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第33話:境界線の外へ

第一章の最終話です(  - `ω - )

時は流れる。

二〇〇八年、春。


少しだけ暖かい風。


——違和感。

廊下から見られている。


「誰?」


目の前にいるのは、見慣れたはずの女。


だが——


「誰は失礼じゃない?」


短い。


肩にかかる程度。


金髪はそのまま。


だが印象が、明らかに違う。


「……バッサリいったね」

「うん」


あっさり。


「邪魔だったから」


それだけ言って、めぐみは鞄を肩にかける。


(……似合ってるけど)


言わない。


教室。

ざわつき。

卒業前の、浮ついた空気。


その中で——


「久世くん、この一年トゲトゲしさが薄れたね。少しだけ」


振り返る。


立花みずき。


「あと二人最近距離近くない?」


ニヤついている。


「付き合ってるの?」


即答。


「違う」

「違う」


被る。


一瞬の間。


みずきが吹き出す。


「息ぴったりだ」


全く信じていない顔。



そして、卒業式。

学校の行事は、こなしながらも、デポル狩りとビジネスで忙しく過ごした日々。


俺にとっては、感極まることもなく、滞りなく幕を閉じる。


そして放課後。


ーー久世自宅兼事務所


荷物はほぼない。


パソコンの低い駆動音のみが響き渡る。


「売上、確定出た」


みずきがモニターを回す。


「——一千二百万」


めぐみが小さく息を吐く。


「予定通り」


俺は頷く。


ホームページ制作。

セキュリティ診断。

ITコンサル。

弁護士業。


(揃ったな)


みずきが椅子をくるりと回す。


「ねえ」


軽い声。

だが、目は軽くない。


「ちょっといい?」


空気が変わる。


「…まずは、謝罪を。ごめんなさい」


黙って聞く。


「セキュリティの勉強してたらハッキングの仕方もわかっちゃって。」


みずきがキーボードを叩く。

画面に並ぶログ。

通信履歴。

位置情報。


「久世くんとめぐみ、あと一人。ひとみという人のメール」


クリック。

別の画面。


「…デポルを殺してまわってるんだよね」


沈黙。


「責めたいわけでも告発するつもりもないの」


真っ直ぐ目を見る。


「私も仲間に入れて欲しい。」


俺とめぐみは目を合わせる。

みずきは続ける。


「確証はない。時期もズレてる。けど、私の父が失踪したのは…恐らくこれだと思ってる」


(……)


「父は多分…死んだんだよね。そこまで仲良かったわけじゃないけど。複雑ではある」


沈黙。


「……だから協力させてほしい」


俺は、短く切る。


「ダメだな」


一拍。


「理由が“他人”だ」


「祖父母のため。俺たちのため。恩返し。——全部いい」


視線を外さない。


「でもそれじゃ、折れる」

「自分の怒りじゃないと、途中で止まる」


はっきり告げる。


「君という人間は信用してる。けど——これは違う」

「デポルも、それに関わる人間も、蹴散らすことになる」

「その時に、立花さんが耐えられるかはわからない。それは”俺たち”にとってリスクになる」


静かに言い切る。


みずきは、少しだけ俯く。


だが——

逸らさない。


「……それでもいい」


小さく息を吐く。


「捕まってもいいし、死んでもいい」

「途中で逃げる方が、もっと嫌だから」


沈黙。


——軽い。


そう思った。

覚悟としては、浅い。

死線を越えた人間のそれじゃない。


(……口ではどうとでも言える)


だが——


(こいつは、もう知っている)


ログも、繋がりも、全部。


(ここで切るのは悪手だ)


俺のミスだ。


なら——


(管理するしかない)


短く息を吐く。


「……わかったわかった。もういい」


みずきの顔が、わずかに緩む。


「その代わり——勝手に動くのはやめてね」


淡々と言う。


(監視できる範囲に置く)


それが条件だ。


「私の役割は、ハッキング。裏方で支えるよ」


(……それは使える。程度を確認しないとな)


大阪が次の舞台だ。


防犯カメラの数も、徳島とは比べ物にならない。


一時的にでも潰せるなら、十分戦力になる。


俺はこの在学中に、ビジネスパートナーと——


デポル狩りの駒を得た。


敵との停戦協定。

殺した数、二百二十。

逃した数、二百。


(……井口)


胃が軋む。


だが——

いずれ全部、殺す。

そのために俺は蘇ったんだ。


金もある。

人もいる。

情報もある。


足りないものは——


(...覚悟くらいか)


殺しきる覚悟ではない。


小さく息を吐く。


「……行くか」


三人で歩き出す。


徳島は終わりだ。


ここから先は——


“狩る側”が試される。


——次は、大阪。


境界線の外へ、踏み出した。

次回以降、第二章、大阪編!

ビジネス、政治、法律、盛りだくさん(  - `ω - )

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ここまで読んでいただきありがとうございます。 この物語は 「正義と暴力の境界」 「人間と異種の曖昧さ」 をテーマに進んでいきます。 少しでも続きが気になれば、 ブックマーク・評価で応援いただけると嬉しいです( ^ω^) #現代バトル #社会問題 #ダークヒーロー #復讐 #高校生主人公
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