。

「鳳凰、本気で戦えば——A級戦士、十人でも勝てない」

「!」

「だが、料理大会のために挑む価値はある」

「ええ」

「私自身、若い頃鳳凰の巣穴まで行ったことがある」

「!」

「採取はできなかったが——巣穴の場所は覚えている」

「教えていただけますか」

「もちろん」

 ガルロ様が深く頷いた。

「だが、リーラとライガ、両方護衛として同行する」

「ありがとうございます」

「ガリオも必要だろう」

「もちろん行く」

 ガリオさんがニカッと笑った。

「Aランク冒険者、また本気を出す時だな」

「期待しています」

 俺は深く頷いた。

 獣人族の伝説素材『紅蓮の翼』の採取の旅。

 料理人として、また命懸けの挑戦が始まる。


 その夜。

 俺はレイナと、テントの中で相談した。

「鳳凰、危険らしい」

「ええ」

「あなた、本当に行く?」

「もちろん」

「料理大会の最終料理、必要だから」

「うん」

 レイナが深く頷いた。

「私も、毒師として援護する」

「お願いします」

「鳳凰の毒、何かあるかもしれない」

「!」

「焼くと滋養になる——ということは、生の状態では毒の可能性ある」

「なるほど」

「対策、考えておく」

 レイナの声には、強い知性が宿っていた。

 毒師ギルド総帥としての、深い知識。

 料理人として、最強のパートナーだった。

「ありがとうございます、レイナさん」

「ふふ、当然よ」

 彼女がにっこり微笑んだ。

 俺は彼女の手を握った。

 彼女が優しく、握り返してきた。

 獣人族の伝説素材獲得の旅。

 また、新しい挑戦が始まる。

 料理人として、ワクワクが止まらなかった。


 その時——テントの外から、ライガさんの声が聞こえた。

「田中殿、少しいいか」

「はい」

「ガレンから、伝令が届いた」

「!」

「ベラ亭、平和らしい」

「よかった」

「だが——カイン殿から、まだ連絡がない」

「!?」

 俺の表情が変わった。

 カインさん、魔界に潜入捜査中。

 まだ戻ってきていない。

「ライガさん、どう思いますか?」

「魔界、深い」

「ええ」

「情報、簡単には出てこない」

「……」

「だが、二週間連絡なしは気になる」

「もう、二週間ですか」

「ああ」

 俺は深く息を吸った。

 カインさんの無事を祈った。

 でも、不安が心の奥で広がっていた。

 料理人として、料理大会への準備を進める。

 でもそれと同時に——魔界での何かが、確実に進行している。

 ザガン公の動き。

 反グレイヴ派の台頭。

 料理大会開催前に——大きな何かが起きる予感。

 俺は深く頷いた。

「ライガさん、ありがとうございます」

「うむ」

「カインさん、必ず戻ってきますから」

「そう願う」

 ライガさんが深く頷いた。

 料理人としての、平和な修行期間。

 でも、その平和の裏で——何かが確実に動いている。

 俺は深く息を吸った。

 明日から、紅蓮の翼の採取の旅。

 料理人として、最高の料理を作るために——前に進む。

 それしか、できなかった。

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