逃げる理由がない
二日目の午後、エドワードは約束どおりに来た。
朝、石臼に手を触れたとき、冷たかった。夜の冷えがまだ残っていた。眠れなかったわけではない。ただ、布団の重さが妙に胸に乗る感じがあって、暗がりの中で自分の声が何度か戻ってきた。台帳は残っています——自分が言った言葉だった。言った意味が分かっていた。分かっていたのに、もう一度戻ってきた。
ルイーゼが石臼を動かし始めたとき、戸が二度叩かれた。ヘンリクの叩き方ではなかった——力加減が違った。しかし乱暴でもなかった。一日で覚えた叩き方だった。
「入ってください」
椅子を勧めた。今日は断らなかった。
エドワードは壁際の椅子に腰を下ろし、部屋を一度だけ見回した。昨日と変わっていなかった——棚の薬草の配置も、道具の場所も。ただ、石臼の中に砕きかけの乾燥葉があった。それだけが今日の違いだった。
「続けていい」とエドワードは言った。
「はい」とルイーゼは言った。
石臼を動かした。乾いた葉の砕ける音が、小屋の中に規則的に響いた。エドワードは黙っていた。ルイーゼも黙っていた。沈黙は、昨日と同じ種類ではなかった。昨日は初日の沈黙だった。今日の沈黙には、一日分の——石臼の音が聞こえている、という事実があった。
三日目になると、ヘンリクは同席しなくなった。
そうなると申し合わせたわけではなかった。三日目の午後、ルイーゼが戸を開けたとき、エドワードは一人で立っていた。後ろにヘンリクはいなかった。
「今日はお一人ですか」とルイーゼは言った。
「ヘンリクは畑仕事があると言っていた」とエドワードは言った。「私が一人で来ても構わないかと聞いたら、『本人に聞け』と言われた」
「ヘンリクさんらしい答えですね」
「そうか」
「構いません」とルイーゼは言った。
エドワードが入ってきた。靴底の音が、三日目には少し変わっていた。石床の感触を、すでに知っている足音になっていた。
三日間で、いくつかの話が積み重なっていた。
二日目は農業試験場の話が出た。エドワードが今年の収量の落ち方を報告した。ルイーゼは「土壌改良の最後の段階が残っていたはずです」と言った。「台帳の七ページ目に、次の手順を書いてあります」と言った。「七ページ目は読んだ」とエドワードは言った。「残っていた。誰も実行できなかった」。
三日目の話は、魔法陣だった。三人の術者を入れてもどこが問題か分からなかった、とエドワードは言った。ルイーゼは少し考えてから「修正点に印をつけていなかったのが悪かったです」と言った。「あの陣は私が独自に変えた部分があります。その部分が他の術者には読めない」「なぜ印をつけなかった」「……つけるとは思っていませんでした」。それ以上は言わなかった。エドワードも聞かなかった。
四日目になっていた。
四日目の午後は、薬草の選別作業が残っていた。
ルイーゼは作業台に乾燥させた薬草を並べながら、エドワードが椅子に座っているのを視野の端に感じていた。今日はいつもより早く来た。日が中天を過ぎて少ししてから、戸が叩かれた。
「早かったですね」とルイーゼは言った。
「宿で待っていても仕方ない」とエドワードは言った。
「ヘンリクさんは」
「今日も畑だと言っていた」
それだけだった。会話にならないまま、ルイーゼは選別を続けた。
窓の外から、子供の声がした。広場の方の声だった。毎日同じ時間帯に同じ場所で声がする——ルイーゼはすでに知っていたが、今日初めてエドワードの顔がその声の方を向いた。少しの間、聞いていた。
「子供が多い村だ」とエドワードは言った。
「十二人います」とルイーゼは言った。「秋に一人生まれました」
「十三人か」
「今年の冬が明けるまでは、まだ十二人です」とルイーゼは言った。「ドネルさんの家の子が、ここ数日少し熱があります」
エドワードは少し止まった。「深刻か」
「今のところは、風邪の範囲です。明日また診に行きます」
「そうか」とエドワードは言った。
何も言わなかった。窓の外の子供の声は続いていた。
薬草の選別を終えた頃、エドワードが言った。
「一つ聞いていいか」
「はい」
「なぜ、七年間、台帳を書き続けたのか」
ルイーゼは手を止めた。止めた、というより——手が止まった。薬草の茎を持ったまま、次の動作が出なかった。
問いの形は知っていた。いつか来る問いだとは思っていた。しかし四日目の午後に来るとは思っていなかった——子供の声が聞こえている時間に、薬草の選別が終わったばかりの机の前で、来るとは思っていなかった。
ルイーゼは手の中の茎を机の上に置いた。
「……書いておかないと、消えると思っていました」と言った。「やっていたことが」
エドワードは少しの間、黙っていた。
「消えたか」
問い返しだった。短かった。責める声ではなかった。ただ——問いだった。
ルイーゼは棚の上を見た。台帳が一冊、棚の端に置いてあった。今使っているものだった。七年分のものではなかった。ここに来てから書き始めたものだった。王都の台帳は、あちらに置いてきていた。エドワードが見た白い台帳も、あちらにあった。
「……台帳は残っています」
それだけを言った。
棚の端に置いてある台帳の背表紙を、一瞬見た。白かった。ここに来てから書き始めたものだったが、七年間の白さと同じ白さだった——使い込まれた白。消えないように書いた七年間が積み重なった色だった。
声は平らだった。感情を抜いた声ではなかった——感情がそのまま平らだった。七年間書き続けた人間の声だった。消えないように書いた人間が、書いたものが残っている、と言う声だった。
エドワードは何も言わなかった。
手のひらが、机の端の木の角に触れていた。固かった。使い込まれた木の、滑らかな固さだった。王都の机とは違う感触だった。ルイーゼはその感触を、少しの間だけ確かめていた。
沈黙があった。
今日の沈黙は重かった。重くて、しかし壊れなかった。壊れなくていい沈黙だった——二人とも知っていた、これは言い足りないのではなく、今はこれで終わりだということを。
エドワードが視線を動かした。棚の台帳の方を見た。今使っているルイーゼの台帳だった。今日の日付で書かれたものが、最後のページにあった。
「毎日書いているのか」
「毎日ではありません」とルイーゼは言った。「診があった日と、薬草の変化があった日と——あとは、書きたい日に」
「書きたい日とは」
「……分かりません」とルイーゼは言った。「気づいたら書いている日があります」
「書いた後はどうなる」
「軽くなります」とルイーゼは言った。「少しだけ」
エドワードは少し間を置いた。「王都でもそうだったか」
「王都では毎日書いていました。書く理由があったからです」
「理由とは」
「見てもらうためです。使ってもらうために書いていました」
「今は理由がないのか」
「今は」とルイーゼは言った。「書く理由と、書きたい気持ちが、別々にあります」
エドワードは何も言わなかった。言えなかった——言葉が分からなかったのかもしれなかった。書く理由と書きたい気持ちが別々にある、という感覚を、七年間一度も考えたことがなかった人間の沈黙だった。
その日、帰り際にエドワードは窓の外を少し見ていた。
広場の方に目が向いていた。子供の声はもう聞こえなかった。夕暮れ前の静かな時間帯だった。石の家が橙色の光の中にあった。煙が一本、遠くから上がっていた。
「村は、静かだな」とエドワードは言った。独り言に近い声だった。
「冬はこうです」とルイーゼは言った。「春になると麦刈りが始まります。夏は——夏は、もっとうるさくなります」
「麦刈りに出るのか」
「手が足りない年は手伝います」とルイーゼは言った。
エドワードは何も言わなかった。
ルイーゼは言い終えてから、自分が「夏は」と言ったことに気づいた。夏のことを話した。今年の夏のことを話した。この村の夏のことを、当然あるものとして話した。エドワードがいても、いなくても——ここの夏があることを、話していた。
夏に農家の手伝いをしたとき、指が土の感触を覚えた。粘土の重さ、根の感触、指の間に残る砂。身体がここの土を知っていた。この場所が「仮の場所」ではなくなったのは、そのときだったとルイーゼは思った——思ったのではなく、気づいた。すでにそうだったことに、今気づいた。
エドワードもその言葉を受け取った。受け取ったまま、何も言わなかった。
扉に向かったエドワードが、一度止まった。
扉の前で、木の柄に手をかけたまま、止まった。
「一つ頼みがある」とエドワードは言った。
ルイーゼは棚の前に立ったまま、振り返らなかった。
「頼みとは」
「明日、話す」とエドワードは言った。「今日ではなく、明日にしたい」
少しの間があった。
「……分かりました」とルイーゼは言った。
扉が閉まった。
足音が遠ざかっていった。今日は一人分の足音だった——硬い靴底の音が、村の石畳の上を歩いていった。四日前より、少しだけゆっくりした歩きだった。急いでいなかった。急ぐ先がないように——ここを、帰り道として歩いているような音だった。
やがて聞こえなくなった。
ルイーゼは机の上に残った薬草の束を手に取った。選別の終わったものだった。籠にしまう前に、一度だけ重さを確かめた。乾いた草の、軽い重さだった。
明日、頼みを聞く。
その事実が、手のひらの中に薬草の重さとともにあった。




