冬の空を読む
アシャの額は、昨日より確かに下がっていた。
ルイーゼが手のひらを当てた瞬間、それが分かった。昨日の熱の質は粘ついた重さがあった。今日の熱は乾いて、薄くなっていた。炉の前の布団の中に、子供が折り畳まれるようにして横になっていた。
エドワードは入り口の傍に立っていた。一言も発さなかった。
ルイーゼはアシャの手首に二本の指を当てた。脈を数えた。規則正しく、速くなかった。昨日の夕方に変えた薬が効いている、と判断した。
「少し口を開けてもらえますか」
アシャがうっすらと目を開けた。薄い唇が開いた。喉の赤みが昨日より引いていた。
「よくなっていますか」とモルカが傍らから聞いた。声に睡眠不足の擦れがあった。
「熱は下がっています」とルイーゼは言った。「今日の昼過ぎにまた確認してください。下がり続けていれば、明日の朝には平熱に戻ると思います」
モルカが息を吐いた。音のある息だった。
「今朝の薬は」
「昨日と同じものを、朝と昼の二回です。水をたっぷり飲ませてください。冷たすぎるものは避けて」
小袋を机の上に置いた。麻布の包みが、木の上で小さな音を立てた。
「量はこれだけあれば足ります。二日分です。三日目の朝に熱が残っていたら、また声をかけてください」
モルカは頷いた。何度も頷いた。
「ありがとうございます。本当に——」
「まだ安静にしていてください」とルイーゼは言った。「アシャが自分で動きたがっても、今日は寝かせておいてください」
アシャが目を細めた。不満そうな目だった。熱がある子供が、動きたがっている顔だった。
「分かりました」とモルカは言った。
家を出ると、朝の光の中に白い空気があった。
石畳の上に霜が残っていた。ルイーゼは一歩踏み出した。足の裏に固さと冷えが伝わった。霜が薄く割れる感触があった。
エドワードが後ろから続いていた。靴底の音が二拍遅れた。
少し歩いたところで、エドワードが言った。
「毎日ああいう家に行くのか」
「三日に一度です」とルイーゼは言った。「重い患者は毎日」
石畳の先、家の列の間から広場の端が見えた。まだ朝の早い時間で、子供はいなかった。
エドワードはしばらく黙った。歩く音だけが続いた。霜の感触が、一歩ごとに足の裏を通り過ぎた。
「……あの子は回復するか」
エドワードの声は、昨日より少し低かった。
「はい」とルイーゼは言った。「今週中に」
短い答えだった。それ以上のことを言う必要はなかった。エドワードが止まらなかったから、ルイーゼも止まらなかった。二人は並ぶでもなく、一拍の間を保ったまま、小屋の方へ歩いた。
クレマンは小屋にいた。
机の上に昨日の書き取りを広げて、何かを清書していた。ルイーゼとエドワードが入ると顔を上げた。
「お帰りなさい。昨日の続きを、清書しておきました。確認していただけますか」
ルイーゼは上着を脱いで薬棚の前に立った。クレマンが広げた紙を引き寄せた。文字は整っていた。ルイーゼが口頭で言った順序に沿って、段落が分けられていた。
「ここの濃度の数字が」とルイーゼは言った。「三分の一ではなく、四分の一です」
「失礼しました」とクレマンは言った。すぐに書き直した。
エドワードは椅子を引いて座った。今日は最初から座った。
「続けられますか」とクレマンが言った。
「はい」とルイーゼは言った。「昨日の第三段階の続きから。保存方法の話に移ります」
「薬草の保存は、湿度によって変えます」
ルイーゼは薬棚の前に立ったまま話した。引き出しを一つ開けて、中の薬草の束を指で触れた。乾いた草が指先に当たった。少しざらついた感触があった。
「辺境の冬は乾燥します。乾燥した空気の中では、薬草は早く水分を失います。水分が飛びすぎると薬効が落ちる。だから乾燥が強い日は、仕舞うのを一日早くします」
「どう判断するのか」とクレマンが言いながらペンを走らせた。
「空気の感触です」とルイーゼは言った。「朝に外に出たとき、唇の表面が乾くのが早い日は、湿度が低い。そういう日は棚の引き出しを早めに閉めます」
エドワードが少し前に傾いた。
「それを記録しているか」
「しています」とルイーゼは言った。「帳面の端に。気温、朝の空気の感触、その日に保存を早めたかどうか。三年分積み上がっています」
「三年分」とエドワードが言った。それだけ言って、続かなかった。
「季節の変化に応じて変えます」とルイーゼは続けた。「夏は逆です。夏は湿気が多い。湿気に当てすぎると、今度はカビが出る。夏は棚を閉めたままにしても空気を入れる時間を短くする。乾燥と湿気、どちらの管理も要ります」
クレマンのペンが忙しく動いた。
「気温はどう測るのか」とクレマンが聞いた。
「石の温度です」とルイーゼは言った。「朝、裏の石の壁に手を当てます。その冷え方で、今日の気温の目安が分かります。王都の石と辺境の石は厚みが違うから、まったく同じではありません。ここに来て最初の冬に、ここの石の感触を覚えました」
クレマンが「覚えた」という言葉を書き取るときに、少し手が遅くなった。何かに引っかかった顔だった。
「測る道具がないから、体で覚える——ということですか」
「そうです」とルイーゼは言った。「道具があれば数字になります。数字がなければ、体の感覚で近似します。精度は落ちますが、判断には足ります」
エドワードは椅子の背にもたれていた。
腕を組んでいた。指が指を押す動きをしていなかった。動かない手だった。ただ聞いている手だった。
「王都でも同じことをしていたか」
「はい。ただ王都の石は厚い。夜の間に冷えても、朝には少し戻ります。辺境の薄い石とは違う。保存の判断を最初にやったのは王都でした。辺境に来てから、一から覚え直しました」
「一から」とエドワードは言った。
「辺境は環境が違います。乾燥、気温、水の質、薬草の品種——全部が違います。王都で覚えたことは骨格だけで、肉付けは全部やり直しました。最初の一年は失敗も多かった。乾かしすぎた薬草を何束か無駄にしました」
クレマンがペンを持ったまま、顔を上げた。
「失敗を記録しているか」
「します。失敗した日付、薬草の種類、その時の空気の状態、どう変えたか。失敗の記録が次の判断の材料になります」
クレマンは書き取った。エドワードは何も言わなかった。
昼が近くなった頃、戸を叩く音がした。
強い叩き方だった。子供の叩き方だった。
「はい」
戸が開いた。六歳か七歳の男の子が顔を出した。コラの息子だった。泥のついた靴で、入り口のところで止まっていた。
「薬師のルイーゼさん。今日は薬草採りに行かないのか」
クレマンが顔を上げた。エドワードが少し動いた。
「今日も行きます」とルイーゼは言った。「もう少し後から出ます」
「俺も行く」と男の子は言った。
「足手まといになりませんか」
「なりません!」
力強い答えだった。男の子は一度引いた顔をまた戸から出した。「じゃあ待ってる」と言って、走っていった。足音が石畳の上で遠くなった。
部屋に小さな沈黙が落ちた。
「あれも仕事か」とエドワードが言った。
「そうです。薬草の在庫管理です」
「在庫管理」
「採れる量は季節によって変わります。冬は少ない。今の時期に何が採れて何が採れないかを確認しながら、今後の処方の見通しを立てます。体を動かすだけでなく、季節の在庫を頭に入れることです」
エドワードは少しの間、机の前に目を落とした。何かを考えている間だった。それから顔を上げた。
「……私も行っていいか」
ルイーゼは少し、止まった。
エドワードが申し出た。昨日まで聞いてこなかったことを、今日は口に出した。
「走れますか」
エドワードが少し止まった。「……?」という顔だった。
「薬草は、雨の前に摘みます」とルイーゼは言った。「今日の空ならそろそろ動く必要があります。急ぐ日になるかもしれません」
エドワードは窓の外を見た。白い空が見えた。雲の色が、昨日よりも重かった。
「走れる」
「では構いません」とルイーゼは言った。「クレマンは」
「私も」とクレマンは言った。即座だった。「書き取りながら歩けます」
外に出ると、空が低かった。
石畳の上にもう霜はなかった。ただ空気の重さが変わっていた。朝の乾いた感触が消えて、重みのある冷えがあった。ルイーゼは上を見た。雲の動き方が鈍かった。溜まっている。まだ降っていないが、午後には来る。
コラの息子が広場の端で待っていた。見ると、もう一人——四歳くらいの女の子が隣に立っていた。
「連れてきた」と男の子は言った。
「来てもいいですが、急ぎますよ」
「わかった!」
ルイーゼは村の外れの方へ歩き始めた。エドワードが横に並んだ。クレマンが後ろについた。子供たちがその後を走った。
「今日は何を採るのか」とエドワードが歩きながら聞いた。
「冬草を二種。腸の薬に使うものと、解熱の補助に使うもの。どちらも雪の下でも育つ草です。雨の前に採るのは、雨で泥がはねると品質が落ちるからです」
エドワードは頷いた。話を聞きながら歩く姿勢になっていた。昨日まで小屋の中で聞いていた姿勢と、同じ傾き方だった。
村の外れを出ると、畑の端の草地に出た。
ルイーゼは膝をついた。草の間に手を差し入れた。指先に細い茎が当たった。青みがかった緑だった。冬の間も地に張り付くように育つ草だった。
「これです」
エドワードが隣に膝をついた。草を見た。
「どう見分けるのか」
「茎の感触です。この草は茎が中空になっています。指で押すと少しへこむ。似た草に中実のものがありますが、それは別の用途です。混ぜると効果が変わります」
ルイーゼはエドワードの手を取った。迷いなく取った。草の茎に指を当てさせた。
「押してみてください」
エドワードが押した。少し間を置いた。
「……へこむ」
短い声だった。王太子が草地に膝をついて、指先で茎の中空を確かめている——そういう声だった。
「それが冬草です」
エドワードが手を引いた。草を見ていた。しばらく、何も言わなかった。こんなものを、七年間——という言葉が出かかったのかどうか、ルイーゼには分からなかった。
コラの息子が横から顔を出した。「俺も知ってる。こっちの方が多いとこ教えてあげる」と言って、草地の奥に走っていった。女の子が後を追った。
クレマンがメモを取りながら立っていた。手が動き続けていた。
三十分ほどで、必要な量が揃った。
ルイーゼは束を麻布で包んだ。指の間に草の汁の冷えた感触が残った。土のにおいが手についていた。
空が、さらに重くなっていた。
雲の底が白から灰に変わっていた。あと半刻もすれば何かが落ちてくる。雨か——この気温では雪かもしれなかった。
「戻ります」とルイーゼは言った。
子供たちが駆け出した。エドワードが立ち上がった。クレマンがメモを仕舞った。
村への道を戻りながら、エドワードが言った。
「冬の薬草採りは——王都にいた頃には想像しなかったでしょう」
ルイーゼは少し、間を置いた。
不思議な言い方だった。「想像しましたか」と聞くでもなく、確認するでもなく——想像しなかっただろう、と言っている声だった。
「想像したこともなかった」
エドワードの声は静かだった。感傷の声ではなかった。ただ、事実を言っている声だった。
子供たちが先に走っていた。その後ろを、大人たちが歩いた。
空から、白いものが落ちてきた。
雪だった。
小さく、まばらな雪だった。ルイーゼの手の甲に一粒落ちた。指先の土の感触の上に、冷えた水の点が来て、消えた。
エドワードが足を止めた。手を出した。雪が一粒、掌の上に落ちた。見ていた。
「今日は薬草を仕舞うのが早い」とルイーゼは言った。「雪の日は空気が締まります。湿度が変わります」
エドワードは掌を見たまま、言った。
「……教わることが、増えた」
答えなかった。答える必要はなかった。
ルイーゼは歩き始めた。麻布の包みを両手に抱えた。草の汁の冷えが、布ごしに指に伝わっていた。雪がまた一粒、肩に落ちた。
村の入り口まで戻ったとき、広場の方から子供の声が聞こえた。いつもの声だった。今日も誰かが走っていた。名前を呼んでいた。
エドワードは、その声の方を一度振り向いた。それから前を向いた。




