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廃業料理人、異世界の『毒』を喰らう ~『鑑定』スキルで気付いたら、この世界の食材ぜんぶ俺のご馳走でした~  作者: 生クリーム王子


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第52話 ベラ亭帰還、四種族の食卓

 翌日の昼。

 馬車がオルバの街に入った。

 懐かしい街並み。

 久しぶりに見る、人間の活気。

 料理人として、心が躍った。

 馬車がベラ亭の前に到着した。

 俺は馬車から降りた。

 ベラ亭の看板が優しく、迎えてくれた。

『ベラ亭 王家公認 〜田中一郎の厨房〜』

 ……ただいま。

 俺は深く息を吸った。

 ベラ亭の温かい香りが漂ってきた。

 ル・オニオンの煮込みの香り。

 ベラさんが今日も、玉ねぎスープを作っているらしい。

 俺は扉をゆっくり開けた。

「田中さーんっ!」

 ベラさんがホールから駆け寄ってきた。

 いつもの号泣全開。

「お、お帰りなさいませぇぇぇ!」

「ベラさん、ただいまっ!」

「無事で、よかったぁぁぁぁ!」

 ベラさんが俺に抱きついてきた。

 いつもの母性の塊。

 俺は温かく抱き返した。

 その後ろから、リエラさんが駆け寄ってきた。

「田中殿、お疲れ様でした」

「リエラさん、ただいまっ!」

「お留守、ご無事で何より」

「ありがとうございます」

 彼女が深く頭を下げた。

 ベラ亭の温かさが、また戻ってきた。


 その時、ベラさんが俺の後ろを見た。

 シエラさんに続いて——エマさんが馬車から降りてきた。

 ベラさんが目を丸くした。

「あ、あの——」

「ベラさん、ご紹介します」

「は、はい」

「ドワーフ族のエマさん」

「ド、ドワーフ!?」

「料理大会のドワーフ族代表」

「!!」

「ベラ亭で、修行します」

 ベラさんが口を、ぱくぱくさせた。

 次の瞬間——

「うわぁぁぁぁぁ、ドワーフがベラ亭にぃぃぃ!」

「ベラさん、号泣しなくても」

「だってぇぇぇ、シエラさんに、エマさんに——」

「はい」

「ベラ亭、本当に世界のお店になってますぅぅ!」

 ベラさんが嬉し涙で号泣した。

 もう、いつものベラさんだった。

 エマさんがぽかんと、それを見ていた。

「タナカさん、ベラさん、本当に号泣する」

「だから、言ったでしょう?」

「面白いっ!」

 エマさんが明るく笑った。

 彼女がベラさんに駆け寄った。

「ベラさん! はじめまして!」

「えっ、エマさん?」

「ドワーフ族のエマ・グレンハイムです! よろしくっ!」

「あらまぁ、元気なお嬢さん」

 ベラさんが号泣しながら、エマさんをぎゅーっと抱きしめた。

「ようこそ、ベラ亭にぃぃぃ!」

「うわぁぁぁ、ベラさん、温かい!」

「私の家族のように、思いますからねぇ」

「ありがとうございますぅぅ!」

 ベラさんとエマさんが、お互いに号泣し合っていた。

 ……二人とも、号泣体質。

 俺は思わず苦笑した。

 ベラ亭は、本当に温かい。

 どんな種族の人でも——すぐに家族のように、迎えてくれる。

 ベラ亭の最大の魅力だった。


 その夜。

 ベラ亭の奥の食堂で、特別な夕食を囲んだ。

 俺、レイナ、ガリオさん、カインさん、シエラさん、エマさん。

 そしてベラさんとリエラさん。

 八人の家族。

 今日の料理は、ドワーフ族から贈られた素材を使った特別なメニュー。

 鉱山牛のローストに、地下キノコの煮込み。

 でも、ベラ亭のル・オニオンもしっかり入れた。

 ドワーフと人間の料理の融合。

 ベラ亭らしい、温かい料理だった。

 ベラさんがエマさんに、いろいろ聞いていた。

「エマさん、ドワーフって皆さん、力持ち?」

「うん、私も力強いっ!」

「すごいですねぇ」

「ベラさん、何か運ぶ時、教えてっ!」

「うふふ、頼もしいですぅ」

 ベラさんが優しく微笑んだ。

 二人はもう、すっかり打ち解けていた。

 ヒロイン候補、4人——シエラさん、エマさん、レイナ、シャルロッテ王女(不在)。

 でも、ベラ亭の中では——皆、家族だった。

 俺は深く感動して、その光景を見ていた。


 食事の途中で、ジルベールさんがベラ亭に訪ねてきた。

 彼がホールから声をかけた。

「田中殿、お帰りなさい」

「ジルベールさん」

「ご無事で何よりです」

「ありがとうございます」

「ドワーフ族の件、聞きました」

「お耳が早いですね」

「ガリオさんから、伝令が来ていました」

 ジルベールさんが笑顔で頷いた。

「ドワーフ族の参加、決定」

「はい」

「これで人間、エルフ、ドワーフ——三種族揃いました」

「あと、魔界もです」

「四種族ですね」

「ええ」

「素晴らしい進捗です」

 ジルベールさんが深く頷いた。

「次は、獣人族と人魚族」

「はい」

「貴族側の準備も、進めておきます」

「ありがとうございます」

「料理大会、必ず最高のものにします」

 ジルベールさんが深く頭を下げた。

 俺は深く頷いた。

 貴族側の応援団も、しっかり動いてくれている。

 料理人として、心強い味方だった。


 ジルベールさんがエマさんと、シエラさんに自己紹介した。

「ヴィッセル家当主の、ジルベールと申します」

「シエラ・フェリオン、です」

「エマ・グレンハイムですっ!」

「お二人とも、よろしくお願いします」

 ジルベールさんが丁寧に、頭を下げた。

 彼の貴族らしい礼儀。

 でも、その奥には——種族の壁を感じない温かさがあった。

 料理を通じて、人間の貴族、エルフ、ドワーフが繋がっていく。

 料理大会の本質が、ここに現れていた。


 夜が更けて。

 ジルベールさんが帰った後。

 俺はレイナと、ベラ亭の屋根の上に立っていた。

 久しぶりの二人の時間。

 月が優しく輝いていた。

「一郎」

「はい」

「ベラ亭、本当に変わったわね」

「はい」

「私が来た時、人間しかいなかった」

「ええ」

「今はエルフも、ドワーフも、人間も、皆、家族」

「料理を通じて、繋がっています」

「素晴らしいことね」

 レイナが優しく微笑んだ。

「あなたの夢、確実に近づいてる」

「皆のおかげです」

「うふふ、またそれ」

「料理人ですから」

「ふふ」

 二人で笑い合った。

 月明かりが優しく、二人を照らしていた。

 明日からは、ベラ亭の日常。

 シエラさんとエマさんが、ベラ亭で修行を始める。

 久しぶりの平和な毎日。

 俺は深く息を吸った。

「レイナさん」

「はい」

「数日、ゆっくり過ごしましょう」

「うん」

「ベラ亭の皆と、新しい家族の時間」

「ええ」

「その後、獣人族の領地に向かいます」

「もちろん、私も行く」

「お願いします」

 レイナがにっこり微笑んだ。

 料理人としての人生。

 仲間とヒロインとベラ亭の家族と共に。

 最高の人生だった。

 俺は深く頷いた。


 その時、ホールからベラさんの嬉しそうな声が聞こえてきた。

「シエラさん、エマさん! お風呂、用意しましたよぉ!」

「ありがとうございます!」

「うわぁぁ、ベラ亭のお風呂!」

 二人の賑やかな声。

 ベラ亭の温かさに、新しいメンバーが馴染んでいく。

 俺は深く感動した。

 ベラ亭、本当に温かい家。

 料理大会への準備期間も——この温かさの中で過ごせる。

 料理人として、最高の環境だった。

 俺はレイナの手を、優しく握った。

 彼女もしっかりと、握り返してきた。

 月明かりの下で——二人の未来が、また近づいてくる感覚だった。

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