↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/159

第9話:完璧な彼女は、三度死ぬ

新章が始まりました。

ようやく好きなキャラをかける。

ーーめぐみフェーズ


時計の針が、巻き戻る。


だが、過去へ戻る感覚ではない。


世界を支える理そのものが、強引に書き換えられていく。


二〇〇六年十一月一日。


十八時。


私が命を投げ出した未来から。


すべての始まりである、二〇〇五年五月三日へ。



ドイツ人の父と、日本人の母を持つ私は、整いすぎている。


自分で言うのも何だが、顔も身体も、出来がいい。


まるで誰かが、意図して美しく組み上げた人形みたいに。


真っ直ぐに伸びた金髪。


ポニーテールにすれば、顔の輪郭が際立つ。


瞳はダークブラウン。


少し吊り上がった二重。


身長は百六十九センチ。


今も、まだ伸びている。


芸能人やアイドルも、比較対象にはならない。


そう思える程度には、完成されている。


胸以外は。


鏡を見るたびに思う。


(よくできた人形だな)


そんな私。


加藤・ベアトリクス・めぐみは。


たった今、三度目の自殺で死んだ。


父は、一年前に死んだ。


信号待ちをしていた私たちへ、暴走車が突っ込んできた。


父は私を庇った。


そして、そのまま即死した。


犯人は謝罪すらしなかった。


それどころか、父が飛び出してきたと怒鳴り散らしていた。


母は、何もしなかった。


その日から壊れた。


いや。


元々、壊れていたのかもしれない。


時々、母の首元が赤黒く変色していた。


掻きむしった痕にも見えた。


だが、傷ではなかった。


母は酒に溺れた。


父の遺産を使い潰した。


そして、私に手を上げるようになった。


「今日は、どれにする?」


そう言って、包丁とリモコンを並べる女になった。


最初は、殴るだけだった。


次は、物を投げるようになった。


最後には、刃物を向けるようになった。


逃げ場はない。


助けも来ない。


だから私は、死んだ。


一回目も。


二回目も。


三回目も。


そして。


また、ここにいる。


目を開ける。


線香の匂い。


黒い服。


押し殺した泣き声。


父の葬儀だった。


「……また、ここか」


挿絵(By みてみん)


これが、すべての始まりの日。


何度も、ここからやり直してきた。


そして、これが最後になる。


最初に死んだ時。


私の前に、一人の女神が現れた。


名は、アステリア。


『蘇りは三回まで』


『どんな死に方でも、この日に戻る』


勝手にルールを決めた。


そして、勝手に消えた。


その前に、一つだけ言い残していた。


『能力をやる』


「……一回も使ってないんだけど」


何の能力なのか。


どうすれば使えるのか。


何も分からない。


だが、もうどうでもいい。


これが最後だ。


どうせ、また全部終わる。


そう思っていた。


棺の前に立つ。


白い布に包まれた父は、もう動かない。


「……」


そっと、手を伸ばす。


父の手に触れた。


その瞬間。


「……?」


指先から、何かが流れ出した。


血ではない。


熱でもない。


自分の中にある何かが、静かに抜けていく。


そして、父の身体へ吸い込まれていく。


そんな感覚だった。


錯覚だ。


そう思いたかった。


だが、触れている指先だけが、微かに熱を持っている。


「……気のせい、か」


手を離す。


それ以上は考えなかった。


考える意味もない。


どうせ、また全部終わる。


そういえば。


アステリアは、最後に余計なことも言っていた。


『ヒントをやる』


いかにも面倒そうな声だった。


『徳島県立防緑高校に行け』


「はあ?」


防緑高校。


読み方は、ぼうえんこうこう。


偏差値は低い。


素行の悪い生徒も多いと聞く。


私なら、もっと上の学校へ行ける。


これまでの三回も、そうしてきた。


少しでも偏差値の高い学校へ行った。


少しでも優秀な人間であろうとした。


そして。


毎回、同じように絶望して死んだ。


『私の都合もあるから』


そう言い残して、アステリアは消えた。


(都合って何よ……)


意味が分からない。


けれど。


「……まあ、いいか」


どうせ、最後だ。


同じ道を歩いて。


同じように死ぬ。


それでは、何の意味もない。


だったら。


「違う道、選んでみるか」


ほんの少しだけ。


期待している自分がいた。


それに気づき、口元が緩む。


(バカみたい)


死ぬための人生なのに。


それでも、私は歩き出す。


制服のまま。


線香の匂いが染みついた部屋を離れる。


「……防緑高校」


教えられた名前を、もう一度呟いた。


その選択が。


私の人生だけではなく。


ある男の運命まで、大きく書き換えることになるとも知らずに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ここまで読んでいただきありがとうございます。 この物語は 「正義と暴力の境界」 「人間と異種の曖昧さ」 をテーマに進んでいきます。 少しでも続きが気になれば、 ブックマーク・コメントで応援いただけると嬉しいです。 #現代バトル #社会問題 #ダークヒーロー #復讐 #高校生主人公 #社会風刺
― 新着の感想 ―
めぐみの顔見て見たい
もう登場人物が多くて忘れそうですわ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。