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廃業料理人、異世界の『毒』を喰らう ~『鑑定』スキルで気付いたら、この世界の食材ぜんぶ俺のご馳走でした~  作者: 生クリーム王子


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第58話 料理披露の儀式、二つの誇り

 翌朝。

 俺は獣人族の客用テントで、目を覚ました。

 ベッドではなく、毛皮の敷布。

 でも、思ったより寝心地が良かった。

 風がテントの布を、揺らしていた。

 外からは、獣人族の朝の活気が聞こえてきた。

 子供たちの笑い声。

 大人たちの力強い足音。

 料理を準備する香り。

 ……素朴で、温かい朝。

 俺は深く息を吸った。

 今日が儀式の日。

 料理人として、最高の料理を披露する。

 そう決意した。


 テントの外に出ると——ライガさんが待っていた。

「田中殿、おはよう」

「ライガさん、おはようございます」

「儀式の場、ご案内する」

「お願いします」

 彼が俺たちを、集落の中心部に案内した。

 そこには——巨大な円形の広場があった。

 中央に二つの調理台。

 その周りに円形に、観客席が配置されていた。

 すでに獣人族の人々が、集まり始めていた。

 数百人。集落の全員が、見にきているらしい。

「すごい規模ですね」

「儀式、年に一度の大切な行事」

「年に一度」

「ああ、外部の料理人を招くこと、滅多にない」

 ライガさんが深く頷いた。

「お前が最初の人間」

「光栄です」

 俺は深く頭を下げた。

 料理人として、これ以上の誇りはなかった。


 調理台の一つに——リーラさんが、すでに立っていた。

 彼女は白い、料理人の服を着ていた。

 獣人族らしい、シンプルだが力強いデザイン。

 長い黒髪は後ろで、まとめられていた。

 料理人の戦闘準備、完了の姿。

 俺は近づいて、頭を下げた。

「リーラさん、よろしくお願いします」

「田中殿、こちらこそ」

「お互いの料理、見せ合いましょう」

「ええ、楽しみですわ」

 リーラさんが優雅に微笑んだ。

 その笑顔の奥に——料理人としての誇りが宿っていた。

 俺は深く頷いた。

 ……強い相手。

 でも、楽しみだった。


 ガルロ様が観客席の中央に、座った。

 その隣に——ライガさんと、他の長老たちが座った。

 全員、獣人族の重鎮。

 審査員として儀式を見守る。

 俺の仲間たちも、観客席の前列に座った。

 ガリオさん、レイナ、シエラさん、エマさん。

 全員、ワクワクした表情で俺を見ていた。

 ……これは、緊張する。

 でも料理人として、これ以上の舞台はない。

 俺は深く息を吸って——調理台に立った。

 ガルロ様が両手を上げた。

「儀式、開始!」

 観客が一斉に、歓声を上げた。

 獣人族らしい、力強い声。

 俺の料理人としての戦いが、始まった。


 まず、テーマが発表された。

「テーマは、『命の源』!」

 ガルロ様の声が響いた。

 ……命の源。

 獣人族らしい、深いテーマ。

 俺は深く考えた。

 命の源——それは何か。

 料理を命を繋ぐもの、として考える。

 それが俺の流儀だった。

 俺は頭の中で、料理の構想を固めた。

 ベラ亭の玉ねぎスープ。

 でも、獣人族の文化に合わせる。

 ル・オニオンにハーブを加えて——

 獣人族の肉も使う。

 獣人族と人間の料理の融合。

 料理人として、最高のテーマに最高の答えを出す。


 リーラさんは彼女の調理台で、すでに動き始めていた。

 大きな肉の塊を取り出した。

 その肉は——赤黒く、力強い色。

 獣人族の伝統的な肉らしい。

 彼女が手早く、肉を捌いた。

 その手つきは、本当に見事だった。

 戦士の力強さと、料理人の繊細さ。

 両方が融合した動き。

 俺は感心しながら、自分の調理も進めた。

 まず、ル・オニオンを薄く切った。

 次に、肉を用意した。

 獣人族から提供された、新鮮な鹿のような肉。

 その肉を丁寧に、下処理。

 そして両方を大鍋に入れて——煮込み始めた。

 ル・オニオンの優しい甘みと、獣人族の肉の力強い旨味。

 二つが混じり合っていく香り。

 観客からざわめきが、起きた。

 ……いい感じ。

 料理人として、心が躍った。


 リーラさんの料理も、進んでいた。

 彼女は肉を薄切りにして、生でハーブと塩を振りかけていた。

 獣人族の伝統的な生食料理、らしい。

 でも、ただの生食ではなかった。

 ハーブの配合、塩の量、肉の切り方——全てが計算されていた。

 料理人としての、完璧な技術。

 俺は感心しながら見ていた。

 獣人族の文化を、最高の形で表現する料理。

 リーラさんの料理人としての深さが、伝わってきた。


 時間が徐々に経った。

 俺の煮込み料理が、完成間近。

 リーラさんの生食料理も、最終調整段階。

 観客の緊張感が、高まっていった。

 ガルロ様が深く頷いた。

「両者、料理、完成しているか?」

「はい!」

「はい、長老」

 俺たちは同時に答えた。

「では、お互いの料理披露する」

 ガルロ様の声が響いた。

 観客が静まり返った。

 料理人としての、勝負の時だった。


 リーラさんが先に、自分の料理をテーブルに運んだ。

「『獣人族の、命の刺身』です」

 彼女の声には、誇りが宿っていた。

 ガルロ様がまず、味見した。

 彼の表情が、満足そうに緩んだ。

「うむ、見事」

「ありがとうございます」

「肉の命の力が、最大限引き出されている」

「光栄です」

「獣人族の伝統を、見事に継承している」

 ガルロ様が深く頷いた。

 他の長老たちも、次々と味見し、満足そうに頷いた。

 観客から歓声が上がった。

 リーラさんが優雅に、頭を下げた。

 獣人族の最高料理人としての、誇り。

 その誇りが料理に、現れていた。


 次は俺の番だった。

 俺は自分の料理を運んだ。

「『ベラ亭の玉ねぎと獣の肉の煮込み』です」

 俺の声にも、誇りが宿っていた。

 ガルロ様が慎重に、味見した。

 彼の表情が、わずかに見開かれた。

「……これは」

「お口に合いましたか」

「肉の力強さに——優しさが加わっている」

「ありがとうございます」

「獣人族の肉、初めてこんな味わいになる」

「ええ」

「人間の料理人の技、見事」

 ガルロ様の目に、深い感動が宿っていた。

 他の長老たちも、味見し深く頷いた。

「人間の料理、優しい」

「獣人族の肉、新しい可能性」

「素晴らしい」

 長老たちの声。

 料理人として、最高の評価だった。

 ライガさんも深く頷いた。

「田中殿の料理、本物だな」

「ありがとうございます」

「我ら獣人族、お前の料理認める」

 観客からも、歓声が上がった。

 料理人として、新しい種族の信頼を勝ち取った瞬間。


 ガルロ様がゆっくりと、立ち上がった。

「両者、見事な料理披露した」

「ありがとうございます」

「我ら獣人族として、感謝する」

 彼が深く頭を下げた。

「この儀式、目的達成した」

「目的、ですか」

「お互いの誇りを認め合うこと」

「!」

「田中殿、リーラ、両者料理人としての誇り、見事だった」

 ガルロ様の声には、強い決意が宿っていた。

「料理大会、参加する」

「!?」

「獣人連合、正式に世界料理大会参加する」

「ありがとうございます!」

 俺は思わず、声を上げた。

 獣人族の正式参加、決定。

 料理人として、また一つ種族との絆が結ばれた。

 観客から大きな、歓声が上がった。

 料理人として、最高の瞬間だった。


 ガルロ様が続けた。

「だが、もう一つ条件がある」

「条件、ですか」

「リーラを、ベラ亭で修行させたい」

「!」

「獣人族の代表として、お前のもとで修行する」

「もちろんです」

 俺は深く頷いた。

 リーラさんが優雅に、頭を下げた。

「田中殿、よろしくお願いします」

「こちらこそ」

「獣人族の料理を、伝えていくお手伝いします」

「ありがとうございます」

 料理人としての、新しいヒロイン候補。

 いや、料理仲間。

 リーラさんの加入で——ベラ亭の料理人が、また増える。

 料理人として、最高の結果だった。


 その夜。

 獣人族の集落で——盛大な宴会が開かれた。

 獣人族らしい肉料理が、たくさんテーブルに並んでいた。

 俺たちは皆で囲んで、食事を楽しんだ。

 ガリオさんがニカッと笑った。

「田中、また勝ち取ったな」

「ガリオさん」

「ヒロイン、また増えたぞ」

「いや、これは料理仲間です」

「ふふ、お前らしい答え」

 ガリオさんが笑った。

 その隣で、レイナがにっこり微笑んだ。

「もう、私覚悟決めてるから」

「レイナさん」

「あなたの運命、受け入れる」

「ありがとうございます」

 俺は深く頭を下げた。

 レイナの寛容さ。

 料理人として、最高のパートナーだった。

 でも、その時——リーラさんの視線が、俺に向いた。

 彼女が優雅に近づいてきた。

「田中殿、ベラ亭の皆さんとお会いするの、楽しみですわ」

「もちろんです」

「私、料理人としてもっと成長したい」

「お互いに学び合いましょう」

 リーラさんがにっこり微笑んだ。

 その笑顔は——どこか優雅で、温かかった。

 ……レイナさん、また火花出るかも。

 俺は思わず苦笑した。

 ベラ亭、本当に賑やかになる。

 料理人としての人生は——本当に忙しい。

 でも、それも含めて最高の人生だった。

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