害虫と農家
露が靴先を濡らした。
畦道は夜の間に草が締まり、朝の光がまだ土に届いていない時間だった。東の方向に向かっていた。ヘンリクが少し前を歩いている。老人の足取りは遅くなかった。
村の朝は動いていた。どこかで牛の低い声がした。薪割りの音。朝靄の中に炊煙が一本上がって、風の向きでルイーゼの方に来た。小麦を炊く香りだった。
右手の麦畑が始まった。穂が肩の高さまで伸びていた。夏の終わりだった。穂の重さが増す時期——王都の農業試験場では、この季節に被害報告が集まった。対処は早い方がいい。
「ドネルは早起きだ」とヘンリクは言った。「もう出ているはずだ」
ドネルは既に畑にいた。
六十がらみの農夫だった。日焼けした首と大きな手。麦の列を歩きながら穂の具合を確かめていた。ヘンリクを見て足を止めた。それからルイーゼを見た。
一拍、間があった。
「連れてきた」とヘンリクは言った。「農業の知識がある」
ドネルはルイーゼをもう一度見た。若い女。農作業の跡がない手をしている——ただし右手の甲に細かい傷がいくつかあった。
「……見てもいいですか」とルイーゼは言った。
ドネルは黙って畑の内側に踏み込んだ。それが「来い」の意味だった。
麦の列は胸の高さまであった。
ルイーゼは穂に近づいて節の部分を確認した。最初の一列で見つかった——葉の裏に小さな粒が密集していた。黄色に黒の斑点。動いていた。翅のある個体が数匹、葉の表を歩いていた。
膝をついて近くで見た。穂の付け根に特に多かった。汁を吸うタイプだった。
「どこから広がってきましたか」
「先週、南の端で見つけた。今週になってここまで来ている」とドネルは言った。
南から北東へ。風の向きと一致していた。有翅型が飛んできた可能性があった。
「翅のある個体が混じっています」とルイーゼは言った。「夏の終わりに翅を持って別の場所から移ってくる種類があります。今週で三列に広がったのも、そのためかもしれません」
「……飛ぶのか」
「はい」
ドネルは腕を組んだ。視線が穂の列を確認していた。「名前はわかるか」と言った。
「麦に寄生するアブラムシの一種です。確認したいことがあります——翅のある個体を一匹見せてもらえますか」
ドネルが葉を一枚折り取って差し出した。上に個体が二匹ついていた。ルイーゼは細かく確認した。翅の形。体の長さ。脚の色。頭の中で記録が動いた——七年間分の被害報告と、対処の結果。
「農業試験場の記録に、同じ特徴の虫の記録があります。木灰が有効です」
「木灰か」とドネルは言った。「試したことはない」
「穂の根元に振りかけると虫の体に刺さって動けなくなります。一度でいなくなるわけではありませんが、広がりを抑えられます」
「効くと確かめたのか」
「三年分の比較記録があります」とルイーゼは言った。「翅のある個体が隣の畑に移る前に、被害の深い列から優先して対処する方が良いです。今ここで見えている被害は三列です。残りはまだ広がっていません」
ドネルは畑を見渡した。自分の目で確認するように。
「倉庫に灰がある。量は足りるか」
「確認してみます」
倉庫の木灰は炉の残灰だった。乾いていて粒が細かかった。使えた。
ドネルが桶に入れて運び、ルイーゼが穂の根元に振りかけた。腰を曲げて一株ずつ確認しながら進む作業だった。王宮でこういう姿勢で作業したことはなかった。膝が痛くなるまで少し時間がかかった。
ヘンリクは途中で村に戻った。「他に話がある」とだけ言って。二人になった。
作業は無言で進んだ。
ルイーゼはその無言が苦ではなかった。七年間、作業中は声を出さないのが当然だった——命令を待つか、記録を書くか、どちらかだった。ただし今の無言は違った。ドネルが作業に集中しているだけで、拒絶ではなかった。
「農業試験場というのは」とドネルが口を開いたのは、二列目の中頃だった。「王都に、あるのか」
「南区の農地の端にあります。国有の試験区画で、品種改良と害虫記録の管理を担当していました」
「管理というのは書類か」
「記録です。被害の発生を記録して翌年の対策に使います。現場の農作業は専任の農夫が別にいました」
「……そうか。書類だけか」
「はい」とルイーゼは言った。「ただし七年分の記録があります。どの季節にどの虫が出るか、どの対処が効いたか——それは頭に入っています」
ドネルは何も言わなかった。灰の桶を一度置いて、手を叩いた。粉が散った。
「この土地は砂質ですか、粘土質ですか」とルイーゼは聞いた。
「砂が多い。水はけはいいが、乾きやすい」
「ならば木灰は少し多めに振っても流れにくいです。粘土質の畑だと固まることがありますが、砂質ならその心配がありません」
ドネルは頷かなかった。ただ次の株に灰を増やした。速度が少し変わった——ルイーゼに合わせるような速度になった。
「四十年、ここをやっている」とドネルが言ったのは三列目に入ってからだった。「俺の父の前は爺さんがやっていた。百年になる」
ルイーゼは灰を振りながら聞いた。
「百年の土地はわかることがある」とドネルは続けた。「毎年来る虫と、珍しい虫と。長くいると見えてくるものがある」
ルイーゼは返さなかった。
百年の土地。七年間の記録。比べるものではなかった。ただ——「長くいると見えてくるものがある」という言葉は、七年間の自分にも届く気がした。記録を読んだ回数、被害報告を受けた回数、翌年に備えた回数。長くいた場所が、ある。
「今年のこの虫は、去年より多いですか」とルイーゼは聞いた。
「多い。去年はこんなに翅のある個体が出なかった」
「夏の終わりの気温が高い年は多く出る傾向があります。記録上はそうでした」
ドネルは少し間を置いた。「去年の夏は涼しかった」と言った。
一致していた。記録が実際の土地と噛み合った。王都で記録を書いているときには、それがなかった。書き写すだけで、照合する現場がなかった。
「この虫は今年だけではありません」とルイーゼは言った。「毎年少しずつ来ます。来年もまた、見た方がいいです」
ドネルは黙っていた。それから「わかった」と言った。
灰桶が二杯空になった頃、三列目が終わった。
道具を片づけた。ドネルが井戸水を汲んで桶に注いだ。灰で白くなった手を洗った。水が白濁した。
「今日はここまでだ」とドネルは言った。「残りは明日にしよう」
「明日も来ます。広がっていないか確認したい」
ドネルは水の桶から目を上げた。ルイーゼを見た。何も言わなかった。しかし去るわけでもなかった。
「……一週間は様子を見た方がいいです」とルイーゼは続けた。「完全にいなくなるには時間がかかります」
「来てくれ」とドネルは言った。
礼を言わなかった。しかし「来てくれ」という言葉は——七年間、王都で受け取ってきた言葉とは出所が違った。「連れ戻せ」でも「対処せよ」でもなかった。来ることを望む言葉だった。
帰り道、村の入り口でヘンリクが待っていた。
「どうだった」
「今日は三列対処しました。明日残りを続けます。一週間は様子を見た方がいいです」
「終わったか」
「終わっていません」とルイーゼは言った。「続けます」
ヘンリクは少し間を置いた。「そうか」と言った。それだけだった。それ以上は問わなかった。
夕方、手に木灰の匂いが残っていた。
洗ってもまだ乾いた匂いがした。王宮でこういう匂いをさせたことはなかった。薬品、書類、廊下の石——そういう匂いは知っていた。しかし土と灰は違う種類の汚れで、違う種類の残り方をした。
東の畑の方向の空が橙に染まっていた。
倉庫から借りてきた木灰の袋を小屋の軒下に置いた。空になっていた。明日の分はドネルの倉庫から補充すると言われていた。
また明日、東の畑へ行く。
それが決まっている夜は——少し違う重さがあった。




