表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/116

第109話:灯火

ーー徳島県・山中


何となく見覚えのある廃墟。


いつだか、真壁や多数のデポルと戦いを繰り広げた場所。


俺は荷台に飛び乗ってから、気を失っていたようだ。


執拗な追跡を受けながらも、遠回りを重ね徳島まで逃げおおせた。


徳島は、井口の支配が行き届いていた。


今はどうか知らないが、少なくともこの廃墟は大丈夫とのことだ。


(本当か……?)


身体は動かないが手当がされている。


あの出血量で、よく死ななかったものだ。


(めぐみ……のおかげか)


数分か、数十分か。


朦朧とした意識が、徐々にはっきりしてきた。


ようやく気づく。


隣に人の気配がある。


めぐみか。


「起きたか、クソ野郎」


「あんたかよ」


隣には同じように寝かされている真壁だった。


「俺で悪かったな。そんなことよりお前、死にかけてたぞ」


こいつにしては珍しい。


いつものような小馬鹿にした物言いをしない。


「ええ。そうみたいですね」


「ふざけるなよ」


よく見ると目のクマが酷い。


冷や汗、乱れた呼吸。


こいつも重症を負っているのだろう。


真壁は続ける。


「お前は井口さんから託されたんだ。道半ばで終わることは許されない。死んでも成し遂げろ」


「……ええ。あなたに言われなくとも。あの人と同じ方向性ではないですがね。やりますよ、俺は」


真壁は険しい顔から穏やかな顔になる。


「俺はここまでだ。腹に数発喰らっている。助からない」


「……」


「加藤たちに、徳島と東京での拠点を伝えてある。俺と井口さんとだけで作った場所だ」


真壁は咳き込むたびに、吐血する。


俺が目を覚ますまで、耐えていたのかもしれない。


「必ず成し遂げろ。あの人があの世でお前の実績を見て、「よくやった」と思えるように。必ずだ。約束しろ」


「俺とあんたたちは、敵同士だろ。そんな義理はない……だが、″悪い″デポルは、この世から消してやるよ」


真壁は目を閉じ、ゆっくり呼吸する。


「それでいい。あの人がやってきたことを無駄にしないでくれ。だから俺はお前のようなガキのために、命をかけた」


「口が開けば憎まれ口。もう少し大人になった方がいいんじゃないですか?」


いつもの軽口。


しかし真壁からの返答はない。


目を閉じ、とても安らかに、とは言い難い。


けれども、「必ずやり遂げろ」


強い口調でそう言われているような、憎たらしい寝顔に見えた。



真壁の亡骸を皆で運び、山中へ埋葬した。


傷が癒えたわけもなく、最低限の応急処置をして出発する。


真壁は元看護師だったらしく、俺や山上への処置を施したようだ。


自分の身体を、おざなりにしてまで。


これから東京の拠点に向かう。


そこには、食料や医療機器などが揃っているらしい。


めぐみや鷹宮、山上は真壁から共有を受けていた。


ひとみ、井口、真壁、山本。


共に戦った者。


敵対した者。


様々な者から、悲願や想いを託された。


勝手なことを。


しかし、それほど悪い気分でもなかった。


(能天気なのは、俺の数少ない長所だな)


振り返りも状況整理も完了した。


鷹宮が声を掛けてくる。


「久世くん。このルートで東京入りをする。これでいいね?」


鷹宮が簡潔に説明をする。


徳島から和歌山へ出港するフェリー経由で、再び関西へ。


このタイミングで、みずきを拾う。


今は安全な場所と護衛が数名いるらしい。


その後、東大阪を経由し、武器や物資の調達。


和歌山から海沿いおよび山間部を抜け、中部地方。


そこから、様子を見ながら山道を走行し、東京までいく。


東京。


あそこで全てが決まる。


そんな予感だけはあった。


(大冒険だな)


道中で敵と何度も出くわすだろう。


「まあまて。一度大阪に戻る」


「おいおい。もうボケたのか?」


「過去に一度、ひとみさんが紹介してくれた、とあるおっさんに会いに行く」


無線機、警棒、短剣。


これまでに扱ってきた道具を回してくれていた。


表向きは防犯用品店。


裏では、一般には流通しない物まで扱っている。


「鷹宮さんのその銃ももう飾りでしょう。弾薬の補充が必要です。東京までも、入ってからも敵は多い」


「それはそうだが……」


「真壁は死にましたが、彼の電話がまだある。デポルを呼びつけて撹乱しましょう」


幸いこの廃墟には、車がもう一台ある。


逃げおおせたこのトラックは、車種も番号も割れている。


「言うことを聞くのか?そのデポルは」


「さあ。やってみないとね」


「そういえば、真壁がある人物を頼れと言っていた」


俺はこれまで、真壁から″井口″以外の名前はほとんど聞いたことはない。


とはいえ、あてもない。


今は、どんな奴でも頼るしかないだろう。


呼び出し音が一回。


二回。


三回。


ようやく電話の向こうで、男が口を開いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ここまで読んでいただきありがとうございます。 この物語は 「正義と暴力の境界」 「人間と異種の曖昧さ」 をテーマに進んでいきます。 少しでも続きが気になれば、 ブックマーク・評価で応援いただけると嬉しいです( ^ω^) #現代バトル #社会問題 #ダークヒーロー #復讐 #高校生主人公
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ