↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/159

第39話:一線_選別都市大阪編⑥

ーー久世フェーズ


大阪。


久世事務所。


みずきの指が、キーボードの上で止まった。


「……また出た」


その声で、空気が変わる。


「何が?」


「この事件」


画面をこちらへ向ける。


小さなネット記事。


『大阪市内で女性被害か 知人男性から事情聴取』


知人男性。


女性被害。


事情聴取。


必要な言葉ほど、曖昧だ。


被害者は二十代。


深夜、自宅で知人男性に襲われた。


男は警察から事情を聞かれたが、容疑を否認している。


腹の底へ。


熱いものが、ゆっくり落ちていく。


「あと、ひとみさんからメール」


画面が切り替わる。


ひとみからだった。


——被害者の代理人になった。


——特徴を聞いた。


——初日に逃した奴の一人。


——石津や。


石津。


大阪初日。


路地裏で女性を囲んでいた三人の一人。


俺が、仕留め損ねたデポル。


「前にも何かある?」


みずきが調べる。


「……同じような事件で、不起訴が一件」


不起訴。


そして。


再犯。


「反省して、またやったんだ」


みずきの声が震えている。


恐怖ではない。


怒りだ。


(反省なんてしていない)


奴らは。


息をするように奪う。


犯す。


壊す。


めぐみは、黙って記事を読んでいた。


俺は。


画面にある一文を見る。


容疑を否認。


やけに滑稽だった。


「恒一」


めぐみが呼ぶ。


「大丈夫だよ」


「まだ何も言ってない」


画面へ視線を戻す。


加害者の名前は出ない。


被害者も消えていく。


いつもの構図だ。


その時。


一つの考えが浮かんだ。


(人の人権を奪う者の人権まで、守る必要があるのか)


頭が。


妙に冴えていく。


今までは。


殺すことばかり考えていた。


警棒。


短剣。


それだけでは。


一匹消して終わる。


なら。


石津だけではなく。


石津を逃がした人間も。


逃がす仕組みも。


まとめて潰す。


「まずは」


二人を見る。


「社会的に殺そう」


みずきが、息を呑んだ。


「石津の名前は出てないよ」


めぐみが言う。


「ひとみさんは、被害者から特徴を聞いてる」


「でも、それだけじゃ証拠にならない」


みずきが返す。


「作る」


「……何を?」


「証拠を」


沈黙。


「ひとみさんは、被害者の代理人として現場を確認できる」


俺は続ける。


「事件当日のものに見える写真を用意する」


みずきの顔がこわばった。


「それ、捏造だよ」


「そうだね」


「バレたら終わる」


「そうだね」


少し間を置く。


「だから、みずきは関わらなくていい」


ちょうどいい。


ここで。


降りてもらう。


彼女には、荷が重い。


「次、仲間外れにしようとしたら」


みずきが睨む。


「耳、噛みちぎるから」


「それは怖いね」


「うるさい。続けて」


めぐみは。


何も言わず、こちらを見ている。


計画を簡単に説明する。


写真を作る。


第三者を経由して外へ流す。


世間が騒ぎ始めたところで。


播磨へ接触する。


めぐみが、小さく息を吐いた。


「完全に悪党のやり方だね」


「否定しない」


「ひとみさんは?」


「乗ると思う」


その時。


電話が鳴った。


水谷ひとみ。


通話を取る。


『メール見たか』


「ええ」


『胸糞悪いで。石津でほぼ間違いない』


「現場を見られますか?」


『被害者の代理人やからな』


「では、今夜同行させてください」


数秒。


沈黙。


『何か思いついたんか?』


「直接話しますよ」


電話の向こうで、ひとみが笑った。


『分かった。付き合ったる』


「まだ何も話してませんけど」


『分かるわ』


一拍。


『証拠、作るんやろ。この犯罪者が!』


思わず笑う。


「ひとみさんなら、同じことを考えると思ってました」


『お前みたいなイカれ野郎と一緒にすんな』


電話が切れる。


顔を上げる。


めぐみが。


こちらを見ていた。


笑っていない。


怒っているわけでもない。


ただ。


冷たい目だった。


その視線を見て。


ようやく分かった。


俺は今。


今までとは違う一線を、越えようとしている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ここまで読んでいただきありがとうございます。 この物語は 「正義と暴力の境界」 「人間と異種の曖昧さ」 をテーマに進んでいきます。 少しでも続きが気になれば、 ブックマーク・コメントで応援いただけると嬉しいです。 #現代バトル #社会問題 #ダークヒーロー #復讐 #高校生主人公 #社会風刺
― 新着の感想 ―
捏造!いいですねれ ばれなければ犯罪じゃないですから。 デポル殺しもバレなければ犯罪ではない。 捕まらないまま最強のダークヒーローを駆け抜けてくれ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。