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第129話:鎮圧_駆逐編⑤

「総理、報道各社が会見を求めています」


「この状況ですよ?断ってください」


すでに、政府の強硬姿勢が衝突を招いたとの報道が始まっていた。


大型モニターの一つが、報道番組へ切り替わる。


燃える警察車両。


盾を構えて前進する機動隊。


地面へ押さえつけられる参加者。


前後の経緯を切り落とした映像の横には、政府による弾圧という文字が表示されていた。


映像がスタジオへ戻る。


中央に座っていたのは、黒瀬麗奈だった。


『社会保全省による監視や摘発への不安が高まる中、政府が国民との対話を避け続けた結果だとの批判も出ています』


画面の下には、久世政権、かつてない混乱、即刻辞任を、という文字が流れている。


黒瀬が一瞬、原稿から目を上げた。


『一方、参加者の一部が火炎瓶や刃物を用意していたとの情報もあります。事実であれば、合法的な抗議活動とは分けて考えなければなりません』


用意された原稿にあった言葉なのかは分からない。


黒瀬は表情を変えないまま、次のニュースを読み始めた。


「いい感じに政権の責任にされてるね」


「まあ、デポル関連は国ぐるみですし」


正門前では、警察の警告が繰り返されている。


暴徒は投石を続けていた。


その後ろには、逃げ遅れた参加者も残されている。


最初から暴力を目的にしていた者。


周囲に煽られ、規制線を越えた者。


抗議に来ただけで、何もしていない者。


今の映像だけで、全員を区別することはできない。


めぐみが地図の東側を指した。


「駅へ向かう道路だけを開放する。そこから出る者は止めない。それ以外は封鎖して」


退路へ警察官を配置し、転倒者の救護班も待機させる。


俺はその案を承認した。


官邸周辺の道路へ、待機していた機動隊の車両が次々と入ってくる。


北側と西側へ部隊が展開し、拡声器から最後の警告が流れた。


東側の道路を開放する。


抗議活動を中止し、直ちに退去すること。


武器を捨て、警察官の指示に従うこと。


群衆の一部が動いた。


プラカードを持ったまま東側へ向かう者。


負傷者へ肩を貸し、ゆっくりと離れる者。


何もしていないと叫びながら、警察の誘導に従う者。


その流れに逆らい、官邸へ進もうとする者もいた。


顔を隠した集団が、逃げようとする参加者を押し戻している。


「帰るな! ここで引いたら、次は俺たちが殺されるぞ!」


一人が逃げようとした男性の胸倉を掴み、地面へ投げ倒した。


別の者が火炎瓶へ火をつける。


だが、投げる前に放水が直撃した。


火の消えた瓶が地面へ落ち、割れる。


それを合図に、機動隊が前進を始めた。


盾の列が、暴徒を官邸から押し離していく。


北側と西側からも警察官が入り、群衆を複数の区画へ分断する。


警察官へ殴りかかった者。


規制線を破壊した者。


火炎瓶や刃物を所持していた者。


官邸の敷地へ侵入しようとした者。


武器を捨てない者から地面へ押さえ込まれ、手錠をかけられていく。


「正門周辺を制圧しました。裏門、通用口ともに侵入者を確保しています」


官邸内部への侵入者はいない。


だが、画面の中ではまだ抵抗している者がいた。


数人の警察官に囲まれながら、異様な力で盾を押し返している。


首筋から頬へかけての皮膚が、黒く変色していた。


一人だけではない。


別の区画でも、地面へ押さえ込まれた者の腕が黒く染まっている。


警察官へ噛みつこうとした者の目元も、赤黒く変わっていた。


めぐみが映像を拡大させる。


抵抗を続けている者の多くに、同じ変色が現れていた。


一方、暴力行為に加わらず、警察の指示に従った参加者の中にも、照合システムが警告を表示した者がいる。


戸籍情報に不自然な改変履歴あり。


血縁情報との不一致。


既知のデポル戸籍との関連を確認。


「確保した者の身元照合結果が出始めています」


現時点で身元確認が終わった百二十七人。


そのうち、デポルである可能性が高い者は百九人。


「恒一。これ……」


「偶然ではないな」


デポルが社会保全省へ反対すること自体は、不自然ではない。


自分たちを調査し、摘発する組織だ。


恐れる理由はある。


だが、複数の団体が同時に資金を得て、全国からデポルを集め、官邸への侵入まで計画していた。


背後にいる者は、抗議を目的にしていない。


社会保全省を潰すために、デポルを動かした。


あるいは。


俺に、デポルを捕らえさせるために。


確保した者は一人ずつ取り調べるよう指示した。


だが、都内の留置施設だけでは千人規模を収容できない。


大型モニターには、護送を待つ者たちが映っていた。


武器を持っていた者だけではない。


暴動から逃げ遅れ、警察の指示に従って座っている者もいる。


全員を犯罪者として扱うことはできない。


同時に、身元確認もせず解放すれば、二度と同じ数を確保できない可能性がある。


めぐみが、社会保全省の保護施設を一時的に使用すると決めた。


暴動への関与が確認された者は、警察の管理下で移送する。


関与が確認できない者には、任意で身元確認を求める。


デポルであるという理由だけでは拘束しない。


俺も、その判断を承認した。


官邸前の暴動は、発生から一時間余りで鎮圧された。


官邸内部への侵入者はゼロ。


多数の負傷者が出たものの、死者は確認されていない。


現行犯逮捕された者、五百四十二人。


身元確認へ応じた者、三百七十一人。


合わせて九百人を超える参加者が、警察と社会保全省の管理下へ置かれた。


その大半が、デポルか、その血を引く者だった。


罪を犯した者。


暴動へ加わらなかった者。


日本国籍を持つ者。


戸籍そのものが存在しない者。


それらすべてが、一つの場所へ集められていく。


俺が長年探し続けても、決して見つけられなかった数のデポルが。


自分たちから、同じ檻の中へ入ってきた。

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ここまで読んでいただきありがとうございます。 この物語は 「正義と暴力の境界」 「人間と異種の曖昧さ」 をテーマに進んでいきます。 少しでも続きが気になれば、 ブックマーク・コメントで応援いただけると嬉しいです。 #現代バトル #社会問題 #ダークヒーロー #復讐 #高校生主人公 #社会風刺
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