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廃業料理人、異世界の『毒』を喰らう ~『鑑定』スキルで気付いたら、この世界の食材ぜんぶ俺のご馳走でした~  作者: 生クリーム王子


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第47話 料理対決の予感、エマの真剣な瞳

 翌朝。

 俺は鉄の都の客室で目を覚ました。

 昨日の出来事が、まだ夢のように感じられた。

 黒鉄の骨髄の処理成功。ドルガン様の息子の救出。

 命を繋ぐ薬膳スープの完成。

 たった一日で、これほど多くのことが起きるとは。

 料理人として、密度の濃い一日だった。

 俺は深く息を吸って、布団から起き上がった。

 今日も、料理人として最善を尽くす。

 それが俺の流儀だった。


 厨房に向かうと、すでにエマさんが待っていた。

 いつもの太陽のような笑顔。

 でもその目には、昨日とは違う何かが宿っていた。

「タナカさん、おはよーっ!」

「エマさん、おはようございます」

「お父さん、すごく良くなってきました!」

「それは何より」

「もう意識も戻って、お話しできるの」

「すごい回復力ですね」

「タナカさんの薬膳スープのおかげっ!」

 エマさんが深く頭を下げた。

「家族として、心から感謝してます」

「いえ、皆の力です」

「ううん、タナカさんがいなかったら無理だった」

 彼女の声には、強い感情が込められていた。

 昨日までの、明るく元気な雰囲気とは違う。

 料理人として、家族の命を救った主人公への深い感謝。

 俺はそれを深く受け止めた。

「エマさん、料理人として当然のことです」

「うん、でも——」

「はい」

「私、決めました」

「決めた、というのは?」

「タナカさんに、料理対決を申し込みます」

「!?」

 俺は思わず目を見開いた。

 エマさんがまっすぐ、俺を見つめていた。

 その目には、強い決意が宿っていた。


「料理対決、ですか」

「はい」

「どうして、急に?」

 エマさんが深く息を吸った。

「タナカさんの料理、私を超えてました」

「いえ、そんなことは」

「ううん、本当に超えてました」

「……」

「だから私も、本気で挑みたいんです」

 彼女の声は震えていた。

 でも、しっかりとした覚悟の声だった。

「ドワーフ族最年少の料理人として」

「はい」

「タナカさんに追いつきたい」

「……」

「料理大会の前に——本気の対決をしたい」

「エマさん」

「もちろん、勝てるとは思ってません」

「……」

「でも、自分の料理人としての位置を知りたいんです」

 俺は深く頷いた。

 彼女の気持ちが、痛いほど分かった。

 料理人として、自分の腕を試したい。

 それは向上心のある料理人なら、誰でも持つ気持ち。

 俺自身、前世でも何度もそういう気持ちを抱いてきた。

「分かりました」

「!」

「やりましょう、料理対決」

「ありがとうございますっ!」

 エマさんが満面の笑みで頷いた。

 でもすぐに、表情が真剣に戻った。

「ただ、条件があります」

「条件?」

「審査員は、ドルガン様でお願いします」

「もちろんです」

「お父さんも回復してきているので——一緒に審査してもらえれば」

「素晴らしいですね」

 俺はにっこり微笑んだ。

 ドルガン様と息子さん、二人の審査。

 最高の対決の舞台。

 俺の料理人魂に、火がついた。


 その時——シエラさんが厨房に入ってきた。

 彼女は俺たちの会話を聞いていたらしい。

「あの、お二人」

「シエラさん」

「私、別の提案してもいいですか」

「もちろん、どうぞ」

 シエラさんが深く頷いた。

「料理対決、エルフ族の料理も追加するのは、どうでしょう」

「えっ」

「私も料理人として、参加したい」

「……」

「三人の対決」

 シエラさんの目に、強い決意が宿っていた。

「エマさんと一緒に、料理大会の予行演習として——」

「予行演習」

「ええ、料理大会で各種族の代表として競う、その練習」

 俺は深く頷いた。

 ……すごい提案。

 料理大会の予行演習。

 エルフ、ドワーフ、人間(俺)の三種族対決。

 料理人として、これほど楽しみな機会はなかった。

「シエラさん、素晴らしい提案です」

「ありがとうございます」

「エマさん、いかがですか?」

「もちろん、参加するっ!」

 エマさんがぱぁっと、目を輝かせた。

「シエラさんも強敵だぁ」

「私も楽しみですわ」

「お互い、本気で勝負しよう!」

「ええ」

 二人が嬉しそうに笑い合った。

 ……種族の垣根を超えた、料理人の絆。

 俺はそれを見て、深く感動した。


 その時——レイナが厨房に入ってきた。

 彼女が俺たちの表情を見て、首を傾げた。

「何か、楽しそうな話してるの?」

「あ、レイナさん」

「私も混ぜてほしい?」

「料理対決の話で——」

「対決?」

「俺、エマさん、シエラさんで三種族対決」

「ふーん」

 レイナがしばらく考えた。

 それから、にっこり微笑んだ。

「私も参加するわ」

「えっ!?」

「四人での対決」

「レイナさん、料理を?」

「私、副料理長候補よね?」

「あ、はい」

「料理大会、私も参加するつもりよ」

 レイナの声には、強い決意が宿っていた。

「正妻として、ベラ亭の料理人として」

「!」

「タナカさんと並んで、立ちたい」

 俺はレイナを見つめた。

 彼女の目には、強い愛情と覚悟が混じっていた。

 毒師ギルド総帥としてこれまで生きてきた、レイナ。

 彼女は料理人として、新しい人生を歩み始めようとしている。

 俺の隣に立つために。

 料理人として、最高のパートナー。

 俺は深く感動した。

「レイナさん」

「はい」

「もちろん、参加してください」

「ふふ、ありがとう」

「四人での対決、最高ですね」

「ええ」

 レイナが優しく微笑んだ。

 その横で、シエラさんとエマさんが目を合わせていた。

 ヒロイン同士の火花は健在だが——料理人としては、皆対等なライバル。

 料理を通じて、絆が深まっていく。

 最高の空気だった。


 俺たちは対決のルールを決めた。

 テーマは『命を繋ぐ料理』。

 昨日の薬膳スープを踏まえたテーマ。

 各自、自分の種族の伝統と新しいアイデアを融合した料理を作る。

 審査員はドルガン様と、息子さん。

 時間は半日。

 明日の夕方にお披露目。

 俺たちはすぐに、準備を始めた。


 俺はエマさんに声をかけた。

「エマさん」

「はい?」

「素材、何を使いますか?」

「やっぱり、ドワーフの命草と地下キノコ」

「うん」

「あと、鉱山牛の骨髄エキス」

「!」

「黒鉄の骨髄ではないですよ。普通の鉱山牛の骨髄」

「なるほど」

「ドワーフの伝統的な滋養料理」

「素晴らしいですね」

 エマさんがにっこり頷いた。

 俺はシエラさんに声をかけた。

「シエラさん、何を?」

「世界樹の葉と、エルフの薬草」

「世界樹の葉」

「ええ、何枚かまだ持っています」

「貴重なものを」

「料理対決、本気で勝負したいから」

「ありがとうございます」

 シエラさんが深く頷いた。

 最後にレイナに声をかけた。

「レイナさんは?」

「私は、毒師としての知識を活かす」

「具体的には?」

「解毒の植物を、料理にする」

「面白いアイデアですね」

「あなたの薬膳スープを見て——」

「はい」

「私も解毒成分を料理に応用したい、と思った」

「素晴らしい考えです」

 レイナが優しく微笑んだ。

 四人それぞれの個性が、料理に現れる。

 料理大会の予行演習として、最高の対決だった。


 俺は自分の調理計画を立てた。

 テーマは『命を繋ぐ料理』。

 俺しか作れない料理。

 ……それは何だ?

 俺は深く考えた。

 俺の強みは——【鑑定】の力。

 全種族の素材を見極めて、最適な組み合わせを判断できること。

 昨日の薬膳スープも、その応用だった。

 でも料理対決では、もっと進化させたい。

 俺は思いついた。

 ……『鉄の都の薬膳スープ』。

 黒鉄の骨髄をメインに。

 全種族の素材を結集した、究極の薬膳スープ。

 料理大会の最終料理として出すつもりだったメニュー。

 その予行演習として、ここで披露する。

 俺の心が決まった。

 最高の料理を作る。

 料理人として、これ以上の舞台はない。


 その夜。

 俺はベラ亭の屋根、ではなく——ドワーフ族の宮殿のテラスに立っていた。

 地下都市だが、テラスから巨大な地下空間が見渡せた。

 無数の明かりが、優しく灯っていた。

 まるで星々のような光景。

 地球の夜景とは違うけど、温かい光だった。

「一郎」

 後ろからレイナの声がした。

「レイナさん」

「お疲れ様」

「ありがとうございます」

 彼女が隣に立った。

「明日、楽しみね」

「はい」

「あなたの料理、見るの初めてじゃないけど」

「はい」

「料理対決、本気のあなた見たい」

 レイナがにっこり微笑んだ。

「もちろん、私も本気で勝ちにいくけど」

「望むところです」

「ふふ、頑張ってね」

「レイナさんも」

 俺は彼女の手を握った。

 彼女が優しく握り返してきた。

 明日の料理対決。

 料理大会への本物の第一歩。

 俺たち料理人の絆を、確かめる瞬間。

 俺は深く息を吸った。

 最高の舞台が待っている。

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